プロジェクト・スケジュール・ネットワーク図とは何か?把握できる事柄とパス分岐・パス収束について解説

2020年9月1日

プロジェクト・スケジュール・ネットワーク図を用いることでアクティビティ間の依存関係を把握することができる

プロジェクト・スケジュール・ネットワーク図はプロジェクトのスケジュール・アクティビティ間の依存関係(論理的順序関係)を示した図です。
プロジェクト・スケジュール・ネットワーク図ではアクティビティを四角や楕円形のノードで表現し、依存関係を矢印で表現します。

プロジェクト・スケジュール・ネットワーク図が作成されるタイミング

PMBOKではアクティビティの順序設定のプロセスのアウトプットとして、プロジェクト・スケジュール・ネットワーク図が作成されます。
では、このアクティビティの順序設定のプロセスというのは、どのようなタイミングで実施されるのでしょうか。

PMBOKではスケジュール・マネジメントとして、スケジュール・マネジメントの計画アクティビティの定義アクティビティの順序設定アクティビティ所要期間の見積りというプロセスを経て、スケジュールの作成を行います。
スケジュール・マネジメントの計画ではスケジュール作成の方針を定め、アクティビティの定義ではどのようなアクティビティがあるのかを明確にし、アクティビティの順序設定ではアクティビティ間の依存関係を明らかにし、アクティビティ所要期間の見積りではアクティビティにかかる時間(期間)を見積もっていきます。そして最後にスケジュールの作成のプロセスでこれまでの情報を踏まえてスケジュールを作成していきます。

このように、アクティビティの順序設定はスケジュールの作成までに実施されるプロセスであり、スケジュールを作成するための参考資料としてプロジェクト・スケジュール・ネットワーク図が作成されます

プロジェクト・スケジュール・ネットワーク図の作成方法

プロジェクト・スケジュール・ネットワーク図を作成する前に

プロジェクト・スケジュール・ネットワーク図を作成していく前に、いくつか準備しなければならないこと、知っておきたいことがあります。
まず、準備しておきたいことはアクティビティの定義です。つまり、「どのようなアクティビティ(作業)がこのプロジェクトに必要なのか?」が明らかになっていないと、その順序を整理してプロジェクト・スケジュール・ネットワーク図を作成することはできません。

プロジェクト・スケジュール・ネットワーク図を作成するために知っておきたいことは、アクティビティ間の依存関係です。
このアクティビティ間の依存関係はプレシデンス・ダイアグラム法を使うことによって、明らかになります。
また、リードとラグについて知っておくと、よりプロジェクト・スケジュール・ネットワーク図に情報を詰め込むことができます。

これらアクティビティの定義とプレシデンス・ダイアグラム法については、以下の記事で解説していますので、ご参照ください。

アクティビティを並べる

プロジェクト・スケジュール・ネットワーク図(途中①)の画像
参考画像1(画像をクリックすると拡大できます)

プロジェクト・スケジュール・ネットワーク図の作成は、アクティビティの定義で明らかにしたアクティビティを並べることからはじまります。
それぞれのアクティビティはノードと呼ばれる四角形や楕円形で囲まれた形で表示されます。
今回は省略する形でA、Bなどの表記をしていきますが、ここにアクティビティの名称を記載していってもよいですし、識別子(ID)を記載してもよいです。
多くの場合、一番左側に開始のノードを、一番右側に終了のノードを記載します。

アクティビティの依存関係を示していく

プロジェクト・スケジュール・ネットワーク図(途中②)の画像
参考画像2(画像をクリックすると拡大できます)

アクティビティを並べたら、プレシデンス・ダイアグラム法で明らかになった依存関係を矢印を使って書き込んでいきます。
矢印は開始のノードから始まり、終了のノードで終わるようにします。
アクティビティの依存関係と矢印での表現方法をまとめると以下の通りです。

  • 終了 – 開始関係
    先行ノードの尾から後続ノードの頭に矢印をつなげる(例:A – Cの関係)
  • 終了 – 終了関係
    先行ノードの尾から後続ノードの尾に矢印をつなげる(例:C – Dの関係)
  • 開始 – 開始関係
    先行ノードの頭から後続ノードの頭に矢印をつなげる(例:E – Fの関係)
  • 開始 – 終了関係
    先行ノードの頭から後続ノードの尾に矢印をつなげる(例:G – Hの関係)

多くのアクティビティは、先行するアクティビティが完了したら後続のアクティビティを開始できる「終了 – 開始関係」にあります。
そのため、多くの場合「終了 – 開始関係」は表記を省略します。

リードとラグを書き込む

参考画像3

各アクティビティを矢印でつなげたら、プロジェクト・スケジュール・ネットワーク図はほとんど完成です。
あとは付帯情報として、リードとラグを書き込んでいきます。
リードはアクティビティの開始を早められるので、マイナスの記号で表現します。例えば、リードで15日の時間が短縮できる様子を参考画像3のA – Dのように「-15」という数字で表します(単位は作成するプロジェクト・スケジュール・ネットワーク図によって異なります)。
一方ラグはアクティビティの開始を遅らせるので、プラスの記号で表現します。例えば、ラグによって10日の時間が延びる様子を参考画像3のE – Fのように、「+10」と表現します。

このリードとラグを書き込めばプロジェクト・スケジュール・ネットワーク図は完成です。

スケジュールを作成する

今回はプロジェクト・スケジュール・ネットワーク図の作成方法を解説していきました。
もしプロジェクトマネジメントを学んだことがある方ならPERT図に似ていると感じられたかもしれません。
PERTもアクティビティの関係をネットワークで表現するため見た目が似ているだけでなく、プロジェクト・スケジュール・ネットワーク図に所要時間を書き込んだものがPERT図と言えなくもありません。

プロジェクト・スケジュール・ネットワーク図はまだ各アクティビティにかかる時間が見積もられていないため、アクティビティの所要時間を計算し、それらの情報をもとにPERT図を作成し、最終的なプロジェクトのスケジュールを作成していきます。

PERTについては以下の記事で解説していますので、ご参照ください。

参考