PERTとは何か?PERT図の作り方をツールの紹介含めて1から解説

2020年6月29日

PERTの概要

 

PERT図の例の画像
PERT図の例

PERT法は、プロジェクトの工程管理を行う手法で、各工程の依存関係を図示して所要時間を見積もり、重要な工程を見極めるときに利用されます。
1950年代にアメリカ海軍で弾道ミサイル開発のプロジェクトのために考案されたのがPERTであり、その成功により全世界に手法が知られることになりました。
PERTとは“Program Evaluation and Review Technique"を略したものであり、直訳すれば「工程の見積と評価の技法」となります。「PERT法」と呼ばれることもありますが、"Technique"が「技法」という意味を持っているので、「法」はつけずに「PERT」と呼ぶ方が正確な表現と言えるでしょう。
PERTでは、各工程の依存関係を矢印で繋いでいき、それぞれの所要時間を記入して図(PERT図)を作成していきますが、経路を辿って所要時間を足し合わせていくと、プロジェクト全体の工期を見積もることができます。PERT図には、結合点を示す円を作業を示す矢印で結びつける「アロー型」と、各工程をボックスに記載して、各工程同士の順序を矢印で結びつける「フロー型」の2種類の型があります。

PERTのメリット

PERTを導入するメリットはさまざまありますが、主なものを紹介していきます。

経験や勘に頼らず、プロジェクトに必要な工程を確認できる

PERTを活用すれば、経験や勘に頼らず、プロジェクトの各工程の依存関係や所要時間を把握できます。
PERTが普及するまでは、プロジェクトはプロジェクト・マネジャー(以下、プロマネと略記)の経験や勘によって進められてきました。そのため、段取りのよいプロマネであればよいものの、経験の浅いプロマネではプロジェクトは失敗してしまう状態でした。例えば、 全体からすると優先度の低い目の前のタスクに時間を費やしてしまい、プロジェクトを完了させられないプロマネも少なくありません。
しかし、PERTでは「各工程にどのくらいの時間が必要なのか」「各工程がどのような関係にあるのか」「どのような順序で進めればよいのか」が整理されるため、経験を積んでいないプロマネであっても、プロジェクトの段取りを適切につけることができるようになりました。

最短のスケジュールを把握できる

プロジェクトにおいては、効率的に作業を行い、完了予定日や納期に間に合わせることが大切です。
PERT図を活用すれば、どの作業を優先すべきなのか、どのような順番で業務を進めていくべきなのかを判断でき、最短のスケジュールを立てられるようになります。
それだけでなく、後述する「クリティカル・パス」を理解することにより、作業時間の短縮も図ることができます。

プロジェクトメンバー間で情報共有が行える

プロジェクトには、さまざまな関係者が関与します。プロジェクトの規模が大きくなれば、規模に応じて関与する人も多くなっていきます。
多くの人と情報共有を行うのは一苦労ですが、PERT図でプロジェクトの流れを示すことで、どのような流れで作業を進めていくかが明確となるため、プロジェクトメンバー間で情報共有がしやすくなり、スムーズに作業を進めていくことができます。

PERTの利用方法

ここからはシンプルなアロー型のPERTの利用方法を解説していきます。

PERTの用語

PERTにはいくつかの専門用語が存在します。
まずはPERTの用語を覚えていきましょう。

PERTの用語を表す図
参考画像1

ネットワーク(PERT図)

ネットワークとは、これから紹介する要素を組み合わせてプロジェクトの工程を表した図です。
通常、「PERT図」と言った場合は、このネットワークを指していることがほとんどです。

イベント

イベントとは、ネットワークの中でマルで囲われた部分です。
参考画像1ではA~Eまでのアルファベットがかかれてあります。このように管理番号のようなものだけをいれることもありますが、「設計完了」「組立開始」などのプロジェクトの状態を記入することもあります。

アクティビティ

アクティビティとは、実際の作業内容を表す矢印です。
通常矢印の近くに作業名必要な時間(工数)が記述されています。

ダミー

ダミーはイベントやアクティビティの相互関係を表しています。ダミーは次の工程を指示しているわけではないのですが、矢印元のイベントの状態になっていないと、矢印先のイベントの次の作業を進めることができないことを意味しています。
参考画像1ではイベントDからイベントCに破線の矢印が伸びていますが、これがダミーを表しています。この場合、イベントDの状態になるまでは、イベントCが次の作業に移れないことを意味しています。

PERTの準備

PERTを作成していくには、いくつか準備が必要です。特に重要なのが、以下の2点です。

  • 作業の洗い出し
  • 各作業の必要時間の見積り

作業の洗い出しについては、WBSなどのプロジェクトのスコープを示す資料があれば、それを使用していきます。
各作業の必要時間の見積りについては三点見積り法などを使用していきます。

PERT図の作成ツール

PERTは1950年代に編み出された手法ですが、PERT図を自動で作成してくれるようなツールで有名なものは現代でもあまり聞きません。
そのため、ネットワークの形を何かの作図ツールで作成していく必要があります。言い換えれば、作図ができるものであればなんでもよいので、慣れている作図ツールでかまいません。
ここからは、PERT図を作成するために使えるツールを少し紹介していきます。

おすすめはPowerPoint

パワーポイントでPERTを作成する様子
PowerPointでPERT図を作成する様子

PERT図を作成するツールとしておすすめなのが、Microsoft社のPowerPointです。
Windowsのパソコンであればほとんどの場合であらかじめインストールされていますし、軽量で使いやすい作図ツールとして使うことができます。
同じくMicrosoft社のExcelでも作成することは可能ですが、作図をする上ではPowerPointのほうが優れているでしょう。

オンラインで共有できるLucidchart

Lucidchartは豊富なテンプレートにより、PERT図をはじめとする様々な図を簡単に作成することができます。
Lucidchartの長所は、作成した図をリアルタイムに共有できることです。
PERT図に限らず、チームメンバーの意見を聞きながら、その場で修正したいという場面は多いため、チームでの共同作業で重宝するツールです。

PERT図の作成工程

ホームパーティを例にして

ここからは実際にPERT図を作成していきます。
例として、とある夫婦がホームパーティを開く工程をPERT図で表していきましょう。
この夫婦は話し合って、両者の作業を以下の通りにしました。

  • 旦那さんの作業
    • 材料・飲み物の買い出し(2時間)
    • ゲストに応接(1時間)
  • 奥さんの作業
    • 家の掃除(1時間)
    • 料理(1時間)

旦那さんは当日のお料理に必要な材料を買い出しに行き、その後はお料理ができるまでゲストの応接をする予定です。
一方で、奥さんのほうは旦那さんが買い出しに行っている間に家の掃除を行い、その後はお料理をする予定です[1]本来であればホームパーティと言えどももっと作業がありますが、ここではPERTの説明をするのに最低限必要な作業だけピックアップしています。

ネットワークの作成

ダミー記入前のPERT図

作業内容と各作業の必要とする時間が明らかになったら、それらの作業を並べていき、矢印で結びつけていきます。
ホームパーティの例で言えば、開始のAのイベントから、旦那さんが買い出しに行く矢印、奥さんが掃除を行う矢印が伸びます。
そして、旦那さんが買い出しを完了させた時点をイベントB、奥さんが掃除を完了させた時点をイベントCとします。ここから旦那さんはホストとしてお客さんの応接を行い、奥さんは料理を開始し、ホームパーティを完了させます。そのため、イベントBから応接の作業を表す矢印を、イベントCから料理の作業を表す矢印を伸ばします。
各工程の所要時間や開始・終了時刻を記載していきます。

ダミーを考える

すべての作業を表す矢印を書ききったら、次はダミーの矢印がないかを確認していきます。
今回のホームパーティの例で言えば、奥さんは旦那さんが材料の買い出しから帰ってくるまで、料理を開始することができません。
そのため、買い出しが終わってからようやく料理ができることを表すためにダミーを意味する破線の矢印をBからCに伸ばしています。
このように、実際に何かの作業があるわけではありませんが、矢印元の状態になっていないと矢印先のイベントの次の作業が開始できないという関係を表すのにダミーを使用します。
このダミーの作業まで書き込めたら、PERT図と呼ばれるネットワークの作成は完了です。

PERTを使った計画の分析

ここまではPERT図と呼ばれるネットワークの作成方法を解説してきました。プロジェクトの段取りを可視化できるだけでも、プロジェクトの成功率はぐっとあがります。
しかし、PERTのすばらしさはプロジェクトの可視化だけにあるわけではありません。PERTの真骨頂はこのネットワークをみながら、プロジェクトの急所と改善方法を考えることにあります。
ここからはPERTを使った計画の分析方法を解説していきます。

分析で使用する用語

クリティカル・パスを示すPERT図
参考画像2

最早開始時刻

最早開始時刻とは、最も早く作業を開始することができる時間を意味しています。「時刻」という言葉が使われていますが、日付でもかまいません。
最早開始時刻はダミー作業まで含めた「前工程の最早開始時刻+所要時間」で計算します。

最遅開始時刻

最遅完了時刻は最も遅い作業開始時間をいいます。最遅完了時刻は「後工程の最遅開始時刻―所要時間」で計算します。

余裕日数(フロート)

余裕日数とは各工程が持つ作業開始までの余裕の時間のことをいいます。フロート(float)とも呼ばれます。
余裕は「最遅開始時刻―最早開始時刻」で計算します。

各種データの計算

最早開始時刻の計算

実際に上記の参考画像2をもとに、最早開始時刻と最遅開始時刻 、そして余裕日数を計算していきましょう。参考画像2はほとんど参考画像1と同じですが、話を簡単にするためにダミーの矢印を削除しています。
まずは最早開始時刻を計算していきましょう。最早開始時刻は、最初のイベントから作業時間を足し合わせていくことにより算出することができます。
参考画像2でいえば、イベントAからスタートし、作業日数を足し合わせていきます。
最初にAからBの作業Vを行うのに1日を要します。そのため、イベントBから作業Wや作業Xに着手できるのは、プロジェクト開始からどれだけ早くとも1日後ということになります。
このような形でイベントCとイベントD、イベントEの最早開始時刻を計算していくと、以下の通りになります。

  • イベントCの最早開始時刻:2日=イベントBの最早開始時刻(1日)+作業Wの作業時間(1日)
  • イベントDの最早開始時刻:6日=イベントBの最早開始時刻(1日)+作業Xの作業時間(5日)
  • イベントEの最早開始時刻:10日=イベントDの最早開始時刻(6日)+作業Zの作業時間(4日)

イベントEのように、複数のイベントから矢印が伸びている場合、最も時間のかかっている時間を最早開始時刻に記入します。なぜなら、複数のイベントから矢印が伸びているということは、複数の作業がすべて完了しなければ次に進めないことを意味しているので、一部の作業だけがいくら早くとも、次の作業の開始には至らないからです。
イベントEからは次の作業がない、プロジェクトのゴールの地点を表しています。このイベントE最後のイベントの最早開始時刻は、このプロジェクトの完了にかかる時間を表しています。

最遅開始時刻の計算

次に最遅開始時刻を計算していきましょう。最遅開始時刻は、最後のイベントの最遅開始時刻から作業時間を引いていくことによって算出していきます。最後のイベントの最遅開始時刻は最早開始時刻とイコールの関係にあるため、この性質を利用して計算をしていきます。
参考画像2でいえば、イベントEから逆算していきます。イベントEの最早開始時刻は10日であるので、最遅開始時刻も10日です。
このこのイベントEの時刻から、イベントCから伸びている作業Yの作業時間3日を引くと、イベントCの最遅開始時刻7日が算出できます。
これはプロジェクト開始から7日目までに作業Yに着手すれば、プロジェクトに影響を与えないことを意味しています。
同様に、イベントCとイベントB、イベントAの最遅開始時刻を計算していくと、以下の通りになります。

  • イベントDの最遅開始時刻:6日=イベントEの最遅開始時刻(10日)-作業Zの作業時間(4日)
  • イベントBの最遅開始時刻:1日=イベントDの最遅開始時刻(6日)-作業Xの作業時間(5日)
  • イベントAの最遅開始時刻:0日=イベントBの最遅開始時刻(1日)-作業Vの作業時間(1日)

プロジェクトのスタート地点であるイベント、つまり参考画像2でいうイベントAでは、最早開始時刻とともに最遅開始時刻も0になります。
また、複数の矢印をもっているイベントでは、最も早い値を最遅開始時間として使用します。例えば参考画像2のイベントBのように、イベントCへの作業W、イベントDへの作業Xを持っている場合は、もっとも最遅開始時刻の早いイベントDから逆算した値をイベントBの最遅開始時刻として利用します。

余裕(フロート)の計算

余裕(フロート)とは、最遅開始時刻から最早開始時刻を引いた時間です。
参考画像2中のイベントCが顕著な例です。イベントCからの作業Yは2日目には作業を開始することができるのですが、同時並行して進んでいるイベントDからの作業Zが終わらない限り、プロジェクトはゴールであるイベントEに行けません。そのため、わざわざ作業Yを2日目から始めなくとも、作業Zにあわせて7日目から着手しても作業は間に合います。
このように、「早くて○○日目に開始できるけれども、△△日間は対応しなくてもプロジェクトのスケジュールに影響は与えない」という時間がPERTでいう余裕です。
逆に余裕の時間が0になっているようなイベントでは、遅延が発生するとプロジェクト全体に影響するような作業が含まれていることを意味しています。

クリティカル・パス

プロジェクトの中で、最も長い工程の経路のことをクリティカル・パスといいます。このクリティカル・パスはPERTを使った分析の中で重要なアイデアです。
「最も長い工程の経路」と言われてもピンとこないかもしれませんが、ほとんどの場合は上記の余裕の時間が0になっているイベントを結んでいったものがクリティカル・パスになります。
先ほどの参考画像2で言えば、イベントA⇒イベントB⇒イベントD⇒イベントEの経路がクリティカル・パスです。
このクリティカル・パス上の作業が想定している時間に終わらなければ、プロジェクトの完了予定日に間に合わなくなります。そのため、クリティカルパスを見極めてリソース配分を工夫しなければいけません。
クリティカルパスに該当する経路を見つけたら、納期に遅れないようにリソースを割くなど対策を練っていく必要があります。

PERT図を作成する際の注意点

作業の漏れや時間の見積りに注意

PERTでは事前に用意した作業の情報や必要時間の見積りを頼りにネットワークを作成するため、これらの情報に誤りがあれば、作成されたPERT図は現実との乖離が激しい、役に立たないものになってしまいます。
そのため、実績がない新しいプロジェクトに携わる場合など、作業日数などは慎重に見積もるようにしましょう。最後に、PERT図を作成後は、工程同士の順番や関係性に間違いがないかを再確認してミスがないように気を付けましょう。

PERTの学習におすすめの本

PERTの教材として最も優れているのは『計画の科学―どこでも使えるPERT・CPM』です。著者の加藤昭吉はPERTを普及させた第一人者です。
同書ではPERTの仕組みを解説するだけでなく、例も多く紹介してくれているので、わかりやすい本になっています。
このページでも軽く触れた三点見積りクリティカル・パスについても詳しい説明が施されているため、PERTだけでなく、スケジュール・マネジメントに必要な手法を一式学ぶことができます。

PERTの次に学ぶこと

今回はスケジュール管理で使用するPERTについて解説していきました。
スケジュールを作成する際はガントチャートを作成するのが一般的ですが、プロジェクトの各工程・各作業がどのような関係になっているのか、そしてどの作業が遅延すればプロジェクトに影響を与えるのかを把握するためにもPERT図を作成していくことは大切です。
さらにPERTを深く理解するために、PERTの準備で紹介したWBS三点見積り、そしてクリティカル・パス上の作業を短縮するための手法であるクラッシングファスト・トラッキングについて学んでいくことをおすすめいたします。

1 本来であればホームパーティと言えどももっと作業がありますが、ここではPERTの説明をするのに最低限必要な作業だけピックアップしています。