アクティビティ所要期間の見積りとは何か?PMBOKの用語を解説

2020年9月14日

アクティビティ所要期間の見積りの概要

アクティビティ所要期間の見積りとは、PMBOKのスケジュール・マネジメントのプロセスの1つで、想定した資源で、プロジェクトで予定されている個々のアクティビティを完了させるために必要な作業期間を見積もるプロセスのことです。

PMBOKではスケジュール・マネジメントとして、スケジュール・マネジメントの計画アクティビティの定義アクティビティの順序設定アクティビティ所要期間の見積りというプロセスを経て、スケジュールの作成を行います。
スケジュール・マネジメントの計画ではスケジュール作成の方針を定め、アクティビティの定義ではどのようなアクティビティがあるのかを明確にし、アクティビティの順序設定ではアクティビティ間の依存関係を明らかにし、アクティビティ所要期間の見積りではアクテビティにかかる時間(期間)を見積もっていきます。そして最後にスケジュールの作成のプロセスでこれまでの情報を踏まえてスケジュールを作成していきます。

このように、アクティビティ所要期間の見積りは、それまでのプロセスで明確になったアクティビティに対して所要期間を見積もることにより、スケジュールの作成に情報を提供することが目的です。

アクティビティ所要期間の見積りのアウトプット

まずはアクティビティ所要期間の見積りアウトプットを確認し、このプロセスのゴールを確認していきましょう。
PMBOKで紹介されているアクティビティ所要期間の見積りのアウトプットは以下の通りです[1]PMBOK第6版、203~204頁。

  • 所要期間見積り
  • 見積りの根拠
  • プロジェクト文書更新版
    • アクティビティ属性
    • 前提条件ログ
    • 教訓登録簿

ここからは、これらのアウトプットの概要を確認していきましょう。

所要期間の見積り

所要期間の見積りとは、アクティビティ所要期間の見積りのプロセスの結果得られた、アクティビティやフェーズ、プロジェクトを完了させるために必要な期間の見積りです。
例えば、「Aページのデザインに10日」、「コンポーネントBのコーディングに3日」などのような表現をします。
この所要期間の見積りは、見積もった数値の変動幅も記載することがあります。
先ほどの例で言うと、「Aページのデザインに10日±2日」「コンポーネントBのコーディングは85%で3日以内に完了し、90%の確率で4日以内に完了する」というような形です。
なぜこのような変動幅ができるのかについては、三点見積りで推計するように、見積りにはある程度振れ幅が存在するため、その振れ幅をスケジュールに取り入れています。
このスケジュールの振れ幅については、下記の三点見積りの記事やスケジュールに関するコラムもご参照ください。

この所要期間の見積りでは、変動幅は含めても、リードとラグは含めません。

見積りの根拠

所要期間の見積りのアウトプットの1つである見積りの根拠は、上述の所要期間の見積りをどのように見積もったのかを説明する資料を指します。
見積りの根拠には、次のような事項について言及していきます[2]PMBOK第6版、204頁。

  • 見積りの根拠を記載した文書
  • 前提条件
  • 既知の制約条件
  • 所要期間が範囲内に見積もられていることを示す可能な見積範囲の表示(例えば±10%など)
  • 最終見積りの信頼水準
  • 見積りに影響を及ぼすプロジェクトの個別リスクの証拠

この見積りの根拠については、下記の記事もご参照ください。

プロジェクト文書更新版

所要期間の見積りのプロセスの結果、プロジェクト文書が更新されることがあります。
例えば、「アクティビティの所要期間」という情報が得られたため、アクティビティ属性が追加されたり、所要期間の見積りの中で前提条件ログが追加されたりします。
さらに、所要期間の見積りを通じて、効率的な技法や非推奨の作業などが判明することによって、教訓登録簿の内容が追加されたりします。

アクティビティ所要期間の見積りのインプット

アクティビティ所要期間の見積りは、様々なインプットを用いてプロセスを進めていきます。
PMBOKではアクティビティ所要期間の見積りのインプットとして、以下のようなものを紹介しています[3]PMBOK第6版、198頁。

  • プロジェクトマネジメント計画書
    • スケジュール・マネジメント計画書
    • スコープ・ベースライン
  • プロジェクト文書
    • アクティビティ属性
    • アクティビティ・リスト
    • 前提条件ログ
    • 教訓登録簿
    • マイルストーン・リスト
    • プロジェクト・チームの任命
    • 資源ブレークダウン・ストラクチャー
    • 資源カレンダー
    • 資源要求事項
    • リスク登録簿
  • 組織体の環境要因
  • 組織のプロセス資産

ここからは、これら多様なインプットからアクティビティ所要期間の見積りを進めるためにどのような点に注目していくかを解説していきます。

スケジュールの見積りの方針

アクティビティ所要期間の見積りのプロセスを進めるために、その方針をスケジュール・マネジメント計画書から確認していく必要があります。
スケジュール・マネジメント計画書については、下記の記事でも解説していますので、ご参照ください。

どのようなアクティビティがあるか?

アクティビティ所要期間の見積りのプロセスを進めるために、アクティビティ・リストからスケジュール・アクティビティを確認していきます。

アクティビティに影響を与えるものは何か?

この他のインプットはアクティビティの所要期間に影響を与える情報を確認するために使用していきます。
とくに気を付けておきたいのは、資源の状況です。
例えば、ある作業をAさんに依頼しようとしたところ、作業を依頼しようとしていた期間にAさんが不在であったり、他のプロジェクトの作業で忙殺されていては依頼したい作業を進めてもらうことができません。
このようにプロジェクト・メンバー間や他のプロジェクトとの間で資源の使用予定を調整していなければ、たてたスケジュールが絵に描いた餅になってしまいます。
そのため、プロジェクト・チームの任命資源ブレークダウン・ストラクチャー資源カレンダー資源要求事項で資源の状況を確認していきます。

アクティビティ所要期間の見積りのツールと技法

アクティビティ所要期間の見積りのツールと技法には以下のようなものがあります[4]PMBOK第6版、200~203頁。

1PMBOK第6版、203~204頁。
2PMBOK第6版、204頁。
3PMBOK第6版、198頁。
4PMBOK第6版、200~203頁。