【PMBOK】品質のマネジメントとは何か?品質管理の実行プロセスを解説
品質のマネジメントの概要
品質のマネジメントとは、PMBOKで紹介されているプロセスの1つで、組織の品質方針をプロジェクトに組み入れて、組織の品質マネジメント計画を品質活動の実行に移すプロセスであるとされています[1]PMBOK第6版、288頁。
PMBOKでは、品質のマネジメントのプロセスは、品質マネジメントの計画のプロセスの後に実施されます。
品質マネジメントの計画のプロセスでは、「これからの品質マネジメントをどうしていくか?」を考えてきたので、その計画した内容を実施するのが品質のマネジメントのプロセスであると言えます。
この品質のマネジメントのプロセスは、客観性を保つために、PMOや品質保証部など組織内の第三者が実施します[2]前田和哉『図解即戦力 PMBOK第6版の知識と手法がこれ1冊でしっかりわかる教科書』技術評論社、2019年、154頁。。
品質のマネジメントのメリット
品質のマネジメントを行う主なメリットは、以下の2点です[3]PMBOK第6版、288頁。。
- 品質目標を満たすこと
- 効果のないプロセスや低品質の原因を特定しやすくなること
「品質目標を満たすこと」が品質のマネジメントの主産物だとすれば、「効果のないプロセスや低品質の原因を特定しやすくなること」は副産物のようなものです。
品質のマネジメントにはあらゆる品質保証活動が含まれているため、プロダクトの設計面やプロセス改善にも関連しています。つまり、品質マネジメントの効果を測定していく中で効果のないプロセスや低品質の原因が明らかになっていきます。
品質のマネジメントのアウトプット
ここからは品質のマネジメントのアウトプットを確認し、品質のマネジメントのゴールを確認しておきましょう。
品質のマネジメントのアウトプットは以下の通りです[4]PMBOK第6版、296~297頁。。
- 品質報告書
- テスト・評価文書
- 変更要求
- プロジェクトマネジメント計画書更新版
- プロジェクト文書更新版
- 教訓登録簿
- リスク登録簿
ここからは、各アウトプットの内容を説明していきます。
品質報告書
品質報告書はその名の通り、プロダクトの品質を報告するものです。
品質報告書に記載される情報は以下の通りです[5]PMBOK第6版、296頁。。
- チームからエスカレートされるすべての品質マネジメントの課題
- プロセスの推奨事項
- プロジェクトおよびプロダクトの改善事項
- 是正処置の推奨事項(手直し・欠陥やバグの修復・100%検査・その他)
- 品質のコントロール・プロセスでの発見の要約
品質報告書はグラフや数値という定量的な表現だけでなく、使い勝手などの定性的な表現も含めていきます。
この品質報告書の情報を他のプロセスや部門が使用し、プロジェクト品質の期待を満たすために是正処置を行うことがあります。
テスト・評価文書
テスト・評価文書は業界のニーズと組織のプロセス資産にあるテンプレートに基づいて作成していきます。
テスト・評価文書はPMBOK上の次のプロセスである品質のコントロールのプロセスでインプットとして使い、品質目標の達成度を評価していきます。
達成度を評価するために、テスト・評価文書には専用のチェックリストと詳細な要求事項のトレーサビリティ・マトリックスを盛り込んでいきます。
変更要求
変更要求は、プロジェクトマネジメント計画書やプロジェクト文書、プロジェクトまたはプロジェクトマネジメント・プロセスの構成要素のどれかに影響を与えるような変更が品質のマネジメントのプロセス中に発生した場合に、プロジェクト・マネジャーによって提出されます。
この変更要求は、統合変更管理のプロセスに順って進められます。
プロジェクトマネジメント計画書更新版
品質のマネジメントのプロセスの結果、プロジェクトマネジメント計画書の内容の変更要求が出される場合があります。
品質に関するものは品質マネジメント計画書、作業範囲(スコープ)・スケジュール・コストに関するものはそれぞれスコープ・ベースライン、スケジュール・ベースライン、コスト・ベースラインに変更を加えていきます。
プロジェクト文書更新版
プロジェクトマネジメント計画書と同様に、品質のマネジメントのプロセスの結果、各種プロジェクト文書が変更されることもあります。
新たな課題が見つかった場合は課題ログを、品質マネジメントについての新たな教訓が得られたら教訓登録簿を、そしてリスクが新たに発見されたらリスク登録簿を更新していきます。
品質のマネジメントのインプット
品質のマネジメントのプロセスのインプットには、以下のようなものが挙げられます[6]PMBOK第6版、290~291頁。。
- プロジェクトマネジメント計画書
- 品質マネジメント計画書
- プロジェクト文書
- 教訓登録簿
- 品質のコントロール
- 品質尺度
- リスク報告書
- 組織のプロセス資産
ここからは、品質のマネジメントのプロセスを進める上で、これらのインプットの中からどのような情報を確認していけばよいのかを解説していきます。
品質のマネジメントの方針
品質のマネジメントのプロセスを進める際は、プロジェクトマネジメント計画書、とくに品質マネジメント計画書からその方針を読み取っていきます。
品質マネジメント計画書では、プロジェクトとこのプロジェクトで得られるプロダクトの品質の受入レベルを定義し、成果物とプロセスでこの品質のレベルを保証する方法、そして不適合となったプロダクトの処理方法と実施すべき是正処置が記述されています[7]PMBOK第6版、290頁。。
これらの記述に従って、品質のマネジメントのプロセスを進めていきます。
また、品質マネジメントの計画のプロセスで品質マネジメント計画書と同じく作成された品質尺度も品質のマネジメントのプロセスを進める上で重要な情報となります。
これまでの得られた情報・ノウハウ
品質のマネジメントのプロセスでは、これまで得られた情報やノウハウが役に立ちます。
例えば、教訓登録簿に記載されている内容は、品質のマネジメントの効率と効果を改善させることができ、リスク報告書にため込まれた情報は、プロジェクトの品質に影響を与えるようなリスクの発見につながります。
また、組織のプロセス資産の中に、方針や手続きなどの品質マネジメント・システムがあったり、これまでのプロジェクトのチェックシートやテンプレート、 テスト計画や監査結果、それらを踏まえた教訓があれば有効に活用していきます。
品質のコントロールの測定結果
品質のコントロールの測定結果は、品質のコントロールのプロセスで行う品質の測定結果です。
品質のマネジメントが実施されると、同時に品質のコントロールも開始されますが、品質のコントロールの結果を受けて、要求を満たしている品質を達成できているのかを判断していきます。
品質のマネジメントのツールと技法
「品質マネジメント」や「品質管理」に関する本が数多く存在するように、品質マネジメントの手法は日々改善され、世に公表されていきます。
そのため、品質のマネジメントのプロセスのツールと技法も多岐にわたります。
- データ収集
- データ分析
- 意思決定
- データ表現
- 監査
- デザイン・フォー・エックス
- 問題解決