マイルストーンの書き方はどうすればよいのか?スケジュール作成の基本を解説

2020年7月13日

マイルストーンの概要

マイルストーンとは、プロジェクトにとって重要な意味を持つイベントやプロジェクトのチェックポイントを意味します。いわば、プロジェクトを完遂するための重要な中間地点・中間目標がマイルストーンです。
ビジネス用語として、使われ始めたのは近年からであり、もとは鉄道や道路において、起点からの距離をマイル形式で表した標識のことであり、日本の高速道路でも見られる距離標と同じ役割を果たしています。
その標識がもとは石でできていたことから「マイル(mile)ストーン(stone)」と呼ばれるようになりました。
中間目標を表すマイルストーンはIT業界のみならず、様々な業界で用いられています。
商品開発や工事現場など、各現場や業界ごとに用語は異なりますが、スケジュールを管理するために必ずマイルストーンは設置されています。
新人のプロジェクト・マネジャー(以下、プロマネと略記)やWebディレクターなどは、最初の業務としてスケジュール作成を任されることがあります。
その際、先輩スタッフから「マイルストーンに気を付けてね」と言われることが多いのですが、マイルストーンではいったい何を気を付ければよいのでしょうか。
今回は新人のプロマネやディレクター向けに、マイルストーンとは何かを紹介しながら、設定の際の考え方や注意点を解説していきます。

マイルストーンの設定方法と考え方

ここからはマイルストーンの設定方法と考え方について解説していきます。
マイルストーンには「必ずこのように設定すべし」という手法があるわけではありません。そのため、プロマネを中心に、プロジェクト・メンバーが任意でマイルストーンを設置することができます。
例えば「作業Aは完了予定日が7月10日だから、7月1日には進捗が80%を超えているかどうか確認しよう」「このプロジェクトが完了するためには、A・B・C・Dの4つのアクティビティの完了が必要だから、それらの完了日をマイルストーンとしよう」など、プロジェクトで重要と思われるタイミングに、必要な数だけマイルストーンを設置します。
しかし、よりよいマイルストーンとするためいくつか基本となるアイデアはあるので、それらをご紹介いたします。

WBSの構成に沿ってマイルストーンを設置する

WBSのイメージ図
参考画像1:WBSのイメージ図

マイルストーンはプロジェクトの中間目標ですので、それを設置するにはプロジェクトの構成を正確に把握していかなければなりません。
プロジェクトの構成はWBSで把握することができますので、WBSに沿ったマイルストーンを作成していきましょう。
例えば参考画像1のように、 プロジェクトを完成するために、大きなタスクの塊がA・B・Cの3種類あるのだとしたら、その種類に応じたマイルストーンが必要になります。
よくあるマイルストーンの設置方法としては、各作業の完了日をマイルストーンとして、当初の予定より遅れが発生していないか、他の作業に影響を与えていないかを確認していきます。

クリティカル・パス上の作業では必須

クリティカル・パスを示すPERT図
参考画像2:クリティカル・パスのイメージ図

プロジェクト上、大切な作業には、マイルストーンを設置して厳しく進捗を監視していく必要があります。
プロジェクトの成否を分けるような作業については、PERT図を作成した後にクリティカル・パスを示して把握する必要があります。
PERT図WBSなどの作業情報や三点見積り等で見積もった作業時間の情報をもとに、プロジェクトの段取りをまとめていったものです。
その中で、遅延が発生すればプロジェクト全体に影響を与える一連の作業工程をクリティカル・パスと呼びます。
このクリティカル・パス上の作業については、「完了予定日が7月10日だから7月1日には進捗を確認しよう」というように、マイルストーンを設置し、スケジュール管理を徹底しておくとよいでしょう。

ここででてきたPERTやクリティカル・パスについては、以下の記事もご参照ください。

マイルストーンの長さ

マイルストーンの長さはどのように調整すればよいでしょうか。
マイルストーンの長さは、プロジェクトの不安定さに見合ったものとするという考え方があります[1]Scott Berkun (著)、村上 雅章 (訳)『アート・オブ・プロジェクトマネジメント … Continue reading。つまり、プロジェクトが不安定であれば、マイルストーンの間隔を短くとり、細かく状況をプロジェクト・チームで確認していきます。
一方で、プロジェクトに不安定さがない場合は、マイルストーンを長くとる方が、余計な会議や打ち合わせを省き、プロジェクト・メンバーの時間を節約することができます。

不正ができないように、確認する内容や進捗度を定める

マイルストーンを設けていても、それらが中間目標として意味をなさなければ意味がありません。
よくあるマイルストーンの失敗としては、せっかくマイルストーンを設置したのに、進捗がごまかされ、正確な状況が把握できなくなるというものが挙げられます。
例えば、とあるITプロジェクトで、7月10日がシステム開発の完了予定日なので、7月1日をマイルストーンにしたとします。その開発ベンダーが正直に7月1日に進捗を報告すればよいのですが、依頼者からおしかりを受けないように、進捗を事実以上によく報告してしまうことがあります。
そのベンダーの報告を鵜呑みにして安心しきっていると、完了予定日に結局完了せずに、プロジェクトが失敗に終わるということがあります。
こうしたトラブルを避けるため、マイルストーンで確認する内容を定め、進捗度を定義しておく必要があります。
例えば、「マイルストーンとした7月1日では、システムAの開発の進捗度が90%以上であることを確認する。進捗度90%とは、作業a・作業b・作業cが完了し、残り作業dを残す状態とする。作業a~cが完了した状態とは、依頼者側の確認も完了し、すべての修正作業が対応済みの状態をいう」というように、できるだけ詳細にマイルストーンとした日付に何を確認していくのかをあらかじめ定めていった方がよいでしょう。

マイルストーンの必要性とメリット

マイルストーンがあることのメリットは、プロジェクトが今どこの位置にいるか明確に把握できることです。
例えば、6月15日スタート・7月31日に土台Aと柱Bを結合して、終了するというプロジェクトがあるとします。
プロジェクト完了日やリソースから逆算すると、以下のスケジューリングでなければ、間に合わないことが判明します。

  • 7月1日に土台Aの作成完了
  • 7月15日に柱Bの作成が完了

この「7月1日に土台Aの作成完了」と「7月15日に柱Bの作成完了」が、このプロジェクトにおけるマイルストーンになります。
仮に「7月1日に土台Aの作成完了」ができていなければ、それはプロジェクトにおける遅延ということになります。
このように、マイルストーンがあることで、全体的に進んでいるのか、遅れているのかがわかり、プロジェクトの現在地が把握できます。
つまり、マイルストーンとはスケジュールにおける、区切りのポイントとも言うことができるでしょう。
システム開発の現場で言えば、「要件定義」「外部設計」「内部設計」「コーディング」「テスト」などが該当します。
こうした大きなプロジェクトの節目にマイルストーンを設置することで、プロジェクトの現在地を明確にし、予定していたスケジュールに対し、今の状況がどのようなものなのかを把握することができます。

マイルストーンが必要でない場合

先ほどはマイルストーンはなぜ必要なのかを解説していきましたが、ここからはマイルストーンが必要ない場面を紹介いたします。
マイルストーンを設置する必要のないプロジェクトは以下の通りです。

  • 短期間のプロジェクト
  • 単純なプロジェクト

短期間のプロジェクト

マイルストーンは、プロジェクトの現在地を把握するために設置をします。
よって、短期間で終了するプロジェクトや構造が単純なプロジェクトには、マイルストーンは必要ありません。
もちろん、マイルストーンを立てることはできますが、短いプロジェクトではあまり置く意味がありません。
極端な例ですが、仮に3日で終了するプロジェクトがあったとします。
この場合は毎日、約30%ずつ進めばよいだけですので、マイルストーンを設け、中間目標を設置することの意味はあまりありません。

構造が単純なプロジェクト

また、スケジュール管理が容易な単純なプロジェクトでもマイルストーンの設置は必要ではありません。
例えば、「簡単なイラストを1点描く」というプロジェクトであれば、わざわざマイルストーンを設けて、スケジュール管理をする必要もありません。
マイルストーンはWBSを作成するような、複数のタスクが絡み合って構成されているプロジェクトで必要なものであり、ゴールまでの道のりが明確なプロジェクトではあまりマイルストーンは設置されません。
このように、ゴールまでの距離が短すぎる、もしくは構造が単純なプロジェクトにはマイルストーンは不要となります。

まとめ

マイルストーンはプロジェクトにおける中間地点・中間目標を指しています。
長期的なプロジェクトや複雑なプロジェクトには、進捗を把握するためにマイルストーンは必要不可欠な存在です。
スケジュール管理のために、プロマネをはじめとするプロジェクト・チームはマイルストーンを意識することが大切です。
マイルストーンを設けることによって、現在の進捗と予定との差を把握できるため、スケジュールに深刻な問題をもたらす可能性を下げることができるからです。
マイルストーンはITプロジェクトに限らず、どの業界でも使われているプロジェクト管理手法です。
知識として知っているだけでも、心持ちが変わってくると思いますので、今回の記事を参考にしていただければと思います。

1Scott Berkun (著)、村上 雅章 (訳)『アート・オブ・プロジェクトマネジメント ―マイクロソフトで培われた実践手法』オライリー・ジャパン、2006年、45頁。