【PMBOK】コンフリクト・マネジメントとは何か?リーダーに不可欠のスキル

2020年8月27日

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コンフリクト・マネジメントの概要

コンフリクト・マネジメントとは、組織の効果やパフォーマンス、学習やグループの成果を高めるため、紛争の肯定的な側面を増やしながら、紛争の否定的な側面を制限するプロセスです。
コンフリクト(conflict)とは、「紛争」を意味しており、コンフリクト・マネジメントを直訳すると「紛争管理」となります。
紛争には国家間の「国際紛争」や企業対企業の紛争など、さまざまなものがありますが、今回は組織内の紛争に焦点をしぼって解説していきます。

PMBOKの中でコンフリクト・マネジメントは、プロジェクト憲章の作成プロセスや、チームのマネジメントのプロセス、コミュニケーションのマネジメントのプロセスで使用される人間関係とチームに関するスキルです。

PMIタレント・トライアングルの画像

プロジェクト・マネジャーにはPMIタレント・トライアングルと呼ばれる3つのスキル・セットが求められますが、その中にリーダーシップのスキルがあります。
リーダーシップを執るためのリーダーの資質とスキルとして、PMBOKでは以下の事項を通して、関係やコンフリクトをマネジメントすることを挙げています[1]PMBOK第6版、61頁。

  • 信頼を構築する
  • 懸念を一掃する
  • コンセンサスを追求する
  • 競合し相反する目的のバランスを取る
  • 説得、交渉、妥協、およびコンフリクト解消のスキルを適用する
  • 個人的および専門家としての人脈を構築し育成する
  • 人間関係はプロジェクトと同様に重要であるという長期的視点を持つ
  • 政治的洞察力を継続的に育成し適用する

「説得、交渉、妥協、およびコンフリクト解消のスキルを適用する」ためには、コンフリクト・マネジメントのスキルが必要なのは明らかですが、それだけでなく、「信頼を構築する」「懸念を一掃する」「コンセンサスを追求する」「競合し相反する目的のバランスを取る」という項目を達成するためにもコンフリクト・マネジメントのスキルを使用する場面があります。
このように、コンフリクト・マネジメントのスキルは、プロジェクトマネジャーにとって不可欠のスキルであると言えるでしょう。

コンフリクトへの対処法

コンフリクトの対処法

プロジェクトにおけるコンフリクトとは、プロジェクト・メンバー同士の衝突のことであり、その原因として資源不足、メンバー個々のスケジュール優先順位の違い、個人の作業スタイルなどが挙げられます[2] PMBOK第6版、348頁。

コンフリクトは放置しておけば、プロジェクト・チームの人間関係を悪化させ、チームの生産性を悪化させていきます。コンフリクトは組織としての生産性を下げるため、事態が悪化する前に、初期段階で対処されるべきです。
一方で、適切に処理できれば、「雨降って地固まる」というように、職場の人間関係を好転させ、高い創造性とより良い意思決定により生産性を向上させることを期待できるようになります。

コンフリクトの解消方法には、以下5つの方法があります[3]PMBOK第6版、349頁。

  • 撤退や回避
  • 鎮静や適応
  • 妥協や和解
  • 強制や指示
  • 協力や問題解決

「撤退や回避」では、現在の、または潜在的なコンフリクト状態から身を引き、対応する準備が整うまで、または他の誰かが解消するまで課題を先送りにする手法です。
この手法では根本的な解決にはなっていないため、改めて対策を講じる必要があります。

「鎮静や対応」では、意見の異なる部分ではなく、同意できる部分を強調し、相手のニーズへの立場を認め、調和と関係を維持していきます。

「妥協や和解」では、関係者全員がある程度は納得できる解決策を模索し、コンフリクトを一時的または部分的に解消していきます。ただし、双方に不利な状況に終わることもある手法なので、注意が必要です。

「強制や指示」では、権力のある地位を利用するなどして、緊急事態を解決する手法です。例えば紛争を起こしているプロジェクト・メンバーの共通の上司にお願いし、事態の収拾をお願いするようなときは「強制や指示」の解決法を採ったことになります。
この手法はどちらかが勝ち、どちらかが負けるというWin-Loseの関係を生み、円満な解決を見ない可能性があります 。
例えば、プロジェクト・チームのAさんとBさんが優秀なプログラマーの作業時間など、特定の資源を取り合っていたとし、彼らの上司が「今回はAに譲れ」という決定をしたとします。そうすると、資源を獲得したAさんは一安心ですが、Bさんは代わりとなる資源を探さなければなりません。

「協力や問題解決」では、コンセンサスとコミットメントにつながるような協調性のある姿勢とオープンな対話により、異なる観点から複数の視点や洞察を取り込む手法です。
この手法では、お互いに利益のあるWin-Winの関係を生み出す可能性があります。

コンフリクトは、問題となっているプロジェクト・メンバー同士でまずは話し合い、解決の道を模索していくことがベストですが、当人同士での解決が難しい場合は、プロジェクト・マネジャーがサポートし、コンフリクトを解消していく必要があります。
また、問題解決が容易ではない根の深いコンフリクトについては、一時的な対処として撤退や回避、強制や指示を選択していきます。

コンフリクトの解決方法に影響を及ぼす要因

これまでは、コンフリクトの解決方法について見てきましたが、これら手法のどの方法を選ぶかは、 以下の要因から判断していきます。

  • コンフリクトの重要度とその深刻度
  • コンフリクト解消への時間的圧力
  • コンフリクトに関与した人々の相対的な力関係
  • 良好な関係を維持することの重要性
  • コンフリクトを長期的または短期的に解消しようとする動機

このように、どの手法でコンフリクトを解決していくかは、さまざまな基準で判断されます。

1PMBOK第6版、61頁。
2 PMBOK第6版、348頁。
3PMBOK第6版、349頁。