スケジュール・マネジメントの計画とは何か?PMBOKの用語を解説

2020年4月21日

スケジュール・マネジメントの計画の概要

スケジュール・マネジメントの計画とはプロジェクトのスケジュールを策定し、どのように実行するかを考え、どのように監視し、コントロールしていくのかを考えるプロセスです。
PMBOKでは「プロジェクト・スケジュールの計画、策定、マネジメント、実行およびコントロールをするための方針、手続き及び文書化を確立するプロセス」であると定義されています[1]PMBOK第6版、714頁。

スケジュール・マネジメントの計画のアウトプット

スケジュール・マネジメント計画書の作成がスケジュール・マネジメントの計画のゴール

スケジュール・マネジメントの計画のプロセスの最終的なゴールは、スケジュール・マネジメント計画書を作成することです。
スケジュール・マネジメント計画書とは、プロジェクトマネジメント計画書の構成要素の1つであり、スケジュール・マネジメントの計画のプロセスで決定されたスケジュールやその実行方法、コントロールの方法をまとめた文書です。
プロジェクトの成否はQCD、つまり、品質(Quality)・費用(Cost)・納期(Delivery)の3つの軸で判断されますが、スケジュールというのは納期に関わる重要な要素です。
そのため、スケジュール・マネジメントの計画のアウトプットとして作成されるスケジュール・マネジメント計画書は、プロジェクトの成否を分ける大切な文書であると言えるでしょう。

スケジュール・マネジメント計画書の構成

スケジュール・マネジメント計画書についてはまた稿を改めて解説していきますが、ここではその構成を紹介し、スケジュール・マネジメントの計画のプロセスで何を考え、決定しなければならないのかのイメージを固めていきましょう。
スケジュール・マネジメント計画書は以下の通りです[2]PMBOK第6版、182頁。

  • プロジェクト・スケジュール・モデルの作成・決定
  • リリースとイテレーションの期間
  • 正確さのレベル
  • 測定単位
  • 組織の手続きとの結びつき
  • プロジェクト・スケジュール・モデルの維持
  • コントロールしきい値
  • パフォーマンス測定値の規則
  • 報告書式

スケジュール・マネジメントの計画のインプット

スケジュール・マネジメントの計画のインプット、つまり、このプロセスを進めていく上での判断材料は以下の通りです。

プロジェクト憲章や組織のプロセス資産を確認し、作成を進める

上述の通り、スケジュール・マネジメントの計画のアウトプットであるスケジュール・マネジメント計画書はプロジェクトマネジメント計画書の構成要素の1つです。
そしてプロジェクトマネジメント計画書はプロジェクトの初期段階で作成するものなので、スケジュール・マネジメントの計画を考える段階では、あまりプロジェクトで作成した文書などはない状態です。
そのため、インプットの内容もそこまで広範ではありません。
プロジェクト開始前後に作成されたプロジェクト憲章に加え、組織のプロセス資産というもともとあるノウハウを駆使しながら、組織体の環境要因に気をつけて作成をしていきます。
プロジェクト憲章では往々にして期待されているプロジェクトの完了期日が記されています。そのため、プロジェクト憲章を確認し、どのあたりまでにはプロジェクトを終了させないといけないかを判断していきます。
また、組織のプロセス資産からは、過去の教訓やノウハウから、作業の所要時間やコントロールするためのポイントを知ることができるかもしれません。こうした組織の知識も利用しながらスケジュール・マネジメントの計画を進めていきます。

開発アプローチとスコープ・マネジメント計画書

スケジュール・マネジメントの計画の前の「プロジェクトマネジメントの計画」のプロセスで決定された開発アプローチスコープ・マネジメントの計画で策定されたスコープ・マネジメント計画書も、スケジュール・マネジメント計画書を作成する上で見過ごせない文書です。
開発アプローチとは、どのような手法で開発を行っていくかということですが、例えば基本的に前工程に戻らないことが前提のウォーターフォール型と開発・レビュー・修整を繰り返していくスパイラル型ではスケジュールの組み立て方が異なっていきます。スケジュールを作成し、コントロール方法を考える場合は、この点を考慮していかなければなりません。
また、スコープ・マネジメント計画書では、「このプロジェクトで何をして何をしないか」が語られているので、スケジュールを作成しなければならない作業を確認することができます。

スケジュール・マネジメントの計画のツールと技法

スケジュール・マネジメントの計画を進めていく上で、PMBOKは以下のような技法を紹介しています[3]PMBOK第6版、181頁。

  • 専門家の判断
  • データ分析
    • 代替案分析
  • 会議

このように、スケジュール・マネジメントを計画していく上での技法は大きく3つしか紹介されていません。
しかし、これはスケジュール・マネジメントの技法やツールが少ないという意味ではなく、あまりにも多岐にわたるため、主だったものをまとめられないという印象も受けます。
経験の厚い専門家の判断というのは大切な要素ですが、スケジュールを考える上では三点見積りなどの定量的な分析方法もあります。
また会議では上述のインプットとして掲載したプロジェクト憲章や組織のプロセス資産、決定された開発アプローチやスコープ・マネジメント計画書をもとにスコープ・マネジメントの計画が妥当なものかを判断していかなければなりません。
実際のスケジュール・マネジメントの計画のプロセスでは、あまり上記3つのツールや技法にはこだわらず、つかえるものは何でも使い、確度の高いスケジュールを作成し、それを進める方法とコントロール方法を検討していくほうがよいでしょう。

1PMBOK第6版、714頁。
2PMBOK第6版、182頁。
3PMBOK第6版、181頁。