コスト・マネジメント計画書とは何か?作成方法を解説

2020年5月6日

コスト・マネジメント計画書とは

コスト・マネジメント計画書とは、コスト・マネジメントの計画のプロセスで作成される文書であり、プロジェクトのコストの計画、構造化、コントロールが記述されていきます。
プロジェクトの初期に作成されるプロジェクトマネジメント計画書の構成要素の1つです。

コスト・マネジメント計画書の内容

コスト・マネジメント計画書には以下のような内容を記述していきます[1]PMBOK第6版、239頁。

  • 測定単位
  • 精密さのレベル
  • 正確さのレベル
  • 組織の手続きとの結びつき
  • コントロールしきい値
  • パフォーマンス測定値の規則
  • 報告書式
  • その他の詳細情報(資金調達方法や為替変動への対応など)

ここからはこれらの内容を細かく見ていきましょう。

測定単位

コスト・マネジメント計画書では、コスト・マネジメントをしていく上でどのような単位を使っていくのかを記述していきます。
コストなので、日本であれば「円」という単位を使うことは容易に想像できますが、「プログラマーの作業量」などはコスト・マネジメント計画書に子細を記載しておかなければ、プロジェクト・チーム内で認識の齟齬が起きてしまうかもしれません。
こうしたトラブルを防ぐため、コスト・マネジメントで使用する単位を定めていきます。

精密さのレベルと正確さのレベル

測定単位を定めたら、測定する数値の精密さのレベル正確さのレベルについて言及していきます。
精密さとは「1,000円未満の数値は繰り上げて扱い、例えば9,900円は10,000円と扱う」というようにどこまで元の数値に近い形で表示するかを表しています。
一方で、正確さとは数値の振れ幅のことであり、「予算10,000円」といっても±10%程度は変動するというような許容範囲を示すものです。
大規模なプロジェクトで精密さにこだわり、「1の桁まで正しく表記する」というようにしてしまうと管理が大変になってしまいます。とはいえあまりにアバウトにしすぎてしまっても、管理している情報が実態とかけ離れてしまい、意味をなさなくなってしまいます。
同様に、「予想で10,000円のコストと予想していたのだからそれ以上はだせない!」という風に正確さにこだわりすぎてしまうと円滑なプロジェクト進行が難しくなってしまいますが、数値のズレを気にしないとコスト・マネジメントにはなりません。
どの程度の精密さ・正確さでコスト・マネジメント計画書を作成していくか、適切なラインを見きわめる必要があります。

組織の手続きと結びつき

プロジェクトではすべてのアクティビティ・タスクを洗い出した後にワーク・ブレークダウン・ストラクチャー(以下、WBSと略記)を作成していきます。
WBSでは参考画像のように、アクティビティやタスクをその活動の種類に沿ってツリー状にまとめていきますが、それぞれの構成要素はコントロール・アカウントとも呼ばれ、組織の経理システムに結びつけて管理されていくこともあります。
このように、組織の管理手続きなどとプロジェクトのコスト・マネジメントがどのようにかかわりを持っていくのかをここで記述していきます。

WBSの例
参考画像:WBSの例(Wikiより)

コントロールしきい値

コントロールしきい値とは、どこまでの変動であれば許容するのかという値です。裏を返せば、「どのような状態になったら対策を講じるのか」という線引きをすることでもあります。
先ほど「正確さ」という言葉がでてきましたが、正確さとして記述された振れ幅以上の変動が観測された場合、何らかの対応が必要になります。
例えば「ツールの購入に10,000円が必要」という計画の中で、正確さを「±10%」と考えていた場合は、11,000円かかっても大きな問題はありません。
しかし、11,000円を超えて、12,000円かかってしまうという場合は、その原因を調査し、対策をとる必要があります。
このように、当初の計画にどの程度離れたら対策を講じるのかという線引きをしていきます。

パフォーマンス測定値の規則

コスト・マネジメントのパフォーマンスを測定するための規則を定めていきます。
コスト・マネジメントではパフォーマンスの測定でアーンド・バリュー・マネジメント(以下、EVMと略記)が使用されます。
EVMでは予算を評価の軸にして分析を行っていきますが、どのような計算手法を使うのかをここで定めていきます。

また、先ほどのWBS上でコントロール・アカウントの測定を実施する箇所の定義をしていきます。

報告書式

報告書式では、その名の通りどのような書式でコスト・マネジメントの活動を報告していくのかを記載していきます。
例えばEVMを使う場合は、通常の表でも消費した予算とベースラインを比較できますが、折れ線グラフを使って視覚的に表現することもできます。
パフォーマンスを表現するためにどのような形式で報告書を作成するのか、予め決めておいた方がよいでしょう。

その他の詳細情報

コスト・マネジメント計画書に記載する事項は報告書式までで十分ですが、必要に応じてその他の詳細情報も記載していきます。
例えば資金調達の方法であったり、為替相場の変動にどのように対応するかなど、プロジェクトにあわせてコスト・マネジメントに影響しそうな事柄について予め方針を決めておきます。

1PMBOK第6版、239頁。