フォーカス・グループとは何か?ステークホルダーの意見を聞きだすインタビュー法
フォーカス・グループの概要
フォーカス・グループは、マーケティング・リサーチにおける手法のひとつです。6人~10人程度を集めてグループを作り、指定のテーマについて議論をしてもらう中で情報収集を行います。
フォーカス・グループを実施する目的としては、消費者のニーズを的確に把握することや、自社商品の評価を得ることなどが挙げられます。
第2次世界大戦中にプロパガンダの効果を測定しようとしたことがフォーカス・グループの始まりとされ、もともとは「フォーカス・インタビュー」と呼ばれていました[1]Focus Group Definition – What is Focus Group。
今日、フォーカス・グループはマーケティングを中心に、情報科学や社会科学、ユーザビリティ工学など、幅広い分野で使用されており、プロジェクト・マネジメントでも使用されています。
フォーカス・グループの利用法

ここからはフォーカス・グループの利用方法について解説していきます。
フォーカス・グループによる情報収集の大まかな流れは以下の通りです。
- 6~10人程度のグループを作る
- 司会役を用意する
- 30~90分のディスカッションを行う
- ディスカッションの中で発言された意見やアイデアを司会やオブザーバーがメモする
上述の通り、フォーカス・グループは6人~10人程度の人数を集めてグループを作り、議論を行います。
グループの参加者は誰でもよいわけではなく、目的に応じて選定する必要があります。
そのグループの会話の進行役となる司会役を事前に準備しておきます。
司会の役割は、複数の質問をグループに投げかけつつ、活発な議論を促すことです。
もうひとつの役割は、議論の脱線を防ぐために誘導を行うことです。
オープンかつ効率的な議論を実現し、その様子を司会や別に用意したオブザーバーが観察することで、意義のある情報収集につなげることができます。
フォーカス・グループのメリット
低コストですぐに実施できる
フォーカス・グループのメリットは、比較的低コストですばやく実施できることが特長です。
意見を収集しようとアンケートなどをとっていくと、アンケート作成・配布のコストや、 実施するまでの準備や集計までの時間がかかってしまいます。
その点、フォーカス・グループは調査対象となる人の予定があえば実施できるので、アンケートと比べると低コストかつ短時間で実施することが可能です。
市場セグメントを代表する人から生の声を聞ける
フォーカス・グループのメンバーは、リサーチの目的に沿って選定します。若い女性向けの商品を開発したい場合は、20代の女性でグループを構成するなど、適切な形でメンバーを選定します。必然的に、対象の市場セグメントを代表する人がメンバーに含まれるため、有力な情報収集になるという点がメリットです。
意見交換の様子を観察できる
フォーカス・グループの大きな特徴は、複数人で意見交換が行われることです。1対1のインタビュー形式の場合、一個人の意見のみを引き出すため、得られる情報量も限定的になります。その一方、フォーカス・グループの場合は、オープンな議論の中で複数人の意見を引き出すため、より適切にニーズを把握することができます。
フォーカス・グループのデメリット
フォーカス・グループには様々なメリットがあるものの、デメリットも存在します。
より有効に活用ができるように、ここからはフォーカス・グループのデメリットを解説していきます。
参加者が周囲の影響を受けてしまう
フォーカス・グループのデメリットは、参加者が周囲の影響を受けてしまうことです。
例えば、押しの強い、声の大きい人の意見が正しいとされてしまうことで、意見に偏りがでてしまうことがあります。
参加者がこうした周囲の影響を受けないようにすることはできないため、司会は参加者の意見を広く聞きながら、ディスカッションを進行していく必要があります。
小規模集団の限界
フォーカス・グループでは、多くても10人程度の参加者のディスカッションから情報収集を行います。しかし本当に10人程度の意見で適切な情報が得られるのかについては疑問が残り、フォーカス・グループの弱点とされています。
そのため、一度のフォーカス・グループで終わりにするのではなく、複数回実施し、別の地域で開催したり、参加者の募集の仕方を変えたりと、できるだけ広く情報を収集する必要もでてきます。
フォーカス・グループの活用手法について
マーケティングの場面でのフォーカス・グループ
フォーカス・グループを活用する企業は多くあり、代表的な目的のひとつに「新商品コンセプトへの評価」が挙げられます。開発段階にある新商品のコンセプトを評価してもらい、改善などにつなげるというものです。
このような目的でフォーカス・グループを実施する場合、「体験型」になるケースが多いです。具体的には、新商品コンセプトをもとに作られた試作品を、フォーカス・グループのメンバーに実際に使ってもらうというものです。メンバーが試作品に対して率直な意見を述べることで、企業側としても適切な商品開発につなげることができます。
また、メンバーが試作品を使ったり意見を述べたりする様子については、モニターやハーフミラー越しに確認することが一般的です。
ステークホルダーの意見を聞く
プロジェクト・マネジメントの中では、ステークホルダーの意見を聞くためにフォーカス・グループが使用されることがあります。
プロジェクトを成功に導くためには、 プロジェクトの出資者・意思決定者であるステークホルダー(プロジェクト・スポンサー)の要件を正確に把握しておくことが大切です。そのため、ステークホルダーが何を考えているのかをくみ取る必要があります。
そうした時にステークホルダーと専門家を集めて、現在開発を予定しているプロダクトやサービスなどへの意見や要望を聞き、情報収集を行っていきます。