プロジェクトマネジメント計画書とは何か?PMBOKの用語を解説
プロジェクトマネジメント計画書の概要
プロジェクトマネジメント計画書とは「プロジェクトを実行、監視、コントロールおよび終結する方法を記述した文書」であり、プロジェクトではこのプロジェクトマネジメント計画書の作成を通じて、「すべての計画の構成要素を定義し、調整して統合したプロジェクトマネジメント計画書に組み込むプロセス」とされています[1]PMBOK、731頁。。
つまり、プロジェクトマネジメント計画書の作成を通じて、「プロジェクトに必要な作業は何か」「それはどのような内容なのか」「それぞれの作業のためにどのような準備が必要なのか」を文書化することで、その後のプロジェクトの円滑な進行を支える文書です。
「プロジェクト計画書」と呼ばれることもありますが、このWebサイトではPMBOKに従って「プロジェクトマネジメント計画書」で通していきます。
プロジェクトマネジメント計画書作成の目的
上述の通り、プロジェクトマネジメント計画書は「プロジェクトを実行、監視、コントロールおよび終結する方法を記述した文書」です。
このプロジェクトマネジメント計画書の目的をまとめると、以下のようになります[2]広兼修『マンガでわかるプロジェクトマネジメント』オーム社、2011年、63頁。 。
- 実行可能な計画を作成する
- ステークホルダーと共有する
- プロジェクトを進めるときに利用する
プロジェクトマネジメント計画の一番の目的は、実行可能な計画を作成し、プロジェクトのメンバーと共有することで「この先プロジェクトがどうなっていくのか」という指針を示すことです。そして、プロジェクトの進捗にあわせてプロジェクトマネジメント計画書を振り返ることで、現在の進み具合がどうなのかを確認することができます。
また、共有する相手はプロジェクト・チームのメンバーだけでなく、社長や部長などのステークホルダーも含むことで、プロジェクトを後援してくれる人にもサポートをお願いしやすくなります。
プロジェクトマネジメント計画書の構成要素
プロジェクトマネジメント計画書は本文と18の計画書により構成されます。
つまり、「プロジェクトマネジメント計画書」と一口にいっても、その中には18もの文書が含まれているため、プロジェクトマネジメント計画書の作成は骨の折れる作業です。
しかし、プロジェクトマネジメント計画書はプロジェクトの指針になる重要な文書であるため、根気強く作成していきましょう。
プロジェクトマネジメント計画書の本文
プロジェクトマネジメント計画書の本文では以下のような項目を明記していきます[3]鈴木安而『図解入門よくわかる最新PMBOK第6版の基本』秀和システム、2018年、146頁。。
- プロジェクトの目的
- ライフサイクルの形態
- テーラリングした項目
- パフォーマンス測定
これらの内容を簡単に説明していきましょう。
プロジェクトマネジメント計画書の本文にはプロジェクトの目的を書くだけでなく、「どのようなライフサイクルをとるのか」、つまりどのようにプロジェクトを進めていくのかを記述します。つまり、一般的なウォーターフォール型で進めていくのか、それともアジャイル型で進めていくかなど、プロジェクトの型を決めます。
また、これから紹介する18の計画書の中で何をテーラリングしたか、つまりどの部分をプロジェクトにあわせて調整したのかを記述します。
そして、このプロジェクトの成果をどのようにして測定していくのかを記述します。
構成要素となる文書
プロジェクトマネジメント計画書は上記の本文のほか、補助マネジメント計画書や追加構成要素で形成されます。
本文以外の構成要素は以下の通りです[4]PMBOK、89頁。。
- スコープ・マネジメント計画書
- 要求事項マネジメント計画書
- スケジュール・マネジメント計画書
- コスト・マネジメント計画書
- 品質マネジメント計画書
- 資源マネジメント計画書
- コミュニケーション・マネジメント計画書
- リスク・マネジメント計画書
- 調達マネジメント計画書
- ステークホルダー・エンゲージメント計画書
- 変更マネジメント計画書
- コンフィギュレーション・マネジメント計画書
- スコープ・ベースライン
- スケジュール・ベースライン
- コスト・ベースライン
- パフォーマンス測定ベースライン
- プロジェクト・ライフサイクルの記述
- 開発アプローチ
この中で1~13までは補助マネジメント計画書と呼ばれ、14~18は追加構成要素と呼ばれます。
補助マネジメント計画書は、プロジェクトマネジメント計画書の本文を作成するタイミングとは別に、他のプロセスの結果として作成されます。
一方で、追加構成要素はプロジェクトマネジメント計画書の本文の作成と同じタイミングで作成されていきます。
これらの文書を作成することがPMBOKにおける計画プロセスの大部分を占めています。
各構成要素の詳細については、それぞれのページで解説していますのでご参照ください。
プロジェクトマネジメント計画書の作成方法
参照する情報(インプット)
これまではプロジェクトマネジメント計画書の内容と構成を見てきましたが、ではプロジェクトマネジメント計画書はどのように作成していくのでしょうか。
ここからはプロジェクトマネジメント計画書の作成方法を解説していきます。
プロジェクトマネジメント計画書は、取得者側で作成した企画書やプロジェクト憲章などをもとに、当初の要件や条件を満たしながら作成していきます。
この他、プロジェクトマネジメント計画書の作成とは別に進めていたプロセスから得られた成果物や、世界標準の知識、組織のノウハウなどを集めて作成していきます。
プロジェクトマネジメント計画書作成のためのツール・技法
プロジェクトマネジメント計画書の作成では、以下のようなツールと技法がPMBOKの中で紹介されています。
- 専門家の判断
- データ収集
- ブレインストーミング
- チェックリスト
- フォーカス・グループ
- インタビュー
- 人間関係とチームに関するスキル
- コンフリクト・マネジメント
- ファシリテーション
- 会議のマネジメント
- 会議
このように、ツール・技法とはいっても、プロジェクトマネジメント計画書はプロジェクトの初期で作成するものであるため、参照できる資料に乏しく、基本的に専門家やプロジェクト・チームのメンバーと話し合いながら、この先どのようにプロジェクトを進めていくか話し合うほかありません。
実際のITプロジェクトでは、専門家たるシステム開発会社がプロジェクトマネジメント計画書を作成していき、会議で発注した会社・組織の意見を聞きながら調整し、承認を得ることが多いでしょう。
プロジェクトの中で更新していく
以上のように作成したプロジェクトマネジメント計画書はプロジェクトの指針となるものであるが、一度決定した後は変更できないような硬直的なものではありません。
プロジェクトは「段階的詳細化」という特性、つまりプロジェクトの進行とともに正確で具体的な情報が入ってくるため、プロジェクト途中での計画変更は常に想定しておいたほうがよいでしょう。
現実と計画に齟齬が発生したら、プロジェクトマネジメント計画書を見直し、プロジェクト・チームの承認のもとで改訂していく必要があります。