組織体の環境要因(EEFs)とは何か?

2020年2月3日

組織体の環境要因とは

組織体の環境要因とは、プロジェクトに影響を与える内部と外部の環境要因のことであり、チームの直接管理下にはないものの、プロジェクト、プログラム、あるいはポートフォリオに対して影響を及ぼし、制約し、または方向性をしめすような条件のことを指します[1]PMBOK第6版、717頁
英語ではEnterprise Environmental Factorsであり、EEFsと略記されます。

プロセス資産と並びプロジェクトに影響を与える存在

プロジェクトは必ずしもプロジェクト・チーム内だけで完結するものではありません。多くの場合、プロジェクトは外部の状況に影響され、その影響を上手くコントロールしなければ目標を達成させることができません。
プロジェクト・チームのメンバー以外で、プロジェクトに影響を与えるものとして、PMBOKではプロセス資産(OPA:Organizational Process Assets)と組織体の環境要因の2つを挙げています。
プロセス資産は、プロジェクトを運用する母体組織が使用し、その組織が使用している特有の計画書であったり、プロセスや方針、知識ベースのことを指します。端的に言えば、その組織に蓄積されているノウハウのことです。プロジェクトを進めていく上では、組織がもつプロセス資産が影響を与えていきます。
このプロセス資産に対し、組織体の環境要因は組織内であってもプロジェクトとは直接関係ない人事制度であったり、組織外の条例などのことを指します。
例えば、プロジェクトの成否が人事考課に影響する組織であれば、プロジェクトのメンバーはチャレンジよりもリスクの軽減を優先するでしょう。このように、プロジェクトとは直接関係ないように見えても、組織体の環境要因は間接的にプロジェクトの進め方に影響を与えることもあります。

内部の要因と外部の要因

組織体の環境要因は、上述の通り、組織内の環境要因と組織外の環境要因に分けられます。組織内の環境要因であれば、かろうじてプロジェクト・チームが変えられそうなものがありますが、組織内の環境要因であっても、基本的に組織体の環境要因はプロジェクト・チームでは大きく変更することはできません。
そのため、組織体の環境要因は制約条件として認識しておいた方がよいでしょう。

組織内部の環境要因

PMBOKでは組織内の環境要因として以下のものを紹介しています[2]PMBOK第6版、38頁。

  • 組織の文化、構造、およびガバナンス
  • 施設や資源の地理的分布
  • インフラストラクチャ
  • 情報技術ソフトウェア
  • 資源の可用性
  • 従業員の能力

このように組織内の環境要因は、プロジェクトとは直接関係のないものの、プロジェクトの制約条件になる事項が挙げられます。
例えば、組織内のインフラストラクチャとしては、セキュリティへの取組が挙げられ、Google系のWebアプリケーションがセキュリティの観点から使えないようにしている組織もあります。また、従業員の能力についても、プロジェクトに慣れていないスタッフばかりでは、プロジェクト・マネジャーは足りない能力を十分にサポートしなければなりません。

組織外部の環境要因

PMBOKでは組織外の環境要因として以下のものを紹介しています[3]PMBOK第6版、39頁。

  • 市場の状況
  • 社会的、文化的な影響と課題
  • 法的制約
  • 商用データベース
  • 学術研究
  • 国家標準または業界標準
  • 財務上の考慮事項
  • 物理的な環境要因

組織外の環境要因は、プロジェクト・チームやその組織が如何ともしがたいもので、市場の状況や法規制などが挙げられます。
プロジェクトの中盤以降に、プロジェクトの成果物が国家標準に適していなかったり、条例に反していては取り返しのつかないことになります。
プロジェクトのはじめ、できれば開始前に組織外の環境要因については十分に調査し、プロジェクト・ビジネス・ケースなどのプロジェクト文書にまとめておいた方がよいでしょう。

1PMBOK第6版、717頁
2PMBOK第6版、38頁。
3PMBOK第6版、39頁。