スケジュール・マネジメント計画書とは何か?PMBOKの用語を解説

2020年5月5日

スケジュール・マネジメント計画書とは

スケジュール・マネジメント計画書とは、プロジェクトマネジメント計画書の構成要素の1つであり、スケジュールの作成、監視、コントロールに必要な基準と活動を規定した計画書です。
PMBOKに沿うと、スケジュール・マネジメントの計画のプロセスで作成されます。

スケジュール・マネジメント計画書はなぜ必要なのか?

スケジュール・マネジメント計画書は「スケジュールをどのように作成し、監視し、コントロールしていくのか?」ということについて書かれた計画書です。
プロジェクトのスケジュールを実際に作成するわけではないため、PMBOKを知らないプロジェクト・マネジャー(以下、プロマネと略記)はスケジュール・マネジメント計画書を作成しないかもしれませんし、作成しなかったところで問題なく完了するプロジェクトも多いでしょう。
しかし、スケジュール・マネジメント計画書を作成していくと、スケジュールに対する共通認識をプロジェクト・チームだけでなく、ステークホルダーとの間にも持つことができ、より円滑にプロジェクトを進めることができるようになります。
また監視・コントロール方法を予め決めておくことで、スケジュールの調整も容易になります

スケジュール・マネジメント計画書の内容

スケジュール・マネジメント計画書では次のような内容に言及していきます[1]PMBOK第6版、182頁。

  • プロジェクト・スケジュール・モデルの作成・決定
  • プロジェクト・スケジュール・モデルの維持
  • リリースとイテレーションの期間
  • 測定単位
  • 組織の手続きとの結びつき
  • 正確さのレベル
  • コントロールしきい値
  • パフォーマンス測定値の規則
  • 報告書式

ここからは、これらの内容について詳しく見ていきましょう。

プロジェクト・スケジュール・モデルの作成・決定

スケジュール・マネジメント計画書では、プロジェクト・スケジュール・モデルの作成・決定を行います。
スケジュール作成には、クリティカルパス法ローリングウェーブ計画など、少なからずモデルや手法が存在します。
こうしたプロジェクト・スケジュール・モデルの内、どのようなモデルや手法を使っていくのかを決定していきます。
これにより、プロジェクト・チームのメンバーが思い描いていたプロジェクト・スケジュール・モデルがバラバラであったことから、スケジュールに対する認識がズレるということがなくなります
例えば、クリティカルパス法を使って最終的な完成時期までも見積もろうとしているメンバーと、ローリングウェーブ法を使って直近の物事だけ詳細化していこうというメンバーでは、プロジェクトの初期段階での後半のスケジュールに対する認識は大きくことなります。
クリティカルパス法を使おうとしているメンバーは「スケジュールは最後まできっちり見積もるべき」とやきもきするでしょうし、ローリングウェーブ法を使おうとしているメンバーは「そんな後のことなんてわからないよ」とイライラしているかもしれません。
こうした認識の差は、結局は作業の進捗などに影響していくため、認識をそろえるためにもこのプロジェクトではどのようなモデル・手法を使ってスケジュールを作成していくのかを明確にしていく必要があります。

プロジェクト・スケジュール・モデルの維持

次に、採用されたプロジェクト・スケジュール・モデルを維持していくために、どのような活動をしていくのかを定めていきます。
これは現状のスケジュールを確認する会議をいつ開くかということから、スケジュールのバージョン管理をどのようにしていくのかというところまで話し合っておいた方がよいでしょう。

リリースとイテレーションの期間

先ほどのローリングウェーブ計画のように、定期的に計画を見直すようなスケジュールのモデル・手法を採用する場合は、見直しのタイミングや期間を決定していきます。

測定単位

スケジュールを測定する単位を決定します。
時間を表す場合は労働日数や労働時間を使いますが、パフォーマンスを測定する場合は他の単位を使うこともあります。

組織の手続きとの結びつき

ここでは、組織の手続きとスケジュール・マネジメントの計画との関連を記載していきます。
例えば、スケジュールを変更する場合はどのような手続きをとるかということや、年末年始休業はどのように扱うかなどを記載していきます。

正確さのレベル

正確さのレベルでは、スケジュールの正確さについて記述していきます。
ただ、「スケジュールの正確さはどのくらいだ」と聞かれてもなかなか答えにくいところではありますが、三点見積りのような統計学的な手法を使い、「どのくらいの振れ幅がありそうか」ということを記述し、許容値を決めておくとよいでしょう。

コントロールしきい値

コントロールしきい値とは、スケジュールのパフォーマンスを監視・コントロールするためのしきい値のことです。
つまり、「ここまでの値は許容するが、ここを超えたら何かしらの対策を講じる」という値を設けます。
例えば、各タスクの作業期間が10%延びたとしても誤差の範囲と考えて許容するが、それ以上超えて延長するのであれば対策を考えるというようなものです。

パフォーマンス測定値の規則

パフォーマンス測定値の規則では、以下のような事項を決定していきます。

達成率を確定するための規則には、どのような判断や手続きをもって達成率を決定するのかを定めます。ただ「なんとなく終わりそう」というだけで進捗率90%という報告をするのではなく、定量的な手法で達成率を測る方法を定めていく必要がありますし、発注者・受注者でのプロジェクトであれば、どのような手続きでそれを承認するのかも確定しておいた方がよいでしょう。
パフォーマンスの測定に有用なのがアーンド・バリュー・マネジメント技法(以下、EVM法と略記)です。
EVM法では予算をもとにしてプロジェクトの達成率を測っていきますが、予算やコストなどをどのように計上していくのかを細かく定めていきます。
EVM法では予算の消化をもとにして、金額を軸にスケジュールのパフォーマンスを測定していきますが、時間を軸にした評価を行うために、計画したスケジュールとの差異を評価するスケジュール・パフォーマンス測定値が必要になります。この手法にはスケジュール差異やスケジュール効率指数などが挙げられます。

報告書式

最後に報告の書式を決定していきます。
ただ単にスケジュールを報告するだけでよいのであれば、Microsoft社のExcelやPowerPointでガントチャートを作成するだけでよいかもしれません。
しかし、EVM法を使ってパフォーマンスを測定したり、スケジュール差異を出す場合は、ガントチャートだけでは不十分です。
そのため、こうしたデータをどのようにまとめ、報告するのかを検討していく必要があります。

参考

1PMBOK第6版、182頁。