スコープ・マネジメント計画書とは何か?PMBOKの用語の解説

2020年3月31日

スコープ・マネジメント計画書の概要

スコープ・マネジメント計画書とは、プロジェクト・スコープを定義・文書化・検証・管理する方法を説明するために作成される文書です。
PMBOKでは「プロジェクトマネジメント計画書またはプログラムマネジメント計画書の構成要素のひとつ。スコープの定義、作成、監視、コントロール、および妥当性確認の方法を記述したもの」と定義しています[1]PMBOK第6版、715頁。

スコープ・マネジメント計画書が作成されるタイミング

スコープ・マネジメント計画書は、プロジェクトの初期段階に作成されるプロジェクトマネジメント計画書の構成要素であるため、プロジェクト全体の流れの中でもかなり早い段階に作成される文書になります。
正確に言えば、「プロジェクト・スコープ・マネジメント」の中の「スコープ・マネジメントの計画」の中で、スコープ・マネジメント計画書は作成されます。

スコープ・マネジメント計画書の構成

スコープ・マネジメント計画書の構成要素

PMBOKで説明されているスコープ・マネジメント計画書の構成は以下の通りです[2]PMBOK第6版、137頁。

  • プロジェクト・スコープ記述書を準備するプロセス
  • プロジェクト・スコープ記述書から作業分解構成図(WBS)の作成を可能にするプロセス
  • スコープ・ベースラインを承認し、保持する方法を確立するプロセス
  • 完成したプロジェクト成果物の正式な受入方法を規定するプロセス

すべて「プロセス」という言葉が使われており、少しわかりにくい表現になっていますが、少し表現を変えると以下のようになります。

  • プロジェクト・スコープ記述書を作成するためにどのような準備が必要か?
  • プロジェクト・スコープ記述書からWBSをどうやって作成するか?
  • スコープ・ベースラインを承認し、保持する方法をどのように確立するか?
  • 完成したプロジェクト成果物をどのように受け入れるか?

このような問いに答えていくのが、スコープ・マネジメント計画書の内容です。
ここからは、スコープ・マネジメント計画書の構成要素の内容を、さらに詳しく見ていきましょう。

プロジェクト・スコープ記述書を準備するプロセス

プロジェクト・スコープ記述書とは、簡単に言えばプロジェクトの作業範囲や成果物、前提条件や制約条件をまとめた文書です。
スコープ・マネジメント計画書では、このプロジェクト・スコープ記述書を作成するために、どのような活動・作業をするのかを記述していきます。
例えば、「ステークホルダーとの会議で必要作業を洗い出す」「現在の業務のユースケースから考える」など、どのようにして作業範囲や成果物を洗い出していくのかを記述していきます。

プロジェクト・スコープ記述書から作業分解構成図(WBS)の作成を可能にするプロセス

プロジェクト・スコープ記述書をどのように作成していくのかを記述したら、次はプロジェクト・スコープ記述書からどのように作業分解構成図(以下、WBSと略記)を作成していくのかを記述していきます。
WBSは図1のように、作業の構成を視覚的にまとめた図です。このWBSをどのように作成していくのかをスコープ・マネジメント計画書に記述していきます。
例えば「トップダウンで決めていこう」「会社で保有しているテンプレートから作成していこう」など、どのような手順でWBSを作成していくのかをスコープ・マネジメント計画書に記載します。

WBSの例
図1:WBSの例(Wikiより)

スコープ・ベースラインを承認し、保持する方法を確立するプロセス

次にスコープ・ベースラインを承認し、保持する方法を確立するプロセスを見ていきます。
スコープ・ベースラインとは、プロジェクト・スコープ記述書やWBSを指します。
つまり、 作成したプロジェクト・スコープ記述書やWBSをどのような手順で承認し、その活動を管理していくのかを記述していきます。

完成したプロジェクト成果物の正式な受入方法を規定するプロセス

スコープ・マネジメント計画書の最後に「完成したプロジェクト成果物の正式な受入方法を規定するプロセス」を記述していきます。
例えばユーザー側・クライアント側の受け入れテストの完了や作業完了報告書の発行と承認など、ただ単純に「作業が終わりました」というだけでなく、正式にプロジェクトを終結させるためにどのような手順をとっていくのかを記述していきます。

スコープ・マネジメント計画書はなぜ必要なのか?

以上、スコープ・マネジメント計画書の構成と内容について解説してきました。
では、こうしたスコープ・マネジメント計画書はなぜ必要なのでしょうか。
最も大きな理由は、作業の洗い出し方をプロジェクト・チームで共有することです。
プロジェクト・スコープ記述書でどのような作業や制約があるのかを記述することも大切ですが、作業に漏れがないように「どのように作業を洗い出すのか」も大切な確認事項です。
こうした確認をおろそかにしていると、プロジェクトの途中で必要な作業が見つかり、作業の手戻りが発生してしまうかもしれません。
このようなトラブルを防ぐためにスコープ・マネジメント計画書は必要だと言えるでしょう。

参考

1PMBOK第6版、715頁。
2PMBOK第6版、137頁。