ガントチャートは使えない?3つのデメリット・注意点を紹介

2020年5月15日

ガントチャートでのスケジュール管理のデメリット

プロジェクトのスケジュールをガントチャートで作成することは多々あります。
ガントチャートを使うと、一目で所要時間が分かり、スケジュールの把握が楽になります。
しかし、このガントチャートにもデメリットや使用上の注意点は少なからずあります。

  • スケジュールに柔軟性がなくなってしまう
  • 作業の順序関係(従属関係)が分からない
  • 問題が表面化しづらい

今回はこれらガントチャートを使う3つのデメリット・注意点について考えていきます。

ガントチャートの例(Wikiより)

ガントチャートではスケジュールに柔軟性がなくなる

あくまでスケジュールは確率

スケジュールと確率の分布の画像
スケジュールとはあくまで確率である。

ガントチャートのデメリットの1つとして、ガントチャートではスケジュールに柔軟性がなくなるということが挙げられます。
どういうことかといえば、ガントチャートに記載されたスケジュール通りに進めることに固執してしまうあまり、スケジュールを延ばさないように無理に作業を行ったり、逆にもっと早く進められるのに、なかなか対応しないという状況になってしまいます。
スケジュールというものはあくまで「完了する確率が一番高い期間」であり、さまざまな要因によってその期間は前後します(この話については「 スケジュールが遅れる3つの原因を解説 」もご参照ください)。
つまり、スケジュールは固定できないものなのですが、ガントチャートを作ってしまうと記述したスケジュールに縛られてしまい、身動きがとりづらくなってしまいます。

学生症候群を引き起こす原因にもなる

学生症候群の例02
時間に余裕があり着手を後回しにすると、思わぬ問題に見舞われた時に対応できない。

スケジュールに柔軟性がなくなると、「スケジュールに遅れないようにしよう」という気持ちは育まれるかもしれませんが、一方で「時間がまだあるなら作業を開始しなくてもいいや」という「学生症候群」を生み出す原因にもなってしまいます。
学生症候群とは、いくら時間的に余裕があっても締め切りギリギリにならないと着手しないという人間の性質のことを指します。
つまり、ギリギリにならないとやらないという性質を表した俗語です(学生症候群については「 学生症候群とは何か?スケジュール遅延の原因と解消法 」もご参照ください)。
ガントチャートを作成すると、「どこまでに完了させないといけないのか」がはっきりしてしまうので、期間が短い作業については「急いでやらないと」という気持ちになるかもしれませんが、比較的時間に余裕があるものについては「まだまだ時間がある」と着手が後回しになりがちです。
その結果、締め切りギリギリになって問題が見つかり、結局スケジュールが遅れるということが発生してしまいます。

ガントチャートでは作業の順序関係・従属関係が把握しづらい

ガントチャートの2つ目のデメリットは、作業の順序関係や従属関係が把握しづらいことです[1]深沢 隆司『ベースラインで成功する プロジェクトマネジメント』日本実業出版社、2008年、197頁。
ガントチャートでは、原則開始日が早いものから順番に作業のスケジュールが記載されていくため、作業着手の順番も上から順番になりがちです。
しかし、プロジェクトというのはガントチャートの上から順番に進めていけばいいという訳ではなく、作業間の従属関係によっては先に対応できる場合や、すぐには進められないということがあります。
例えば犬小屋を作ろうとしても、設計をしなければ実際の小屋づくりには着手できませんし、同じく材料を買う前に犬の家を建てることもできません。
このように、プロジェクトの作業には先に特定の作業を完了しなければ着手できないという従属関係が存在し、それをしっかりと把握しておかなければ効率のよいプロジェクト進行は望めません。
こうした作業間の従属関係がガントチャートでは把握できないため、ガントチャートだけでプロジェクトを管理しようとすると効率の良い作業が難しくなってしまいます。

プロジェクト中の作業間には従属関係がある(画像はWikiより)

ガントチャートは問題が表面化しにくい

ガントチャートは誰でも「それらしい」スケジュールが作成できる

ガントチャートの3つ目のデメリットとして、プロジェクトの問題が表面化しにくいということが挙げられます [2]深沢 隆司『ベースラインで成功する プロジェクトマネジメント』日本実業出版社、2008年、197頁。
このデメリットはガントチャートの資料としての出来の良さの裏返しでもあります。
どういうことかといえば、ガントチャートは見た目がよく、スケジュールの予定も把握しやすいため、どのような人が作っても「このスケジュールで大丈夫なんだな」というものがある程度できてしまいます。
そうすると、ガントチャートの中身を深く確認せずに、ガントチャートのスケジュール通りにプロジェクトを進めようとしてしまいます。
その結果、必要な時間が足らずに徹夜で作業を行う事態が発生したり、先ほど紹介した従属関係が整理されずに前作業を待って作業が進められないということになることがあります。

有効なガントチャートを作るためにできること

スケジュールは必ずシミュレーションする

今回はガントチャートのデメリットを見てきました。
ガントチャートではスケジュールに柔軟性が失われたり、従属関係の把握ができなかったり、プロジェクトの問題が表面化しなかったりしてしまいます。
ではこのようなデメリットを克服し、ガントチャートを実際のプロジェクトで使えるようにするにはどうすればよいのでしょうか。
1つ目の対策として、スケジュールを作成した後は必ずシミュレーションをすることが挙げられます。
これはガントチャートに限った話ではありませんが、スケジュールをプロジェクト・チームで確認しながら、このスケジュールで動いていっても問題がないか細かく確認していき、無理のない、効率的なスケジュールを作成していきましょう。

PERT法などの手法も知った上でガントチャートを使う

ガントチャートのデメリットを弱める2つ目の方法としては、PERT法など、他のスケジュール作成方法も取り入れることが挙げられます。
例えばPERT法では、各作業の従属関係に注目してスケジュールを考えていきますので、「必要な作業を進めたいのに、前作業が終わっていないから着手できない」というトラブルを防ぐことができます。
あくまでガントチャートには提出資料としての役割を任せ、プロジェクトのスケジュールを考える場合は、他のスケジュール方法も併せて使用したほうがよいでしょう。

参考

参考文献

  • 深沢 隆司『ベースラインで成功する プロジェクトマネジメント』日本実業出版社、2008年

1,2深沢 隆司『ベースラインで成功する プロジェクトマネジメント』日本実業出版社、2008年、197頁。