【PMBOK第7版】プロジェクト作業パフォーマンス領域について解説

2022年6月3日

プロジェクト・マネジャーとして、プロジェクトを成功させるためにはどこに注目したらよいのでしょうか?
プロジェクトマネジメントのガイドラインであるPMBOK第7版では、「プロジェクトの成果を効果的に提供するために不可欠な、関連する活動」をプロジェクト・パフォーマンス領域と呼び、以下の8つの領域に注目しています[1]PMBOK第7版「プロジェクトマネジメント知識体系ガイド」、7頁。

  • ステークホルダー
  • チーム
  • 開発アプローチとライフサイクル
  • 計画
  • プロジェクト作業
  • デリバリー
  • 測定
  • 不確かさ

プロジェクトは様々な要素が影響して成否が決まりますが、これら8つに注意をすることで、プロジェクトの成功率を大きく高めることができます。
今回は8つのパフォーマンス領域の1つである「プロジェクト作業パフォーマンス領域」について解説していきます。

プロジェクトを円滑に進めるために取り組むべき活動

プロジェクト作業パフォーマンス領域では、プロジェクトを円滑に進めるために取り組むべき活動がまとめられています。その主な活動は以下のとおりです[2]PMBOK第7版、70頁。

  • 現在の作業の流れ、新しい作業の流れ、作業の変更をマネジメントする。
  • プロジェクト・チームが作業に注力し続けるようにする。
  • 効率的なプロジェクトのシステムとプロセスを確立する。
  • ステークホルダーとコミュニケーションをとる。
  • 資材、設備、サプライ、ロジスティックスをマネジメントする。
  • 契約担当者およびベンダーと協力して調達と契約を計画し、マネジメントする。
  • プロジェクトに影響を与えうる変更を監視する。
  • プロジェクトの学習と知識の伝達を可能にする。

ここからはこれらの活動を解説していきます。

現在の作業の流れ、新しい作業の流れ、作業の変更をマネジメントする

アジャイル開発などの適応型アプローチを採用していると、プロジェクトの進展とともに新たな作業が発生することがあります。また、開発アプローチに関わらず、作業の変更が入る可能性もあります。
こうした新しい作業や変更をすべて受け入れてしまうと、プロジェクトを完了させることが難しくなってしまいます。
そのため、プロジェクト・マネジャーは作業の範囲や予算、スケジュールと照らし合わせながら、新しい作業や追加の作業に取り組むか否かを判断し、ステークホルダーとコミュニケーションをとる必要があります。

プロジェクト・チームが作業に注力し続けるようにする

プロジェクト・マネジャーはチーム・メンバーが今どの作業に注力すべきかを示し、作業量のバランスをとっていかなければなりません。
ただプロジェクトの完成だけを目標にするのではなく、プロジェクト・チームが自分の作業に満足し、モチベーションを維持できているかにも注意すべきです。

効率的なプロジェクトのシステムとプロセスを確立する

プロジェクトの仕組み(システム)や流れ(プロセス)も明確にしておかなければなりません。とくにプロジェクトのプロセスは規模が大きくなるほど、多く、複雑になるため、そのプロセスを整理しておかなければ現場は混乱してしまいます。
このシステムやプロセスは一度決定したとしても定期的に見直し、より効果を上げられる体制を模索する必要があります。

ステークホルダーとコミュニケーションをとる

プロジェクトを成功させるには、ステークホルダーの適切な関与を促し、コミュニケーションをとることが不可欠です。
プロジェクトに関わる個人・グループ・組織との取決めや関係をステークホルダー・エンゲージメントと言いますが、このステークホルダー・エンゲージメントを計画し、マネジメントすることもプロジェクト・マネジャーの重要な役割です。

ステークホルダー・エンゲージメントについては、下記の記事もご参照ください。

資材、設備、サプライ、ロジスティックスをマネジメントする

資材などの物的資源は、発注、輸送、保管、追跡などの管理が必要です。
プロジェクトのスケジュールと照らし合わせ、使用したい時に使える状態にしておくことが大切です。

契約担当者およびベンダーと協力して調達と契約を計画し、マネジメントする

ソフトウェア開発プロジェクトでは、自社で開発を行わず、ベンダーに開発を依頼することがよくあります。プロジェクトに必要な資源を確保することを調達と呼びますが、ただ単に安い資源を購入・発注すればよいというわけではありません。

たとえばソフトウェア開発プロジェクトであれば、提案依頼書(RFP)を作成し、めぼしいベンダーからの提案を受け、さまざまな角度から評価し、適切なベンダーを選定します。

この調達活動やRFPについては、以下の記事もご参照ください。

プロジェクトに影響を与えうる変更を監視する

上述のとおり、プロジェクトでは後から作業が追加されたり、変更されたりすることがあります。こうした作業の変更の管理も大切ですが、プロジェクトの制約条件の変更にもプロジェクト・マネジャーは目を光らせなければなりません。
プロジェクトの制約条件とは、スケジュールや予算、法規制などです。
これらの制約条件とのバランスをとりながら、プロジェクトを進める必要があります。

プロジェクトの学習と知識の伝達を可能にする

プロジェクトでは、プロジェクト中に使われる知識および学習と、プロジェクトが終わった後の学習の2つの側面に注意しなければなりません。

プロジェクト中は、上手くチームの知識を結集し、問題解決に取り組まなければなりません。チーム・メンバーが蓄積している言語化されていない知識(暗黙知)を言語化し(形式知)、チーム内で共有することも大切です。
この暗黙知と形式知については、下記の記事もご参照ください。

また、新人のプログラマーがいるプロジェクトは、彼らの絶好の学習の場となります。プロジェクトの品質を落とさず、新人の経験になるような学習計画を立てておくことも重要です。

こうしたプロジェクトで培われた知識は、何もしなければプロジェクトの終了とともに消えてしまいます。組織の他の人が同様のプロジェクトの対応をする時のために、プロジェクトの反省会を行い、それを教訓登録簿などにまとめるとよいでしょう。
教訓登録簿については下記の記事もご参照ください。

プロジェクト作業パフォーマンス領域の成果をチェックする

PMBOK第7版によれば、プロジェクト作業パフォーマンス領域で実施した活動が効果を上げていると、以下のような状態になります[3]PMBOK第7版、79頁。

  • 効率的で効果的なプロジェクト・パフォーマンス
  • プロジェクトおよび現場に適したプロジェクト・プロセス
  • ステークホルダーとの適切なコミュニケーションとエンゲージメント
  • 物的資源の効率的なマネジメント
  • 調達の効果的なマネジメント
  • 変更の効果的な処理
  • 継続的な学習とプロセス改善による能力の向上

1PMBOK第7版「プロジェクトマネジメント知識体系ガイド」、7頁。
2PMBOK第7版、70頁。
3PMBOK第7版、79頁。