プロジェクト品質マネジメントとは何か?品質方針、品質目標の設定、品質計画、品質保証、品質管理を解説

2021年3月16日

プロジェクト品質マネジメントの概要

プロジェクト品質マネジメントとは、プロジェクトにおける成果物の品質を管理することであり、期限の決められているプロジェクトに対して、一定の品質を保つための活動です。
品質マネジメントと聞いて想像するテスト、レビューなどは、品質マネジメントの一部という位置づけです。

プロジェクト品質マネジメントは、ステークホルダーの期待に応えるために、プロジェクトおよびプロダクトの品質要求事項を計画し、マネジメントし、コントロールすることに関する組織の品質方針を組み込んだプロセスで構成されます[1]PMBOK第6版、730頁。
このプロジェクト品質マネジメントには、2つの側面があります。
1つは、プロジェクトの成果物の品質を保つことです。
クライアントからの要件を満たす成果物を完成させるため、テストやレビューなどの計画を立てることで、品質を管理します。
もう1つは、プロジェクトの活動自体の品質を保つことです。
プロジェクトを進める中で、進捗に遅れが出たり、想定外の事象が発生したりすることがあります。
問題が発生した際に、その原因を究明し、対策を講じることで品質改善につなげます。
また、それをプロジェクト内で共有し、プロジェクトのフローを改善することで品質を管理します。

プロジェクト品質マネジメントはなぜ必要なのか

通常、プロジェクトはクライアントに成果物を提出することで完結します。
しかし、提出した完成物の品質が悪ければ、企業の信用を落とすことにつながります。
システムであれば、納品後バグが発見され、システムの改修、クレーム対応などで、コストが膨らんでしまうこともあります。
品質を保つことは、利益にも直結する大きな問題です。
そのような事態を避けるためにも、プロジェクト品質マネジメントは重要なものです。

品質マネジメントの具体的なプロセス

品質マネジメントでは、以下のようなプロセスを通して、品質目標の達成を目指します。

  • 品質方針、品質目標の設定
  • 品質計画
  • 品質保証
  • 品質管理

品質方針、品質目標の設定

品質方針、品質目標の設定は、プロジェクトを一定の品質に保つための方針、目標を設定するプロセスです。
要件定義の段階で、クライアントと成果物の品質基準を確認します。

プロジェクト準備の段階で、双方の認識を合わせ、品質目標について合意することが重要です。
このプロセスを疎かにしてしまうと、その後の品質管理に影響が出てしまうことがあります。

例えば、青色のケーブルを用意してほしいという依頼があったとします。
クライアント側が「明るい青色」を想定していたところ、開発側が用意したものは紺色のような「暗い青色」だった、という認識違いが起こりえます。

そのような双方の認識違いが起こらないようにするために、具体的な要件を確認し、明確に品質の方針を決めることが重要です。
例の場合では実物のケーブルを提示するなど、事前の意識合わせで認識の差異を解消しておくなどの対策が考えられます。

品質計画

品質計画は、品質目標を達成するために必要な指針を規定するプロセスです。
品質計画書、WBSの作成などが含まれます。

品質を保つため具体的には、テスト、レビューなどを実施することになります。
そのための計画作成が、品質計画にあたります。

品質方針が決定した段階で、成果物に関するレビュー、テスト、実施手順などの計画を作成します。
成果物の提出期限、各工程の実施計画を一覧にし、テスト、レビューを、いつだれがどのくらい、何回実施するかといった詳細を明確にします。

品質保証

品質保証は、品質要求事項を満たすことを保証するためのプロセスです。
検査、測定、テストなどが品質保証にあたります。

具体的には、成果物に対して、検査やテストを実施し、バグや欠陥が一定の水準の範囲内で発生しないことを示すことで、品質を保証します。
エビデンスを提示して、説明することが重要となります。

品質管理

品質要求事項を満たすための管理を行うプロセスです。
品質管理は、品質保証と並行して実施されます。

品質管理は、品質保証のための1つの方法です。
具体的には、バグや、欠陥の改修などを実施し、ユーザーが求める品質要求を担保します。

PMBOKにおける品質マネジメント

先ほどは一般的な品質マネジメントの流れを解説していきました。
プロジェクトマネジメントのガイドラインの1つであるPMBOKでは、プロジェクト品質マネジメントを以下の3つのプロセスから構成しています。

  • 品質マネジメントの計画
  • 品質のマネジメント
  • 品質のコントロール

ここからは、これらのプロセスを簡単に紹介していきます。

品質マネジメントの計画

品質マネジメントの計画とは、プロジェクトや、プロジェクトから生み出される成果物・プロダクト・サービスの品質要求事項や品質標準を特定し、プロジェクトで品質要求事項や品質標準を順守するための方法を文書化するプロセスです[2]PMBOK第6版、277頁
品質の方針決定や、計画の策定はこのプロセスで行います。

詳しくは下記のページをご覧ください。

品質のマネジメント

品質のマネジメントとは、PMBOKで紹介されているプロセスの1つで、組織の品質方針をプロジェクトに組み入れて、組織の品質マネジメント計画を品質活動の実行に移すプロセスであるとされています[3]PMBOK第6版、288頁
つまり、実際に品質の保証を行うプロセスです。

詳しくは下記のページもご覧ください。

品質のコントロール

品質のコントロールとは、パフォーマンスを査定し、プロジェクトのアウトプットが完全かつ正確で、顧客の期待を満たしていることを保証するために、品質のマネジメント活動の結果を監視し、記録するプロセスのことです[4]PMBOK第6版、298頁
品質のマネジメントで実行されている品質保証が、品質マネジメントの計画で策定した計画書に沿っているか、もし沿っていないのであれば、何か計画と現実に乖離がなかったかをチェックしていきます。

品質マネジメントのツールと技法

プロジェクト品質マネジメントはプロジェクト全体に関わるものです。
そのため、様々なツールや技法があります。
以下にその一部を紹介します。

参考

1PMBOK第6版、730頁。
2PMBOK第6版、277頁
3PMBOK第6版、288頁
4PMBOK第6版、298頁