コンティンジェンシー対応戦略とは何か?コンティンジェンシー計画と代替計画との違いについても解説

2020年8月6日

コンティンジェンシー対応戦略の概要

コンティジェンシー対応戦略の概要

コンティンジェンシー対応戦略は、特定の状況になった際にとる対応を講じる、リスク対応計画の中の1つの戦略です。
コンティンジェント(contingent)を直訳すれば「偶発的」「不慮の」となり、起こるかもしれない状況に対してあらかじめ対応策を考えておくことがコンティンジェンシー対応戦略です。
コンティンジェンシー対応戦略で講じられた計画は「コンティンジェンシー計画(コンティンジェンシープラン)」と呼ばれます。

例えば、屋外イベントの実施を予定している時に「雨が降った場合にどうするか?」を考えることは、コンティンジェンシー対応戦略に該当します。
この「雨が降った場合」という、コンティンジェンシー対応戦略で講じたコンティンジェンシー計画を発動させる条件を「トリガー」と呼びます。
コンティンジェンシー対応戦略を考える際には、あらかじめこのトリガーを定義しておき、そのトリガーがひかれた場合に対応を行うように準備をしていきます。

リスク対応の計画の中でのコンティンジェンシー対応戦略

リスク対応の計画プロセスの概要

PMBOKの手法に沿うと、コンティンジェンシー対応戦略は、リスク対応の計画プロセスで講じていきます。
リスク対応の計画プロセスではプロジェクトのリスクに対して、戦略を練っていきます。その戦略には、例えば脅威が発生した際に上に判断を仰ぐ「エスカレーション」、リスクの発生を除去する「回避」、保険を掛けるなどしてリスクが発生した場合にその影響を他に移転する「転嫁」、リスクの影響を小さくする「軽減」、リスクの存在は認めるものの積極的に対応は行わない「受容」があります[1]いずれも脅威への対応戦略

例えば屋外イベントを開催しようとする時、届いた資材が破損していた時のために保険を掛けたり(リスクの転嫁)、時間や費用がかかっても運営スタッフの認識のズレによってトラブルが発生しないようリハーサルを行うなど(リスクの軽減)、プロジェクトの中でさまざまなリスク対応の計画を練っていきます。
しかし、「雨が降る」というリスクに対しては、基本的にはそれを受容しなければなりません。お金をかけて雨雲を消すこともできなければ、エスカレーションを行ってプロジェクトのスポンサーと相談しても、その場ではどうすることもできません。

コンティンジェンシー対応戦略では、このように「受容」が選択されたリスクが発生した場合の計画を考えていきます。

十分な予兆があり、影響度の高いリスクをトリガーにする

コンティンジェンシー対応戦略では、講じた対応策の実行可否を判断する「トリガー」をあらかじめ定義しておきます。
屋外イベントの中での降雨のように、 トリガーにはそのリスクの発生が十分に予兆でき、なおかつ影響度が高いリスクの発生を設定します。
予兆が全くなければそもそも対応策を講じることができず、影響度が小さければ、そのままリスクが発生した時の損失を受け入れるという対応が検討されます。

このトリガーがひかれ、コンティンジェンシー対応戦略で講じた対応策・コンティンジェンシー計画を実施すると、多くの場合、プロジェクトの体制が一変します。
例えば、屋外イベントを予定していたのに雨が降ってしまった場合、屋内に参加者を移動させ、屋内イベント用の体制をとらなければなりません。
このように、コンティンジェンシー計画を実施すると、専用の体制を敷かなければ対応できないことがよくあります。
言いかえれば、受容されたリスクに対し、コンティンジェンシー対応戦略が必要かどうかを判断する1つの軸として、「そのリスクが発生したら、その対応を行うために特別な体制が必要かどうか」を考えるとよいかもしれません。

コンティンジェンシー計画と代替計画(フォールバックプラン)の違い

コンティンジェンシー対応戦略で講じられた対応内容は、コンティンジェンシー計画とも代替計画(フォールバックプラン)とも呼ばれることがあります。
人によっては両者を同じものと扱うこともありますが、厳密に言えば異なるという考え方もあります。

コンティンジェンシー計画と代替計画は異なるものだとする場合、両者の違いは以下のように解説されます[2]例えば、 Fallback Plan vs Contingent Response Strategy – PMP Exam ConceptsContingency Plan vs Fallback Plan | PM Study Circle

  • コンティンジェンシー計画:
    ある特定のリスクが発生した場合に採る対応計画
  • 代替計画:
    リスク対応が効果的でなかった場合に採る対応計画

例えば、自然災害というリスクが発生した場合に、「近くの公民館に避難しましょう」というのがコンティンジェンシー計画であれば、「公民館で収容できない場合は、近くの小学校の体育館に避難しましょう」というのが代替計画です。

このように、代替計画というのは「次善策」「プランB」と呼ばれるような、第一案の効果が十分でなかった時に用いられるサブの計画であるのに対し、コンティンジェンシー計画とは特定のリスクが発生した際に発動させる計画です。