バーチャル・チームとは何か?ITツールを使い離れた場所のメンバーとチームを結成する
バーチャル・チームの概要
バーチャル・チームとは、ITツールを駆使することで、ほとんど対面することなく、それぞれの役割を果たすために結成されたチームのことです。
「バーチャル(virtual)」とは、実体を伴わない仮想的なものを意味します。そのため「バーチャル・チーム」を直訳すると「仮想的なチーム」となりますが、ITツールなどを活用して「仮想的な空間に集まったチーム」という方が今日使われている意味に近いでしょう。
近頃は、Web会議、テレプレゼンスなどのツールの登場によって、簡単にバーチャル・チームを結成できるようになりました。
現代のビジネスでは、複数の国や地域の人が連携して取り組むプロジェクトが増えてきています。バーチャル・チームを結成できるか否かで、企業の中長期的な競争力が変わってくるため、バーチャル・チームが注目されています。
補足にはなりますが、オフィスで顔を合わせるチームのことをオンサイト・チームと呼びます。オンサイト・チームは、バーチャル・チームの対義語としてよく使われるので併せて覚えておきましょう。
バーチャル・チームのメリット
通常のプロジェクトは、同じオフィス内のスタッフで距離的にも近いオンサイト・チームが結成されるのが常ですが、バーチャル・チームを結成すると以下のようなメリットを享受することができます。
世界各国の人とチームを結成できる
バーチャル・チームの最大のメリットは、地理的な制約を受けなくなることです。
チャットやメール、SNSなどのITツールを同時に使用すれば、時差にしばられずに連絡を取り合うことができます。そのため、バーチャル・チームであれば、世界各国の人とチームを結成できるようになります。
近頃は、Web会議ツールが安価で導入できるようになりました。これらのツールを活用することで、離れた場所にいる相手の顔を見ながら、ミーティングが行えるようになりました。
優秀な人材が採用しやすくなる
バーチャル・チームであれば、地理的な制限を受けないため、採用も地理的な制限を受けません。そのため、職務にふさわしい優秀な人材を採用することができます。従業員側も柔軟な勤務が可能となるため、双方にメリットが得られます。
在宅勤務が可能になる
在宅勤務が可能になることも、バーチャル・チームのメリットです。とくに2020年に流行した新型コロナウィルスの影響により、出社する社員数を抑えたいという会社が増えてきました。そうした中でもITツールを駆使してバーチャル・チームを結成していきます。
幅広いサポートを提供できる
顧客に対して24時間体制で対応するのは、オンサイト・チームでは難しいことです。しかし、顧客対応を行うスタッフを時差のある地域に配置し、バーチャル・チームを結成すれば、その時差を利用して24時間体制を組むことができます。
こうしたサービスデスクの対応でも、バーチャル・チームは有効に活用することができます。サービスデスクについては、下記のページでも詳しく解説していますのでご覧ください。
バーチャル・チームで使われるツール
ここからはバーチャル・チームで使われるツールを紹介していきます。最近ではバーチャル・チームでなくとも使用するツールとなってきたものがほとんどですが、バーチャル・チームの結成には不可欠なものばかりです。
電子メール・チャット・SNS
バーチャル・チームの場合、国外の時差のあるチーム・メンバーがいる可能性もあるため、メンバー同士のコミュニケーションは時間にしばられない電子メールやチャット、SNSが主になります。
会議ツール
上述の通り、バーチャル・チームでは時間にしばられない電子メールやチャット、SNSがコミュニケーションの主流になりますが、重要な事柄を決定する際には、時間をあわせて会議を開く場合もあります。
一昔前であれば「テレビ会議」「電話会議」という言葉が使われていましたが、2020年の新型コロナウィルスの流行以後、Zoomなどを使った「Web会議」「オンライン会議」という言葉が徐々に浸透していきました。
Zoomだけでなく、最近ではSlackなどのコミュニケーションツールにもWeb会議ツールが標準搭載されているので、よく使用しているツールを使っていくとよいでしょう。
共有ポータル
バーチャル・チームでは、情報を共有するためのポータルが重要な役割を担っています。例えば組織内だけで使用できるイントラネットやWiki、Trelloやbacklogなどに代表されるタスク管理ツールなどを利用し、離れたメンバーとの情報共有ができるようにしていきます。
バーチャル・チームの運営方法
バーチャル・チームを運営する場合はコツがあります。次のようなポイントを意識して、バーチャル・チームを運営していきましょう。
共通の目的を持つ
PMBOKでは、バーチャル・チームを「ほとんど対面することなくそれぞれの役割を果たす、共通の目的をもった人の集団」と定義しています[1]PMBOK第6版、724頁。。
どのような形式のチームでも目的をチーム・メンバー間で共有しておくことは大切ですが、オンサイト・チームに比べて距離的にも離れており、顔を合わす頻度も少ないバーチャル・チームでは、共通の目的が希薄になってしまうことがよくあります。
そのため、バーチャル・チームを結成する際は、プロジェクトの目的や仕事の価値観を共有することに注力したチームビルディングを意識するとよいでしょう。
チームビルディングとは、仲間で心をひとつにしてゴールに向かっていくための組織作りのことをいいます。プロジェクト開始前にチームビルディングを導入すると、各メンバーのモチベーションを上げることができるでしょう。
会議のルールを守る
魅力的なバーチャル・チームですが、会議やミーティングの作法をオンサイト・チームの時よりも意識する必要があります。
オンサイト・チームでの会議であっても、「事前に議題を共有する」「時間を守る」「発言しやすい雰囲気を作る」ということを意識していかなければなりません。
しかしオンサイト・チームでの場合は、働く場所が距離的に近いことから事前に議題を知らされていなくともなんとなく概要を知っていたり、社員の働く時間が同じであるため、チーム間の合意があれば、時間の延長が簡単だったりします。
しかしバーチャル・チームでは事前に議題が知らされていなければ、参加者は何の会議なのかもわからず、非生産的な会議をはじめてしまうことになります。
また、バーチャル・チームのWeb会議では時差がある場合もあり、会議の開始時刻がある参加者の国では始業すぐである一方、他の参加者は終業直前であるということもあります。
このように、バーチャル・チームの会議では会議の作法をより意識しなければ、生産的な会議にならず、チーム同士で気持ちのよい仕事をすることができなくなります。
Web会議では、通信状態によって声が途切れてしまったり、表情や動作の小さな変化を見逃してしまうことが多いため、ファシリテーター役の人が適宜内容を要約したりするとよいでしょう。
また、オンサイト・チームでの会議よりもリアクションを大きく取らなければ、Web会議では相手に理解していることを示すことができないことを会議の参加者全員が共通認識として持っておくことも大切です。
例えばオンサイト・チームでの会議では、首をかしげているだけでもファシリテーターの人が気にして、「何か質問はありますか?」と声をかけてくれますが、Web会議では顔が映っていない場合もあり、質問があるときは質問がある旨を声に出していかなければなりません。
こまめに連絡を取り合う
バーチャル・チームを結成してプロジェクトを進める場合は、こまめに連絡を取り合うようにしましょう。
例えばバーチャル・チームを結成して在宅勤務を行っている場合、相手の勤務態度が見えずに意思疎通の機会も減るため、孤独を感じやすいことがあります。孤独を感じてしまうとモチベーションが落ちてしまうメンバーもいます。
健全な仲間意識と連帯感を意識させることが、バーチャル・チームを結成する上では必要不可欠です。そのため、コミュニケーションツールを積極的に活用して、メンバー同士の触れ合う時間を設けましょう。
注
↑1 | PMBOK第6版、724頁。 |
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