チームの育成はどのようにすればよいのか?PMBOKの手法を中心に解説
チームの育成の概要
チームの育成とは、プロジェクトのパフォーマンスを高めるために、コンピテンシー、チーム・メンバー間の交流、およびチーム環境全体を改善するプロセスの1つです[1]PMBOK第6版、336頁。。
チームの育成については、厚い研究がなされ、様々な本が出版されていますが、今回はPMBOKで紹介されているプロセスを紹介していきます。
チームの育成に必要な要素
チームの育成のゴールはチームのパフォーマンスを高め、それによりプロジェクトのパフォーマンスを高めることにあります。
そのためには、以下のような要素が重要であるとされています[2]PMBOK第6版、337頁。。
- オープンで効果的なコミュニケーションを行うこと
- チーム形成の機会を創出すること
- チーム・メンバー間の信頼関係を構築すること
- コンフリクトを建設的にマネジメントすること
- 協業的な問題解決を奨励すること
- 協業的な意思決定を奨励すること
プロジェクト・マネジャーはこれらの要素を実現するために、チーム・メンバーを鼓舞したり、環境を整えたりする必要があります。
チームの育成のインプット
チームの育成のプロセスを進める上で材料となる情報は以下の通りです[3]PMBOK第6版、339~340頁。。
- プロジェクトマネジメント計画書
- プロジェクト文書
- 教訓登録簿
- プロジェクト・スケジュール
- プロジェクト・チームの任命
- 資源カレンダー
- チーム憲章
- 組織体の環境要因
- 組織のプロセス資産
ここからは、これらのインプットからどのようなことを読み取ればよいのかを解説していきます。
チームの育成の方針
チームの育成の活動には、これまで作成したプロジェクトマネジメント計画書およびその構成要素が大きく影響します。
その中でも、資源マネジメント計画書は、人的資源であるチーム・メンバーのマネジメント方針について記述がされているので、これを確認していきます。
プロジェクト文書の1つであるチーム憲章があれば、チームの意思決定の方法やコンフリクト解消のための方針が記述されていることがあるので、チームの育成のプロセスを進める上で参考になります。
また、組織体の環境要因として、人的資源のマネジメントに影響するような要素があれば、これを確認します。
組織のノウハウ・プロセス資産
チームの育成を進める上で、組織の経験がまとめられた教訓登録簿を確認しておくと、未然に失敗を防ぐことができ、グッドプラクティスを活用することができるかもしれません。
また、組織内の表彰制度や恩典を確認し、プロジェクトと結び付けていくと、チーム・メンバーのモチベーションを高めていくことができます。
チームの育成のツールと技法
チームの育成のツールと技法は多岐にわたります。
以下、PMBOKで紹介されているものを列記します[4]PMBOK第6版、340~342頁。。
- コロケーション
- バーチャル・チーム
- コミュニケーション技術
- 共有ポータル
- テレビ会議
- 電話会議
- 電子メール/チャット
- 人間関係とチームに関するスキル
- コンフリクト・マネジメント
- 影響力
- 動機づけ
- 交渉
- チーム形成
- 表彰と報酬
- トレーニング
- 個人およびチームの評価
- 会議
チームの育成のアウトプット
チームの育成のアウトプットには以下のようなものが挙げられます[5]PMBOK第6版、343~344頁。。
- チームのパフォーマンス評価
- 変更要求
- プロジェクトマネジメント計画書更新版
- プロジェクト文書更新版
- 教訓登録簿
- プロジェクト・スケジュール
- プロジェクト・チームの任命
- 資源カレンダー
- チーム憲章
- 組織体の環境要因更新版
- 組織のプロセス資産更新版
ここからは、これらのアウトプットを解説していきます。
チームのパフォーマンス評価
チームのパフォーマンス評価はチームの育成のプロセス独自のアウトプットです。
その名の通り、チームのパフォーマンスを評価した資料です。
このチームのパフォーマンス評価は「積極的に業務に取り組んでいる」というような定性的な評価だけでなく、「課題を2つ処理した」「10人日の作業を8人日で対応した」というような定量的に計測される必要もあります。
このチームのパフォーマンス評価を使い、これまでの資料を更新していきます。
これまでの計画の見直し
チームのパフォーマンス評価を確認していくと、「現在のパフォーマンスのままプロジェクトが進めばスケジュールに遅延が発生する」というような問題が見つかるかもしれません。
この問題に対処するため、スケジュールを修正したり、新たに人員を追加したりすることもあります。
このように、チームのパフォーマンス評価が出来上がると、その内容によってこれまでの計画を見直す必要が出てくることもあります。
そのため、変更要求を出して、プロジェクトマネジメント計画書やプロジェクト文書を更新していきます。
組織のノウハウの蓄積
チームの育成のプロセスは組織にさまざまな成功事例・失敗事例を提供します。
これらの情報を教訓登録簿にまとめたり、組織体の環境要因・組織のプロセス資産として蓄積することが大切です。