コミュニケーション・マネジメント計画書とは何か?その作り方と使い方を解説
コミュニケーション・マネジメント計画書とは
コミュニケーション・マネジメント計画書とは、プロジェクトマネジメント計画書の構成要素で、いつ、誰が、どのようにプロジェクトの情報を管理し、発信するかを記述したものです[1]PMBOK第6版、707頁。。つまり、プロジェクトの中で、どのようにしてプロジェクト・メンバー間の情報共有をしていくのかをとりまとめた書類であると言えるでしょう。
コミュニケーション・マネジメント計画書に掲載する内容
コミュニケーション・マネジメント計画書には以下の情報を掲載します[2] PMBOK第6版、377頁 。
- ステークホルダー・コミュニケーション要求事項
- 言語、書式、内容、詳細度などを含む伝達すべき情報
- エスカレーション・プロセス
- その情報を配布する理由
- 必要とされる情報を配布する時間帯と頻度
- 情報伝達の責任者
- 情報を受け取る個人またはグループ
- 情報伝達の手段や技術
- コミュニケーション活動に割り当てる資源
- コミュニケーション・マネジメント計画書の更新・改善の方法
- 共有用語集
- 情報の流れ
- 制約条件
ここからは聞きなれない用語について解説していきます。
ステークホルダー・コミュニケーション要求事項
ステークホルダー・コミュニケーション要求事項はPMBOKの中でもコミュニケーション・マネジメント計画書の項で唐突に出現する用語です。
似ている用語である「ステークホルダー要求事項」が「ステークホルダーまたはステークホルダー・グループのニーズ [3] PMBOK第6版、148頁 」を意味しているため、ステークホルダー・コミュニケーション要求事項は「ステークホルダーまたはステークホルダー・グループがコミュニケーションに対して抱いているニーズ」と考えられるでしょう。
「メーリングリストで連絡をとりたい」「社内のセキュリティ上Googleスプレッドシートなどは使えない」などの要求事項を整理するのがステークホルダー・コミュニケーション・要求事項です。
エスカレーション・プロセス
エスカレーション・プロセスという言葉も、 PMBOKのコミュニケーション・マネジメント計画書の項で突如出現します。
エスカレーションとは上位者、上席者の指示を仰ぐことです。例えばプロジェクト・メンバーでは対応や解決・判断ができない問題に直面したとき、よりスキル・経験のある上位者・上席者にどのように指示を仰いでいくのかをエスカレーション・プロセスでは記載します。
コミュニケーション・マネジメント計画書の改善点
進捗状況の共有がうまくいかなかった場合
IPAのPM試験にこのような出題がありました。
顧客に提出した進捗状況の報告書に対して、顧客から成果物ごとの進捗状況についての問い合わせが繰り返しあった。今後このような事態が発生しないようにするためには、プロジェクトのコミュニケーション・マネジメント計画書のどの内容を是正する必要があるか。
平成31年春期PM試験、問14
単なる進捗状況の共有ができていないというものではなく、「成果物ごと」の進捗状況ができていなかったことが問題となっています。
つまり、「デザイン」「設計書」「開発」という3つの成果物があるにもかかわらず、全体としての進捗や特定の成果物の状況しか報告できていなかった状況が想像されます。
こうした問題に対処するために是正すべき項目は「言語、書式、内容、詳細度などを含む伝達すべき情報[4]平成31年春期PM試験、問14の選択肢では「伝達すべき情報の内容、表現形式及び詳細度」」です。
どの程度の粒度で報告を行わなければならないかということを、改めてプロジェクト・メンバー間で話し合う必要があります。