プレシデンス・ダイアグラム法とは何か?PMPにでてくるPMBOKの用語を解説

2020年3月16日

プレシデンス・ダイアグラム法とは

プレシデンス・ダイアグラム法(Precedence Diagramming Method)とは、プロジェクトのアクティビティの依存関係に注目し、論理的順序関係を図式化していく技法です。
PMBOKでは「スケジュール・モデルを構築するための技法のひとつで、アクティビティをノードで表記したもの。」と定義しています[1]PMBOK第6版、727頁。

プレシデンス・ダイアグラム法を必要とするタイミング

プレシデンス・ダイアグラム法はどのような時に必要になる技法なのでしょうか。
PMBOKに沿うと、プロジェクトのスケジュールを考える「プロジェクト・スケジュール・マネジメント」の中の「アクティビティの順序設定」プロセスでプレシデンス・ダイアグラム法は必要とされます。

プレシデンス・ダイアグラム法の4種類の依存関係

プレシデンス・ダイアグラム法には4種類の依存関係があります。

  • 終了 – 開始関係(FS)
  • 終了 – 終了関係(FF)
  • 開始 – 開始関係(SS)
  • 開始 – 終了関係(SF)

( )内はそれぞれの関係の略語を示しており、"F"は"Finish"を、"S"は"Start"を意味しています。

終了 – 開始関係(FS)

終了 – 開始関係(以下、FSと略記)とは、先行しているアクティビティが完了するまで、後続のアクティビティが開始できない関係を表しています。
例えば、「設計」と「開発」の関係であったり、「開発」と「テスト」の関係であったりと、スケジュール上のほとんどのアクティビティがこのFSの関係にあります。
これからプレシデンス・ダイアグラム法を使って、アクティビティの順序を整理し、ネットワーク図を書いたり、クリティカル・パスの確認などを行っていきますが、こうした分析をする上でもこのFSの関係さえ理解していたら十分でしょう。

終了 – 終了関係(FF)

終了 – 終了関係(以下、FFと略記)は先行するアクティビティが完了するまで、後続のアクティビティを終了させることができない関係を表しています。
例えば、「スケジュールの監視」というアクティビティは、スケジュールの作成が完了しても完了することはありません。多くのアクティビティと並行して活動し、多くの場合、プロダクトが完成した時点で「スケジュールの監視」も完了となります。
このように、何かのアクティビティが終わってようやく完了するアクティビティを、FFの関係であると言います。

開始 – 開始関係(SS)

開始 – 開始関係(以下、SSの関係)は先行するアクティビティを開始するまで、後続のアクティビティを開始することができない関係を表しています。
例えば、ITプロジェクトでいえば設計がはじまらなければ、テスト項目の検討をスタートすることができません。こうした関係をSSと呼びます。
ただし、このSSの関係のアクティビティがあったとしても、何かのアクティビティが完了したら同時にスタートさせるというFSの関係にしたほうが、アクティビティの順序を整理しやすいかもしれません。
先ほどの設計とテスト項目の検討の関係だと、さらに先行する要件定義のアクティビティが完了したら、同時に開始するという関係に置き換えたほうが良いかもしれません。

開始 – 終了関係(SF)

開始 – 終了関係(以下、SFの関係)は先行するアクティビティを開始するまで、後続のアクティビティを完了させることができない関係を表しています。
例えば、Webサイトをリニューアルする際、念のため、昔のサイトのバックアップをテストサイトとして残しておき、万が一公開作業に失敗したらすぐに切り替えられるようにすることがあります。この「テストサイトの維持」というのは、「リニューアルの公開作業」というアクティビティが開始した時に始められ、「リニューアルの公開作業」の終了とともに役割を終えます。こうした関係がSFの関係です。

プレシデンス・ダイアグラム法の活用

プロジェクト・マネージャ試験より

ここからはプロジェクト・マネージャ試験(以下、PM試験と略記)の問題を参考に、プレシデンス・ダイアグラム法の活用方法について見ていきます。
平成25年度春期のPM試験には以下の作業リストの表から、作業Dの総余裕時間を問う問題が出題されています[2] 平成25年度春期PM試験午前Ⅱ、問10より。

作業先行作業所要期間
Aなし4日
BA5日
CB3日
DA1日
EC、D2日

これら各作業はプレシデンス・ダイアグラム法のFSの関係にあります。

作業リストに依存関係を記入し、ネットワーク図を作成する

プレシデンス・ダイアグラム法を上手く活用するには、PM試験にでた作業リストのように、各作業やアクティビティにどのような先行作業が必要かをまとめていくとよいでしょう。
そして、この情報をもとに、作業のネットワーク図を描いていきます。

図1

総余裕時間を確認する

ネットワーク図がかけたら、PM試験で出題された作業Dの総余裕時間を計算してみましょう。
総余裕時間は、簡単に言えば「作業を止めていても後続の作業やアクティビティに迷惑をかけない日数(時間)」です。
作業Dは作業Aが完了したら開始可能で、作業Eの開始に必要な作業となっています。その作業Eは作業Dだけでなく、作業Cの完了も必要であり、さらに作業Cは作業Bの完了が必要です。
つまり、作業Eを開始するためには、作業Dだけでなく、作業Bと作業Cを完了させる必要があり、作業Dが1日で完了するのに対して、BとCの作業はあわせて8日の時間が必要になります。ここから、作業Dは作業Aが終了した後、7日は作業をしなくとも作業Eの開始には(理論上)影響はなく、余裕時間があると言えます。
つまり、上述のPM試験の答えは「7日」が正解です。

学生症候群が発生しないように注意

このように、プレシデンス・ダイアグラム法を使って作業やアクティビティの依存関係を明らかにすると、作業やアクティビティの順序が整理され、ここからクリティカル・パス法などへ発展させることができます。
また余裕時間も計算することができましたが、注意すべきはあくまで「理論上」の余裕時間であり、実際はそこまでの余裕がないことのほうが多いのではないでしょうか。
各作業やアクティビティに割り振られた日数は計画の段階で見積もられた数字で、いざ作業に着手すると「これってなんだっけ?」ということや、思わぬトラブルで時間を使ってしまうことがよくあります。
余裕時間があると学生症候群が発生し、着手が後回しになってしまいますが、作業を終えてからゆっくりと余裕時間を楽しむほうがよいでしょう。
この学生症候群とスケジュール遅延の関係については、以下のページもご参照ください。

1PMBOK第6版、727頁。
2 平成25年度春期PM試験午前Ⅱ、問10より。