【なぜ人気?】あえて商品を絞る店「リミテッド・アソートメント・ストア」の魅力とは?
「お店に行っても商品が多すぎて、何を選んだらいいか分からない…」
「もっとパパッと買い物を済ませたいのに、選択肢が多すぎて時間がかかる…」
毎日たくさんのモノや情報に囲まれて生活している私たちは、知らず知らずのうちに「選ぶこと」に疲れてしまっているのかもしれません。そんな現代に、あえて取り扱う商品の種類をギュッと絞ったお店、「リミテッド・アソートメント・ストア(Limited Assortment Store、以下LAS)」が注目を集めています。
この記事では、なぜLASが人気なのか、その秘密と、私たちの消費行動や心理にどんな影響を与えているのかを、初心者の方にも分かりやすく解説します。
![[画像:たくさんの商品で埋め尽くされた棚の前で頭を抱える人と、スッキリと商品が厳選された棚の前で笑顔で商品を選ぶ人の対比イメージ。]](https://ssaits.jp/promapedia/wp-content/uploads/2025/05/LAS-2-1024x576.png)
「選ぶのって、疲れる…」そんなあなたに朗報?~選択のパラドックスと決定回避~
たくさんの選択肢があることは、一見すると良いことのように思えますよね。
でも、実はそうとも限らないんです。
たくさんありすぎると、逆に選べない?(選択のパラドックス)
心理学者のバリー・シュワルツ氏は、「選択肢が増えすぎると、かえって不安になったり、満足度が下がったりする」という「選択のパラドックス」を提唱しています。
有名な「ジャムの実験」では、24種類のジャムが並んでいる時よりも、6種類だけの時の方が、お客さんは10倍も多くジャムを買ったそうです。
選択肢が多すぎると、「もっと良いものがあるかも…」「選んだ後に後悔するかも…」と考えてしまい、結局何も選べなくなってしまうことがあるんですね。
選択のパラドックスについては、下記の記事で詳しく解説していますので、よろしければご覧ください。
決めるのが面倒で、後回し?(決定回避)
また、選ぶのが複雑だったり、ストレスを感じたりすると、「もう決めるのやーめた!」と決定そのものを避けてしまう「決定回避」という心理も働きます。たくさんの商品情報を見比べて、どれが一番いいか考えるのは、頭も使うし疲れますよね。
LASは、この「選ぶ疲れ」に対する一つの答えを提案してくれています。
リミテッド・アソートメント・ストアって何?~"あえて少なく"が魅力のお店~
LASとは、その名の通り、取り扱う商品の種類(アイテム数)を大幅に限定している小売店のことを指します。一般的なスーパーが数万種類の商品を置いているのに対し、LASでは数千種類、時には1000種類台にまで絞り込んでいることもあります。
![[画像:LASの店内イメージ。通路が広く、カートンごと陳列された商品や、厳選された商品が分かりやすく並んでいる様子。]](https://ssaits.jp/promapedia/wp-content/uploads/2025/05/LAS-1-1024x576.png)
お店の特徴:ギュッと厳選!
LASの主な特徴は以下のとおりです。
- 商品の種類が少ない
- 人気商品や必需品が中心
- 質の良いものが多いことも
なんで人気なの?お客さんのメリット
LASがお客さんに支持される理由は、たくさんあります。
- 買い物時間が短縮できる
- 意思決定がラクになる
- お手頃価格なことが多い
- 「お店が選んでくれた」という安心感
お店側のメリットもあるの?
もちろん、お店側にもメリットがあります。
- 運営コストを抑えられる
- 商品のロスが減る
- 特定の商品を大量に仕入れられる
リミテッド・アソートメント・ストアの「秘密」~どうやって安くて良いものが買えるの?~
LASが、お手頃な価格で、しかも時には質の良い商品を提供できるのには、いくつかの「秘密」があります。
商品を絞り込む戦略
LASは、ただ商品を少なくしているわけではありません。「どのカテゴリーの商品を、どのくらいの深さで置くか」を戦略的に決めています。
つまり、専門家が「これぞ!」という商品を厳選してくれている(キュレーション)イメージです。
お店オリジナル商品(プライベートブランド)がいっぱい
多くのLASでは、自社で企画・開発したプライベートブランド(PB)商品に力を入れています。
PB商品は、品質をコントロールしやすく、他のお店にはないユニークな商品を提供できる上に、利益率も高めやすいというメリットがあります。
いつでもお手頃価格のヒミツ
LASは、特定の日だけ安売りするのではなく、「エブリデー・ロープライス(EDLP:毎日低価格)」戦略を取ることが多いです。
これは、少ない種類の商品を大量に仕入れることでコストを下げたり、お店の運営にかかるムダを徹底的に省いたりすることで実現しています。
ムダを省いた効率的なお店づくり
例えば、商品を段ボール箱のまま陳列したり(カートン・ディスプレイ)、買い物カートの利用を有料のデポジット制にしたりすることで、品出しやカート回収の手間を省き、人件費を抑えているお店もあります。
どんなお店があるの?~世界の成功例を見てみよう~
LASのビジネスモデルで成功している有名なお店は世界中にあります。
アルディ(Aldi):安さの秘密は徹底した効率化
ドイツ発祥のアルディは、LASの代表格です。約1,500種類という極めて少ない商品数、その90%以上がPB商品で、生活必需品を中心に扱っています。カートン陳列やカートのデポジット制など、徹底したコスト削減で低価格を実現しています。
リドル(Lidl):アルディのライバル、独自の魅力も
リドルもドイツ発祥で、アルディと似たビジネスモデルですが、インストアベーカリー(店内でパンを焼く)に力を入れるなど、独自の魅力も打ち出しています。
PB商品と世界からの輸入品を組み合わせています。
トレーダー・ジョーズ(Trader Joe’s):ユニークな商品と楽しいお店
アメリカで人気のトレーダー・ジョーズは、個性的で高品質なPB商品(輸入品やオーガニック商品も多い)に特化しています。店内は「宝探し」のような雰囲気で、フレンドリーな接客も特徴です。
コストコ(Costco):会員制でドーンとまとめ買い
コストコは会員制の倉庫型店舗で、大容量(バルク)の商品を低価格で提供しています。
PBの「カークランドシグネチャー」は非常に人気があります。
厳選された高品質な商品をまとめ買いできるのが魅力です。
日本でも注目のお店
日本でも、LASの考え方を取り入れたお店が登場しています。
- パレッテ(イオングループ): アルディなどを参考に開発された、日本のハードディスカウントストア(HDS)の一つです。
- ビッグ・エー: PB商品中心の小型店舗で、徹底した効率化で低価格を実現しています。
これらのお店は、共通して商品の種類を絞り、効率的な運営でお手頃価格を実現しつつ、それぞれ独自の方法でお客さんの心をつかんでいます。
「あえて少なく」にも悩みはある?~リミテッド・アソートメント・ストアの課題~
たくさんのメリットがあるLASですが、もちろん課題もあります。
全員の欲しいものが見つかるわけじゃないかも
商品の種類が少ないということは、特定の商品やブランドにこだわりのある人にとっては、欲しいものが見つからない可能性があります。
「これだ!」という商品選びが超重要
LASの成功は、「お店が厳選した商品」がお客さんのニーズに合っているかどうかに大きく左右されます。 もし商品選びがイマイチだと、お客さんは離れてしまいます。
これからのリミテッド・アソートメント・ストアはどうなる?
お店の形も時代と共に変わっていきます。LASも例外ではありません。
ネット通販との組み合わせ
オンラインなら少し品揃えを増やしたり、もっと広い地域のお客さんに届けたりできるかもしれません。ネットで注文して店舗で受け取るサービス(BOPIS)なども、LASと相性が良さそうです。
「あなただけ」へのオススメも?
AIやデータ分析を使って、少ない商品の中からでも、一人ひとりのお客さんに合った商品をオススメできるようになるかもしれません。
地球に優しいお店にも注目
商品を絞ることは、食品ロスを減らしたり、輸送効率を上げたりすることにも繋がるため、環境に配慮したお店として注目される可能性があります。
まとめ:「選ぶ楽しさ」と「選ばないラクさ」のいいとこ取り!
今回は、「リミテッド・アソートメント・ストア(LAS)」について解説しました。
LASは、あえて商品の種類を絞ることで、
- 私たち消費者の「選ぶ疲れ」を減らし、買い物をラクにしてくれる。
- お店のムダを省くことで、お手頃な価格を実現してくれる。
という、魅力的なお店です。
情報やモノがあふれる現代だからこそ、LASが提供する「シンプルさ」や「分かりやすさ」は、ますます多くの人にとって価値のあるものになっていくでしょう。「たくさんの中からじっくり選びたい」という楽しさもあれば、「パパッと必要なものを、迷わず気持ちよく買いたい」というニーズも確かにあります。
LASは、そんな私たちの新しい買い物スタイルの一つの形なのかもしれませんね。