リスク対応の計画とは何か?PMBOKの用語を解説
リスク対応の計画の概要
リスク対応の計画とは、PMBOKで紹介されているプロセスの1つで、プロジェクトの全体リスクを個別に対処するために、選択肢の策定、戦略の選択、および対応処置へ合意するプロセスのことです[1]PMBOK第6版、739頁。。
PMBOKの手法に沿えば、リスク・マネジメントとして、リスクの特定、リスクの定性的分析、リスクの定量的分析の各プロセスで、プロジェクトがどのようなリスクを内包しているか、どのような影響をもっているのかを特定できます。リスク対応の計画は、これらのプロセスの結果を受け、特定されたリスクに対して具体的な計画を練っていくプロセスです。
リスク対応の計画のアウトプット
リスク対応の計画のアウトプットを確認し、このプロセスのゴールを明確にしておきましょう。
リスク対応の計画のアウトプットは以下の通りです[2]PMBOK第6版、447~448頁。。
- 変更要求
- プロジェクトマネジメント計画書更新版
- スケジュール・マネジメント計画書
- コスト・マネジメント計画書
- 品質マネジメント計画書
- 資源マネジメント計画書
- 調達マネジメント計画書
- スコープ・ベースライン
- スケジュール・ベースライン
- コスト・ベースライン
- プロジェクト文書更新版
- 前提条件ログ
- コスト予測
- 教訓登録簿
- プロジェクト・スケジュール
- プロジェクト・チーム割当て
- リスク登録簿
- リスク報告書
リスク対応の計画のプロセスでは、新たな資料・文書を作成することはありませんが、これまで作成した資料・文書を更新していきます。
その中で最も重要なのがリスク登録簿です。リスクの特定、リスクの定性的分析、リスクの定量的分析のプロセスでは、リスク登録簿にどのようなリスクがあり、どのような影響があるのかをまとめていきましたが、リスク対応の計画では、実際にどのような対応を採るのかを記載していきます。
リスク登録簿に追記する主な内容は以下の通りです。
- 合意した対応戦略
- 選択した対応戦略を実施するための具体的な処置
- リスク発生のトリガー条件、兆候、および警戒サイン
- 選択した対応策を実行するために必要な予算とスケジュール・アクティビティ
- コンティジェンシー計画とその実行の契機となるリスク・トリガー
- リスクが発生し、第一の対応策が不十分であることが判明した場合に適用する代替計画
- 計画した対応策を講じた後にも残ると考えられる残存リスク、ならびに意図的に受容した残存リスク
- リスク対応策を実施した結果から直接発生する2次リスク
リスク対応の計画のプロセスを進める際は、上記の内容を踏まえておくとよいでしょう。
リスク対応の計画のインプット
リスク対応の計画を進める上での材料となるインプットは以下の通りです[3]PMBOK第6版、439~441頁。。
- プロジェクトマネジメント計画書
- 資源マネジメント計画書
- リスク・マネジメント計画書
- コスト・ベースライン
- プロジェクト文書
- 教訓登録簿
- プロジェクト・スケジュール
- プロジェクト・チーム割当て
- 資源カレンダー
- リスク登録簿
- リスク報告書
- ステークホルダー登録簿
- 組織体の環境要因
- 組織のプロセス資産
リスク対応の計画はこれまで作成してきた資料・文書をもとに、リスクへの具体的な対応計画を練っていきます。
リスクはあらゆるところに隠れているため、幅広い資料・文書がリスク対応の計画のインプットとなります。
ここで重要なのがリスク登録簿であり、これまで洗い出されたリスクを確認するとともに、その影響度や優先度によって、対応内容を変えていきます。
組織体の環境要因としては、主要なステークホルダーのリスク選好およびしきい値が含まれます。
また、組織のプロセス資産としては、各種資料のテンプレートや過去のデータベース、教訓リポジトリが含まれます。
リスク対応の計画のツールと技法
リスク対応の計画で用いられるツールと技法は以下の通りです[4]PMBOK第6版、441~446頁。。
- 専門家の判断
- データ収集
- 人間関係とチームに関するスキル
- 脅威への戦略
- 好機への戦略
- コンティジェンシー対応戦略
- プロジェクトの全体リスクのための戦略
- データ分析
- 意思決定
リスク対応の計画の技法として重要なのが、脅威への戦略、好機への戦略、コンティジェンシー対応戦略、プロジェクトの全体リスクのための戦略です。
専門家に協力を仰ぐ際も、これらの戦略の立案が中心になりますし、データ収集やデータ分析も、これらの戦略を補強するために用います。
脅威への戦略、好機への戦略、プロジェクトの全体リスクのための戦略については、以下の記事もご参照ください。
また、コンティジェンシー対応戦略については、以下の記事をご参照ください。