組織のプロセス資産(OPA)とは何か?PMBOKの用語を解説

2020年2月11日

組織のプロセス資産とは

組織体の環境要因のイメージ図

組織のプロセス資産(Organizational Process Assets)とは、かんたんに言えば組織に蓄積されている、その組織特有のノウハウのことです。組織体の環境要因と同じく、プロジェクト・チームの管理下にはないものの、プロジェクトに影響する要因です。

PMBOKによる定義

PMBOKでは「母体組織が使用し、同組織に特有の計画書、プロセス、方針、手続き、および知識ベース[1]PMBOK第6版、718頁。」と定義しています。
「母体組織」という表現が分かりづらいですが、「所属している組織」と言い換えてもよいでしょう。
つまり、所属している会社や団体などの組織が使用している特有の計画書や、業務のプロセス、仕事の方針、業務の手続き、ノウハウをひっくるめて組織のプロセス資産と呼んでいます。

組織のプロセス資産はどのようにプロジェクトに影響するか

プロジェクトを助ける要素

組織のプロセス資産はさまざまな点でプロジェクトに影響していきます。では組織のプロセス資産はどのようにプロジェクトに影響を与えていくのでしょうか。
まずはプロジェクトの進行を助ける要素について見ていきましょう。
プロジェクトの進行を助けてくれる組織のプロセス資産とは、その組織に蓄積されたノウハウです。PMBOKの定義に従って言えば、知識ベースがいかに蓄積されているかが、その組織で行われるプロジェクトの成功を左右します。
こうした組織のノウハウはプロジェクトやフェーズの終結でのアウトプットとして蓄積されたり、プロジェクトの反省会を行うことで強固なものになったりしていきます。
組織のプロセス資産の中で、直接プロジェクトの成功率を高めてくれるのは、組織のノウハウ(知識ベース)ぐらいです。次回からのプロジェクトをより円滑なものにするために、組織のノウハウの蓄積をしていくようにしましょう。

プロジェクトの足を引っ張るかもしれない要素

先ほど「組織のプロセス資産の中で、直接プロジェクトの成功率を高めてくれるのは、組織のノウハウ(知識ベース)ぐらい」と述べましたが、組織のプロセス資産の中で残りの要素はプロジェクトを助けてくれることもありますが、多くの場合はプロジェクトの進行の足を引っ張ってきます。
例えば「お役所仕事」と嫌味を言われる公共機関の業務プロセスは、多くの人間の承認を得なければものごとを決定することができません。そのため、公共機関とプロジェクトを進める場合は、迅速に意思決定を行うことができない場合もあるのではないかと考えねばなりません。また、発注者である取得者が仕事の方針として「第三者に業務を委託しない」、つまり業務の再委託を禁止している場合、供給者であるベンダーは組織内の人員しかプロジェクトに使用できません。
このように、組織のプロセス資産はプロジェクトの進行を助けるというよりも、プロジェクトの円滑な進行を妨げるような制約になることが多いと言えるかもしれません。

プロジェクトマネージャ試験にでてきたら

この「組織のプロセス資産」については、IPAのプロジェクトマネージャ試験にも出題されています。例えば平成19年春期PM試験午前Ⅱ問2では「PMBOK第5版によれば、組織のプロセス資産に分類されるものはどれか」という問題がでています。
もしこのような問題が出題された場合は、「組織のノウハウにあたるものはどれか」ということに注目して、選択肢の中から正解を見つけ出していきましょう。

組織のプロセス資産を把握して計画を立てる

今回は組織のプロセス資産について解説していきました。
組織のプロセス資産は組織の環境要因とともに、プロジェクトに影響を与える要素です。
組織のプロセス資産には知識ベースのように、プロジェクトの成功に貢献するものもあれば、業務のプロセスや仕事の方針など、その内容を確認しておかなければ計画を狂わされてしまう要素もあります。
プロジェクト・マネジャーはこうした組織のプロセス資産を把握し、対策を講じた計画を立てる必要があると言えるでしょう。

1PMBOK第6版、718頁。