根本原因分析とは何か?PMPにでてくる分析手法の手順を解説

2020年9月18日

根本原因分析の概要

根本原因分析(RCA:Root Cause Analysis)とは、差異、欠陥、あるいはリスクを引き起こす根源的な理由を明らかにするために用いられる分析手法です[1]PMBOK第6版、708頁。

根本原因分析は例えば以下のような状況で根本分析は使用されます。

  • 自動車が動かなくなった根本原因を探りたい
  • 会社の業績が停滞している理由を分析したい
  • 利用しているITシステムで不具合が発生した原因を知りたい

最後のITシステムの不具合の例について説明を加えていきます。
根本原因分析では、ITシステムで不具合が発生した際に、不具合の表面的な原因だけではなく、そのような不具合が発生した真の要因を遡って追求して、再発防止策を立てるために役立てます。
ITシステムで不具合が発生する直接的な原因は、当然のことながらプログラミングの誤りなどです。
そのため、「ITシステムはプログラミングの誤りで発生した」と言えるのですが、プログラミングのコードが自動的に誤ることはなく、プログラミングを誤った人(プログラマー)が存在しています。
ここから、「ITシステムはプログラマーのミスにより、プログラミングに誤りがあったために発生した」と言いかえることができます。
しかし、プログラマーに責任があるとはいえ、ミスをしないプログラマーが存在しないというのも事実です。
そのため、プログラマーのミスを事前にチェックする体制がなければ、いつまでたってもITシステムの不具合はなくなりません。
つまり、「ITシステムは組織にチェック体制が存在せず、プログラマーがミスをしたことに気づかなかったために発生した」と考えることができます。

このITシステムの例のように、トラブルが起こった際に、表面的な原因だけでなく、人の問題、組織の問題にまでメスを入れていくのが根本原因分析の特徴です。

根本原因分析のメリット

根本原因分析を活用すると、以下のようなメリットが得られます。

トラブルが起きた原因を解明できる

トラブルが起きる原因は一つとは限りません。根本原因分析では、トラブルが起きた要因をさまざまな角度から分析していき原因を解明していく方法です。ツールを使用して、細かく分析することができます。

トラブルの予防ができる

トラブルが発生した場合に大切にしなければいけないことは、同じトラブルが起きないように対策を打つことです。しかし、不具合が発生した根本原因が解明できなければ、対策を打つことができません。根本原因分析が活用できれば、不具合が発生した根本原因を解明できて、それに向けた対策を打つことができます。

ノウハウの蓄積につながる

根本原因分析で明らかになった問題に対する原因と解決策はドキュメント化しておくことが大切です。ドキュメント化することで、社内にノウハウが蓄積されていきます。ノウハウが蓄積していけば、作業工数を削減したり、コストを軽減したりできます。

根本原因分析の手順

トラブルの原因を解明することができる根本原因分析ですが、実際にどのような手順で行えば良いのでしょうか?
ここからは、根本原因分析の手順についてご紹介します。
まずはその手順を概観していきましょう[2]Root Cause Analysis – Problem Solving From MindTools.com をもとに作成。

  1. 問題を定義する
  2. 情報を収集する
  3. 考えられる問題発生の要因を洗い出していく
  4. 問題の根本的な原因を特定する
  5. 対策(再発防止策)を講じる

ここからは、各手順の内容を説明していきます。

問題を定義する

根本原因分析を進めていくには、まず原因を探っていく問題を明確にしていきます。
どのような現象が起こっているのか、それによってどのような影響がでているのかを明らかにし、根本原因分析を展開していきます。

情報収集をする

トラブルが発生した現場を調査したり、現場にいたメンバーにヒアリングを実施したりして、トラブル発生時の情報・データを収集していきます。
収集した情報は時系列に整理していくなど、利用しやすい形にまとめていきます。

考えられる問題発生の要因を洗い出していく

情報を整理したら、なぜ問題が発生したのかを考えていきます。このときに「なぜ?」という疑問を投げかけながら深堀りしていきます。注意点は、トラブルが起きた原因が人の場合です。
トラブルを起こした人を責めるのではなくて、その人がトラブルを起こしてしまった理由を解明しましょう。例えば、新人メンバーがトラブルを起こした場合は、教育不足が原因などと、問題を解明していきます。

問題の根本的な原因を特定する

分析と現場調査を終えたら、これまでの情報やデータをもとに発生した問題の根本的な原因を見出していきます。

このプロセスを助けるツールとして、因果関係図があります。因果関係図とは、トラブルが発生した原因と結果を明確にするために作成するものです。
根本原因は、必ずしも1つとは限りません。複数の根本原因が絡んでいる場合もあるので注意しながら、因果関係図を作成して精査していきましょう。

対策(再発防止策)を講じる

問題が起きた後に大切にするべきことは、同じ問題が発生しないように対策(再発防止策)を講じることです。
再発防止策を策定したら、それが容易に行えるか、実施した場合はどれぐらいの効果が期待できるかを考えて、効果があるものを対策方法をとして選んでいきます。
再発防止策を策定したら、決裁者に承認を得て実行に移します。また、実行したら終わりではなく効果がどれぐらい出たか監視していきながら、その効果を評価していきましょう。

参考

1PMBOK第6版、708頁。
2Root Cause Analysis – Problem Solving From MindTools.com をもとに作成。