統合変更管理(Perform Integrated Change Control)とは何か?PMBOKで使われる手法を解説
統合変更管理(Perform Integrated Change Control)とは
PMBOKによると、統合変更管理(Perform Integrated Change Control)とは「変更を承認して、成果物、組織のプロセス資産、プロジェクト文書、プロジェクトマネジメント計画書などへの変更をマネジメントし、それらの決定事項を伝達するプロセス」と定義されています[1]PMBOK第6版、722頁。。
より簡単にまとめると、プロジェクトマネジメント計画書やプロジェクト文書などの各種文書に対して変更の依頼があった時、その変更要求が適切かどうかを判断し、実施の可否を判断し、変更した場合はその内容を共有するプロセスであると言えます。
統合変更管理はなぜ必要なのか?
統合変更管理はなぜ必要なのでしょうか。
プロジェクトを進行する中で、当初の想定とは異なる事態に直面し、プロジェクト計画書や予定していた成果物の内容などへの変更要求が生じることもあります。
例えば「完了予定日を延ばし、XX日に変更したい」「このようなリスクが発見されたので、リスク報告書に盛り込みたい」など、様々な要求が発生します。
こうした変更要求に対して、何も考えずに対応していると、後々のプロセスに悪影響を及ぼしたり、リスクを高めたりします。その結果、プロジェクトが失敗に終わるということもあるでしょう。
こうしたトラブルを避けるためにも、統合変更管理を行い、チームメンバーやステークホルダーからもたらされた変更要求が正当なものであるのか、その影響はどのようなものかを確認し、プロジェクトをこれまで通り円滑に進めるためにも、統合変更管理が必要となります。
統合変更管理の対象(インプット)
統合変更管理のインプットとなりうるものは以下の通りです[2]PMBOK第6版、113頁。。
- プロジェクトマネジメント計画書
- プロジェクト文書
- 作業パフォーマンス報告書
- 変更要求
- 組織体の環境要因
- 組織のプロセス資産
このように、統合変更管理はプロジェクトマネジメント計画書やプロジェクト文書など、プロジェクトの根幹を担う文書の変更を検討するプロセスであるため、対象も広範になります。
変更要求
変更要求は統合変更管理で現れる用語です。
変更要求とはプロジェクトを進める中で発生した是正処置や予防処置、欠陥修整、アイデアなどを指します[3]PMBOK第6版、117頁。。
これらの変更要求が反映されたか否かは各種文書の変更ログを追うことで確認することができます。
どのようにして統合変更管理を行うか
統合変更管理のツール、技法として用いられるのは以下の通りです [4]PMBOK第6版、113頁。 。
- 専門家の判断
- 変更管理ツール
- データ分析
- 意思決定
- 会議
これらの項目について、さらに詳しく見ていきましょう。
専門家の判断
統合変更管理をする上で、専門家の判断は重要です。現在進めているプロジェクトに関わる専門的な知識もさることながら、法律や法令、規制が変わったことにより変更要求が発生した場合は法律・法令の専門家の助力が必要になります。
さらにコンフィギュレーション・マネジメントやリスク・マネジメントの知識のある専門家がいるとなおよいでしょう。
変更管理ツール
統合変更管理のツールとして、変更の特定、文書の変更、変更に関する決定、変更の追跡ができるものを求められていますが[5]PMBOK第6版、119頁。、Microsoft社のアプリケーションであるWordをはじめ、最近の文書管理のアプリケーションはこの要件を満たしていることが多くあります。
データ分析
統合変更管理のデータ分析としてPMBOKでは代替案分析、費用便益分析が紹介されています。
変更管理委員会(CCB)と会議、意思決定
統合変更管理の中では各変更要求に対して会議を開き、意思決定を行いますが、必要に応じて変更管理委員会(CCB:Change Control Board)を組織します。
変更管理委員会はプロジェクトへの変更をレビュー、評価、承認、保留、または却下し、その決定を記録伝達することに責任を持つ認可されたグループを指し[6]PMBOK第6版、733頁。、統合変更管理の検討・意思決定を行います。
統合変更管理の結果(アウトプット)
統合変更管理の結果、アウトプットとして承認済み変更要求や、プロジェクトマネジメント計画書、プロジェクト文書の更新版が得られます [7]PMBOK第6版、113頁。 。
上述の変更管理ツールでも触れたように、文書の変更をする際には変更の特定や変更の追跡ができることが求められます。この変更の特定・追跡をさらに強化するために、要求事項を一覧化し、承認の可否をまとめた資料があってもよいでしょう。