コンフィギュレーション・マネジメント計画書の作り方と効果的な使い方
コンフィギュレーション・マネジメント計画書とは何か?
コンフィギュレーション・マネジメント計画書とは、プロジェクトの中で作成した様々な文書・資料を変更する際のバージョン管理の方法をまとめた文書のことです。
PMBOKによるコンフィギュレーション・マネジメント計画書の定義
PMBOKの中でコンフィギュレーション・マネジメント計画書は「コンフィギュレーション・コントロール下でのプロジェクト生成物を特定し、その責任の所在を記述し、さらに記録および変更の報告に関する方法を記述する[1]PMBOK第6版、708頁。」プロジェクトマネジメント計画書の構成要素と定義し、「プロジェクトのプロダクト、サービス、または所産が一貫性を維持し、有効であり続けるように、プロジェクトの項目に関する情報が記録され更新される方法[2]PMBOK第6版、88頁。」という説明もされています。
コンフィギュレーション・マネジメント(構成管理)の意味
コンフィギュレーション・マネジメント(Configuration Management)は「構成管理」と訳され、ISO21500では「文書、仕様及び物理的属性を管理し、関連付け、維持するための手順を適用すること[3] 榎本徹『ISO21500から読み解く プロジェクトマネジメント』オーム社、2018年、35頁。 」と定義されています。
コンフィギュレーション(Configuration)とは、構成や形状という和訳をされますが、情報システムなどで使われる際は「環境」という意味で用いられます。例えば情報システムの環境を設定するファイルは「コンフィグファイル」と呼ばれることもあります。プロジェクトマネジメントにおけるコンフィギュレーション・マネジメントで使われるコンフィギュレーションも「環境」という意味で捉えたほうが理解しやすいでしょう。
つまり、コンフィギュレーション・マネジメントとは、プロジェクトの環境をマネジメントする活動を指します。
上述のコンフィギュレーション・マネジメント計画書の説明の通り、コンフィギュレーション・マネジメントは文書や資料のバージョン管理を指しますが、より広い意味では監査などの活動も含まれます。
コンフィギュレーション・マネジメント計画書に盛り込む内容
コンフィギュレーション・マネジメント計画書には以下の内容を盛り込むとよいでしょう[4]Configuration management – Wikipedia。
- コンフィギュレーション・マネジメントを行うスタッフ
- スタッフの責任とリソース
- トレーニングの要件
- 手順とツールの定義を含む会議のガイドライン
- ベースライン
- コンフィギュレーション・コントロールおよびコンフィギュレーション・ステータスのアカウンティング
- 命名規則
- 監査とレビュー
- 外注先/ベンダーに対するコンフィギュレーション・マネジメントの要件
コンフィギュレーション・コントロールおよびコンフィギュレーション・ステータスのアカウンティング
ここでコンフィギュレーション・コントロールとコンフィギュレーション・ステータスのアカウンティングについて説明していきます。
コンフィギュレーション・コントロールとは、変更要求・提案を評価し、採用・不採用を決定するプロセスのことで、「構成制御」と日本語訳されます。
コンフィギュレーション・ステータスのアカウンティングとは、提案された変更、承認された変更の実装ステータスなど、コンフィギュレーション・マネジメントに必要な情報の記録とレポートのことを指します[5]Configuration Status Accounting| Configuration Management。
コンフィギュレーション・マネジメント計画書の使い方
統合変更管理の中でコンフィギュレーション・マネジメント計画書を使う
コンフィギュレーション・マネジメント計画書は統合変更管理の中で使用します。
統合変更管理とは、プロジェクトの進行中で生じた変更要求に対し、その変更要求が適切かどうかを判断し、実施の可否を判断し、変更した場合はその内容を共有するプロセスです。
この統合変更管理の中で判断の基準となるのがコンフィギュレーション・マネジメント計画書です。
コンフィギュレーション・マネジメント計画書であらかじめ定められたスタッフや手順、レポートの方法で統合変更管理を進めていくとよいでしょう。
コンフィギュレーション・マネジメント計画書を厳守することで効果を高める
コンフィギュレーション・マネジメントおよびコンフィギュレーション・マネジメント計画書をより有効に効果的に運用するためには、コンフィギュレーション・マネジメント計画書を厳守しなければなりません。
例えばITプロジェクトでは取得者である発注者・クライアント側のスタッフが仕様の追加などをプロジェクトマネジャーの知らないところで進めようとすることもあり、その逆に供給者である開発者・ベンダーが要求事項や要件をごまかそうとすることもあります。
こうした不正を防ぐために、コンフィギュレーション・マネジメント計画書で定められた手順に従っていない変更は承認しないなど、統合変更管理を厳格にすることが大切です。
注
↑1 | PMBOK第6版、708頁。 |
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↑2 | PMBOK第6版、88頁。 |
↑3 | 榎本徹『ISO21500から読み解く プロジェクトマネジメント』オーム社、2018年、35頁。 |
↑4 | Configuration management – Wikipedia |
↑5 | Configuration Status Accounting| Configuration Management |