KJ法(親和図法)とは何か?膨大な情報を整理するための発想法を解説
KJ法の概要
KJ法とは大量に収集したデータを整理して分析し、新たなアイデアを得るための発想法のことです。
膨大なデータを一枚一枚のカードに分けてグループ化を繰り返していくことで、問題解決の手掛かりや新たな発想が得られます。
KJ法は東京工業大学名誉教授を務めた文化人類学者・川喜田二郎が考案したことにより、川喜田(Kawakita)二郎(Jiro)の頭文字からKJ法と呼ばれています。
KJ法は親和図法とも呼ばれ、品質管理のツールである新QC7つ道具の1つに数えられています。
KJ法の誕生経緯
文化人類学者である川喜田二郎は、ネパール探検などで入手した膨大な研究データをどう整理して分析するかに頭を悩ませ、ある手法を独自に編み出しました。
その手法を一般的な課題解決や企業の経営戦略にも活かせると気づき、体系化した結果、KJ法が誕生したという経緯があります。
1967年に出版された川喜田二郎の著書『発想法』でKJ法が紹介され、アイデア発想のための手法として広く知られるようになりました。
KJ法を使うべき場面
KJ法は、膨大なデータを一枚一枚のカードに分けて並べ、それを整理していくという極めて単純な作業です。
しかし、その単純な作業をしていくと、不思議と問題解決の手掛かりや新たな発想に結びつく結論が得られます。
なぜなら、データを細かく分けることによって頭の中の混乱を整理でき、結果的に膨大な情報をスムーズに集束させられるからです。
そのため、KJ法は、以下のような場合に強みを発揮します。
- 大量のデータをどう整理すべきか分からない
- 問題解決の糸口が見つからない
逆に、もともとのデータ量や判断材料が少ない場合には使うべきではないでしょう。
KJ法実践のための準備
テーマを設定する
ここからはKJ法の実践方法を解説していきます。まずはKJ法の実践のための準備について見ていきましょう。
KJ法では「自社が抱える福利厚生面の問題点」「創造的な企業になるための方法」「新規に取り組みたい事業のアイデア」など、解決したい課題や新たに発想を得たい内容をテーマに設定します。
データを集める
すでに大量のデータが手元にある場合は、改めてデータを集める必要はありません。
しかし、これからデータを集める場合は、意外と難しいかもしれません。
その場合、以下のヒントを参考にしてデータを集めてみましょう。
- すぐに思い浮かんだ内容
- テーマに関する気づき
- テーマからイメージされる内容
- フィールド調査で入手した情報
- 書籍やインターネットから得られた情報
- インタビューで入手した情報
ちなみに、会議で意見を出し合い、その意見をデータとする場合には、出てきた意見の一つ一つを付箋に書き出しておくのが良いでしょう。
付箋がそのままカードになるので、その後の作業が楽になります。
KJ法実践の手順
ここからは集めたデータをKJ法によって整理し、新しい発想を得るまでの流れを解説していきます。
KJ法は「カード化→グループ化→図解化→文章化」という手順で進めていきます。今回は、これらの手順をさらに深く掘り下げてみましょう。
データの単位化

KJ法はテーマについて集めたデータをカードに記述し、データの単位化をすることからはじまります。
それらのカードを卓上に広げ、重ならないようにバラバラに配置していきます。
この作業により、これまで集めてきたデータにはどのようなものがあるのか、俯瞰的に見ていきます。
データをカードではなく、一つ一つ付箋に書き出している場合は、ホワイトボードに貼り付けると見やすくて便利です。
一行見出しの作成

次に、バラバラにした各カードに対して、その内容を一行で言い表す文章や言葉を考えていきます。ここではそれを「一行見出し」と呼ぶことにします。
「一行見出し」をそれぞれのカードに記述していきます。
カードの小グループ化

一行見出しをすべてのデータにつけることができたら、再度それらのカードを眺めてみます。
似た内容や同じジャンルのカードを「小グループ」としてまとめます。
どの小グループにも属さないカードが出てくる場合がありますが、無理にどこかのグループへ入れる必要はありません。
小グループの概念化

小グループができたら、小グループの概念化を進めていきます。
この作業では、小グループ内のカードを見て、同じグループにした根拠や共通点、特徴を考えます。
そして、それらの内容をタイトルとして小グループに記述していきます。
タイトルは、抽象的すぎると意味が分からなくなるので、具体的で何のことか分かるようなネーミングにしていきましょう。
小グループの中グループ化

小グループのタイトルをつけることができたら、再度それらのタイトルを眺め、似た内容やジャンルの小グループを「中グループ」としてまとめていきます。
この際も、どこにも属さない小グループが出てきても問題ありません。
そして、それらの中グループについても小グループの時と同様に、中グループの共通点や特徴などをヒントにタイトルを付けていきます。
このように、KJ法ではグループ化と概念化を繰り返し、徐々にグループの数を減らしていきます。
中グループの次は大グループ、大グループの次は特大グループなどのグループを作成し、グループをどんどんまとめていきましょう。
最終的に残るグループの数は、10以下とするのが適切です。
図解化

グループの数が10以下になったら、それぞれのグループを眺め、グループ同士の関係性を考えてみます。
この作業を、川喜田二郎は、「A型図解化」と呼んでいます。
例えば、関連するグループを線で囲み、囲んだもの同士を矢印などの記号で結びます。
これにより、グループ同士の関係性を明確にします。
どのグループにも属さないグループやカードについても、他のグループとの関係性をよく考えてみましょう。
文章化

グループの関係性を図解することができたら、次は図解化したグループ同士の関係性を文章にまとめます。
この作業を、川喜田二郎は、「B型文章化」と呼んでいます。
論理的な文章が書けなかったり説明するのが難しかったりする場合は、きちんと図解化できていない可能性が高いです。
うまく文章化できないときは、図解化の工程に戻りましょう。
図解化と文章化を繰り返すことで、論理的な結論が得られます。
KJ法とブレインストーミング
KJ法はブレインストーミングと相性の良いデータの整理法です。
ブレインストーミングとは、会議の参加者が自由な発想で意見を出し合い、新しいアイデアを生み出すための手法です。
大量の意見を出せることが、ブレインストーミングの利点です。
しかし、出てきた意見を整理して分析しなければ、新しいアイデアを生み出すことには繋がりません。
こうした時にKJ法が役に立ちます。
ブレインストーミングで出てきた意見をKJ法でまとめていきましょう。
ブレインストーミングについては、下の記事もぜひご覧ください。
KJ法のまとめ
今回はデータの集まりから新たな発想を得る手法であるKJ法を解説していきました。
KJ法の手順は、「カード化→グループ化→図解化→文章化」という明瞭な仕組みです。
仕組みとしては単純ですが、混沌とした思考をすっきり整理してくれます。
今やアイデア発想法には色々な手法がありますが、「大量のデータをどう整理して分析するか」という悩みがある場合には、KJ法を試してみると新たな発想が得られるかもしれません。
参考
- 中野明『超図解「デザイン思考」でゼロから1をつくり出す』学研プラス、2015年。
- 樽本徹也『UXリサーチの道具箱』オーム社、2018年。
- 田中博晃「KJ法入門:質的データ分析法としてKJ法を行う前に」『より良い外国語教育研究のための方法―外国語教育メディア学会関西支部メソドロジー研究部会2010年度報告論集』、17~29頁。