ステークホルダー・エンゲージメント計画書とは何か?PMBOKの用語を解説

2020年6月25日

ステークホルダー・エンゲージメント計画書の概要

ステークホルダー・エンゲージメント計画書は、プロジェクトのステークホルダーの生産的な関与を促すための戦略や方針を定めたものです。
例えば、ステークホルダーの関心を分析し、その内容に応じて対応方法や頻度を策定した資料です。
ステークホルダー・エンゲージメント計画書はPMBOKではステークホルダー・エンゲージメントの計画のプロセスで作成され、プロジェクトマネジメント計画書の構成要素でもあります。

ステークホルダー・エンゲージメント計画書の内容

ステークホルダー・エンゲージメント計画書にどのような内容を記載していくかは、PMBOKの中でも詳しくは語られていません。
しかし、少なくとも以下の3点をおさえておけばよいでしょう。

ここからは、これら3つの内容を詳しく見ていきます。

ステークホルダー登録簿

ステークホルダー登録簿の概要

ステークホルダー登録簿とは、プロジェクトのステークホルダーを特定し、その役割や影響度を査定し、分類したプロジェクト文書の1つです。
つまり、このプロジェクトにどのような人物たちが関わっており、どのような役割と影響力をもっているのかをまとめた文書です。

ステークホルダー登録簿の例

ステークホルダー登録簿は以下のような形で表にまとめていきます。

ステークホルダー部門役割影響度プロジェクトに対する姿勢
P社社長最終意思決定者支持する
Q部長総務部プロジェクト統括責任者支持する
R氏総務部プロジェクト責任者支持する
S部長営業部利用部門責任者抵抗あり
T氏営業部利用部門担当者支持も抵抗もしない

このように、ステークホルダー登録簿では各ステークホルダーの名前と所属、役割と影響度、そしてプロジェクトに対する姿勢をまとめていきます。
ステークホルダー登録簿を作成すると、各ステークホルダーがどのような場面で、どのようなトラブルを引き起こす可能性があるのかが見えてきます。
例えば、上記の表中でS部長は利用部門の責任者であり、影響力も大きいものの、プロジェクトには抵抗をしめしています。プロジェクトの意味や価値をS部長にはアピールし続け、姿勢を変えていかなければ、プロジェクトを白紙に戻すような行動に出てしまうかもしれません。
このようなトラブルを防ぐためにも、ステークホルダー登録簿を作成し、現在の状況をつかんでおく必要があります。

ステークホルダー登録簿の作成方法

ステークホルダー登録簿を作成していくには、ステークホルダーを特定していかなければなりません。
このステークホルダーの特定という作業が、ステークホルダー・エンゲージメントを考える上でとても重要です。
つまり、「誰がステークホルダーなのか?」が明らかでなければ、ステークホルダーと良好な関係を築くことはおろか、その対応方針を策定していくこともできません。
ステークホルダーを特定するためには、プロジェクト憲章資源マネジメント計画書コミュニケーション・マネジメント計画書などのプロジェクトマネジメント計画書などから、プロジェクトに影響を与えたり、受けたりする人物を探していきます。

ステークホルダー関与度評価マトリックス

ステークホルダー関与度評価マトリックスの概要

ステークホルダー・関与度評価マトリックスの例

ステークホルダー関与度評価マトリックスとはステークホルダーと関与度をマトリックス状に視覚化したデータの表現方法です。
一見、ステークホルダー登録簿のようにも見えますが、ステークホルダー関与度評価マトリックスでは、各ステークホルダーの関与度を不認識抵抗中立支援型指導の5つに分け、現在の状況にCを、望ましい状態にDをとり、理想と現実の差を把握できるようにしています。

ステークホルダー関与度評価マトリックスの作成

ステークホルダー関与度評価マトリックスを作成するには、各ステークホルダーの関心や期待を調査していく必要があります。
これはプロジェクト憲章などの文書に書かれていることもありますが、実際に当の本人からヒアリングを行うことも大切です。

ステークホルダーとの関与方法

ステークホルダー登録簿、ステークホルダー関与度評価マトリックスを作成した後は、具体的にどのようにステークホルダーとの関係を築いていくかを考えていきます。
例えば、アドバイザーとしてプロジェクトのすべてのプロセスに参加をしてもらうようお願いしたり、定期的にメールで進捗を報告したりと、関与の方法は様々です。

ステークホルダー関与度評価マトリックスの変化を表す画像

最終的にはステークホルダー関与度評価マトリックスの表中のCとDが同じセルに収まるようにしていきます。ステークホルダー関与度評価マトリックスでCとDが同じセルにあるということは、望ましい状態に現在の状況が落ち着いていることを表しているからです。
このように、理想と現実が合致するような戦略をステークホルダー・エンゲージメント計画書では記述していく必要があります。

こちらの記事もご参照ください

今回はステークホルダー・エンゲージメント計画書について解説をしていきました。
今回紹介した「ステークホルダー登録簿」「ステークホルダー関与度評価マトリックス」については、別のページで詳しく解説しているため、ぜひそちらもご覧ください。