要求事項マネジメント計画書(ビジネスアナリシス計画)とは何か?PMBOKの用語を解説

2020年4月12日

要求事項マネジメント計画書とは

要求事項マネジメント計画書とは、プロジェクトの要求事項を分析、文書化し、その内容を管理していく計画をまとめたものです。
PMBOKでは「要求事項の分析、文書化、マネジメントのやり方を文書化した、プロジェクトマネジメント計画書またはプログラムマネジメント計画書の構成要素のひとつ」と定義しています[1]PMBOK第6版、736頁。
この要求事項マネジメント計画書はビジネスアナリシス計画とも呼ばれます。

要求事項マネジメント計画書が作成されるタイミング

要求事項マネジメント計画書は、PMBOKの手順でいうと、プロジェクト・スコープ・マネジメントのプロセスで作成されます。
このプロジェクト・スコープ・マネジメントは、プロジェクトのスコープ、つまり作業範囲をどのように管理していくかを考えるプロセスです。
プロジェクト・スコープ・マネジメントで作業範囲を管理方法を策定する中で、ステークホルダーのニーズ(要求事項)をどのように収集・整理し、管理していくのかをまとめたのが要求事項マネジメント計画書です。
そのため、要求事項マネジメント計画書は、まだ要求事項の整理を行っておらず、後に控えている要求事項の収集のプロセスでガイドラインとして使用していきます。

要求事項マネジメント計画書のメリット

なぜ要求事項マネジメント計画書は必要なのでしょうか。そのメリットをまとめると以下のようになります[2]Requirements management – planning for success!

  • コスト削減
  • 品質の向上
  • 所要時間の短縮
  • リスクの減少
  • 効果的なスコープ管理を可能にする

プロジェクトが失敗する要因は多々ありますが、その中に要求事項が十分に収集・分析されないことが挙げられます。
そのため、要求事項マネジメント計画書を作成することによって、要求事項の収集方法や管理方法が整理されるとプロジェクトの成功率が高まります。
その結果、コスト削減や品質の向上が期待できるようになります。
また、要求事項が整理されるということは、「プロジェクトで何をするのか」が明確になることを意味しています。
そのため、要求事項マネジメント計画書の作成によってプロジェクトの展望が明らかになると、プロジェクトの取り組み方も効率的になり、所要時間の短縮やリスクの減少も期待でき、ひいては効果的なスコープ管理を可能にすることができます。

要求事項マネジメント計画書の構成

要求事項マネジメント計画書は以下のような構成をとります[3]PMBOK第6版、137頁。

  • 要求事項に関する活動の計画、追跡、および報告の方法
  • 変更の起案方法、影響の分析方法、変更の確認・追跡・報告などの方法、およびこれらの変更を承認するために必要な認可レベルなど、コンフィグレーション・マネジメントの活動
  • 要求事項の優先順位付けプロセス
  • 使用されるメトリックスおよびその使用理由
  • どの要求事項の属性がトレーサビリティ・マトリックスに取り込まれるのかを反映するトレーサビリティ構造

もう少し簡単に言い換えると、以下のようになります。

  • 計画の方法
  • 変更の方法
  • 優先順位付けの方法
  • メトリックスの選択
  • 追跡方法

ここからは、これら要求事項マネジメント計画書の構成要素について見ていきましょう。

計画の方法

要求事項マネジメント計画書では、はじめに計画の方法を考えていきます。
内容としては、どのようにして要求事項を収集していくのかを記述していきます。
この要求事項をどのように収集し、その要求を満たす計画をしていくかはプロジェクトにおいて非常に重要な議題です。
この点に関しては、また稿を改めてご紹介いたします。

変更の方法

変更の方法では、要求事項や対応内容に変更が発生した場合、どのような手続きをもって対応していくかを記載していきます。
変更の方法や文書のバージョン管理については、統合変更管理コンフィグレーション・マネジメント計画書も参考にし、これらの管理手法や計画書に準拠するとしてもよいでしょう。

優先順位付けの方法

優先順位付けの方法では、数ある要求事項の中で、どのような優先順位で対応していくのかを記述していきます。
費用が掛かりすぎてしまう内容については諦めざるをえません。

メトリックスの選択

メトリックスの選択では、要求事項の管理のために何か基準や指標を使う際、その基準・指標の紹介と、それらを使用する理由を記載していきます。

追跡方法

収集していった要求事項をどのように追跡できるのかを記していきます。
例えば、ある会社のプロジェクトで、社長が出した要求事項があったとします。プロジェクトの最中に社長が「自分の出した要求事項はどのように対応されているか」とプロジェクト・マネジャーに質問した場合、その状況がすぐにわかるのが理想です。
こうした状況を作り出すために、どのような管理・体制を築いていくのかを記載していきます。

参考

1PMBOK第6版、736頁。
2Requirements management – planning for success!
3PMBOK第6版、137頁。