アクティビティの定義とは何か?作業の要素分解でスケジュール作成の準備をする

2020年8月30日

アクティビティの定義の概要

アクティビティの定義とは、PMBOKのプロセスの1つで、成果物を得るために遂行すべき具体的な行動を定義し、文書化するプロセスのことです。
アクティビティの定義を実施することにより、作業が実施しやすく、監視・コントロールしやすいサイズにまで分解されるため、スケジュールの作成やその監視に役立てることができます。

アクティビティの定義のアウトプット

アクティビティの定義のアウトプットを確認し、このプロセスのゴールを明確にしていきましょう。
PMBOKでは、アクティビティの定義のプロセスのアウトプットとして、以下のものを挙げています[1]PMBOK第6版、185~186頁。

  • アクティビティ・リスト
  • アクティビティ属性
  • マイルストーン・リスト
  • 変更要求
  • プロジェクトマネジメント計画書更新版
    • スケジュール・ベースライン
    • コスト・ベースライン

アクティビティ・リスト

アクティビティ・リストは、スケジュール・アクティビティを表にした文書のことです。表中には、アクティビティの識別子、詳細な作業範囲を記し、チーム・メンバーがこのアクティビティ・リストを見れば何をすればよいのかがわかるようにしていきます。
スケジュール・アクティビティにはもともとそのアクティビティを完了させるために必要なコストや期間、資源、要件がまとめられているので、下記の表のように、アクティビティ・リストではそれらを1つの表にしていきます。

No.作業名コスト期間資源内容要件
1バナーデザイン2万円0.5日デザイナーキャンペーンを告知するためのバナーを作成する。・バナーサイズは以下の通り。
 縦:100px
 横: 250px
2Webサイトへの掲載1万円0.2日コーダー作成したバナーをWebサイトに掲載する。・202X年9月1日10時までに掲載する。

アクティビティ属性

アクティビティ属性とは、個々のスケジュール・アクティビティにある複数の属性で、アクティビティ・リストに収めるべき属性のことです。

アクティビティ属性は、アクティビティ・リストの追加情報と考えることができます[2]Project Time Management: What is a Schedule Activity
アクティビティ属性は、各アクティビティに関連付けられた複数のコンポーネントを識別することにより、各アクティビティの説明を拡張します。
プロジェクトの初期段階では、アクティビティ属性はアクティビティの識別子、WBSの 識別子 、およびアクティビティ名程度の情報しかありませんが、プロジェクトの進行に伴ってアクティビティの説明、先行アクティビティや後続アクティビティ、その論理関係、リードとラグ、リソース要件、納期、制約条件、前提条件などの情報が得られます。

アクティビティ属性を明らかにすることにより、特定の作業を処理するユーザーを認識したり、作業の実行場所を明確に示したりすることができます。

マイルストーン・リスト

マイルストーン・リストは、プロジェクトのマイルストーンを特定し、それらのマイルストーンの期日を守ることは必須か否かをまとめていきます。

そもそもマイルストーンはプロジェクト中の重要なイベントであるため、その管理を容易にするために、マイルストーン・リストを作成していきます。

このマイルストーンについては、以下の記事もご参照ください。

変更要求、プロジェクトマネジメント計画書更新版

アクティビティの定義のプロセスを進めた結果、スケジュール・ベースラインやコスト・ベースラインなどに変更を加えなければならないことがあります。
そのため、アクティビティの定義のアウトプットには、スケジュール・ベースラインやコスト・ベースラインを変更するための変更要求とプロジェクトマネジメント計画書更新版が含まれます。

アクティビティの定義のインプット

ここからは、アクティビティの定義の材料となるインプットについて見ていきます。
PMBOKではアクティビティの定義のインプットとして、以下の情報を挙げています。

ここからは、これらのインプットからどのような情報を確認していけばよいのかを解説していきます。

プロジェクトのスコープを確認する

アクティビティの定義を進めるためには、まず「どのようなアクティビティが必要なのか?」スコープ・ベースラインから確認していく必要があります。
スコープ・ベースラインに記述されているWBSや成果物、制約条件、前提条件はアクティビティ・リストを作成する上で重要な情報源となります。

期日の見積り方を確認する

アクティビティ・リストには所要時間(期間)も記述していきますが、その所要時間をどのように見積もるのかをスケジュール・マネジメント計画書から確認していきます。

組織の状態を確認する

アクティビティの定義には組織の状態も多分に影響します。
例えば、組織体の環境要因の1つであるプロジェクトマネジメント情報システム(PMIS)を組織が使っていた場合、アクティビティの定義のアウトプットであるアクティビティ・リストはそのPMISに掲載していくかもしれません。
また、組織のプロセス資産として、使える教訓リポジトリが存在したり、標準化したプロセスを持っていたり、アクティビティ・リストのテンプレートがあったりすれば、それらを活用していきます。

アクティビティの定義のツールと技法

アクティビティの定義のツールと技法には、以下のようなものがあります[3]PMBOK第6版、184~185頁。

  • 専門家の判断
  • 要素分解
  • ローリング・ウェーブ計画法
  • 会議

専門家の判断

アクティビティの定義のプロセスでは、アクティビティを定義するために、現在実施中の作業や過去の同様のプロジェクトの専門知識を持った人物の判断が求められます。

要素分解

要素分解とは、あるものごとをそれを構成する要素に分解していくことです。
アクティビティの定義のプロセスの中では、例えば「デザイン」という成果物を得るために、必要な作業を、管理しやすいサイズにまで分解していくことです。

ローリング・ウェーブ計画法

ローリングウェーブ計画法とは、反復計画技法のひとつで、直近の作業については詳細に計画し、将来の作業は概要レベルで計画するという手法です。

会議

アクティビティの定義のプロセスでは、プロジェクト・チームや専門家と会議で話し合い、アクティビティの定義を進めていきます。

1PMBOK第6版、185~186頁。
2Project Time Management: What is a Schedule Activity
3PMBOK第6版、184~185頁。