プロジェクトにおけるコミュニケーション技術の選定方法を解説

2020年5月3日

コミュニケーション技術とは

コミュニケーション技術とは、PMBOKの定義に沿うと「プロジェクト・ステークホルダーの間で情報を伝達するためのツール、システムやコンピューター・プログラム」のことを指します[1]PMBOK第6版、707頁
例えば、コミュニケーション技術には以下のようなものがあります。

  • 掲示板
  • 手紙
  • プレスリリース
  • 年次報告書
  • 電話
  • 会議
  • 電子メール
  • Webサイト

このようなコミュニケーション技術・手法の中から、情報の種類にあわせて適切なものを選ぶことも、プロジェクトを進めていく上では重要になります。

コミュニケーション技術の選定方法

プロジェクト中の情報交換・共有の機会

プロジェクトを進めていくと、様々な場面で情報を交換したり、共有したりしていきます。
人と人が顔を合わせる会話や会議もあれば、議事録などを文書として残して情報共有することもあります。
電子メールを使うこともあれば、最近ではプロジェクトを支援する様々なプロジェクトマネジメント情報システム(以下、PMISと略記)がありますので、これらを使っていくこともあります。

コミュニケーション技術の必要性

このように、コミュニケーションの機会というのはプロジェクト中に多々発生しますが、適切なコミュニケーション技術を選ばなければ、円滑なコミュニケーションがとれなくなってしまいます。
あるいは、情報セキュリティにも注意しなければ、使用したPMISから情報流出してしまうこともあります。
そのため、どのようなコミュニケーション技術をプロジェクトで使っていくのかというのは重要な議題であり、プロジェクト・マネジャーはじめ、プロジェクト・チームで十分に話し合っていかなければなりません

コミュニケーション技術の選定で考慮すべき要因

コミュニケーション技術の選定で考慮すべき要因は以下の通りです[2]PMBOK第6版、370~371頁。

  • 情報の緊急性・頻度・形式
  • 技術の可用性と信頼性
  • 利便性
  • プロジェクト環境
  • 情報の機微性と機密性

ここからは、これらの要因の内容を見ていきましょう。

情報の緊急性・頻度・形式

プロジェクトで流れる情報は、一つ一つに個性があり、同質なものはあまりありません。
例えば、オープン前のWebサイト制作のプロジェクトで流れてくる修正に関する情報はかなり緊急性の高い情報ですが、あるいは、修正依頼の情報であっても、プロジェクトの終盤であれば大慌てですが、プロジェクトの初期であればそこまで緊急性の高いものではありません。
このように、情報の緊急性や頻度というのは、情報によっても異なりますが、プロジェクトの段階によっても異なります
そのため、「プロジェクトの中盤までは情報共有サイトを使って、終盤になったら情報共有サイトに情報をアップしたら必ず電話をしよう」など、場面に応じたコミュニケーション技術の使用方法を考えていく必要があります。

技術の可用性と信頼性

技術の可用性や信頼性というと少し難しい気がしますが、JIS Q 27000の言葉を借りると、可用性というのは「安定して使えるかどうか?」、信頼性というのは「期待していた処理が期待通りに実行されるか?」を意味しています。

導入を検討しているコミュニケーション技術が「障害で使えない」という状態にたびたびなっていたら問題ですし、「よく入力した内容が間違っている」ということがあってもいけません。

利便性

せっかくコミュニケーション技術を導入しようとしているのに、その技術を導入したことによって利便性が下がってしまっては意味がありません。
しかし、悩ましいのは利便性というのがユーザーによっても異なるというところです。
例えば、プログラマー間での情報共有であればアトラシアンが提供しているJiraなどのツールはとても利便性が高いものかもしれませんが、これをシステムに詳しくないステークホルダーが使おうと思ったら、なかなか大変かもしれません。
導入しているコミュニケーション技術がトレーニングによって容易に習得できるのであれば、トレーニングも計画しなければならないですし、一部のステークホルダーにとって使用は難しいと判断された場合は、別の技術を模索することも考えなければなりません。

Jiraの画面
アトラシアンのJiraの画面

プロジェクト環境

プロジェクトの環境はコミュニケーション技術の選定に大きな影響を及ぼします。
同じ組織内のプロジェクトなのか、それとも遠隔地にいるクライアントと進めていくものなのかによって、コミュニケーション技術を選定基準が変わります。
また、一般公開されて進められているプロジェクトなのか、スカンクワークのように、一部の人が極秘にやっているプロジェクトなのかでも、コミュニケーション技術の選定に影響が出ます。

情報の機微性と機密性

情報の機微性とは、あまり他に知られたくない情報のことを指します。そして、情報の機密性とは、決められた人だけが対象の情報にアクセスできるようにすることをいいます。
つまり、その情報はどのくらい周りに対して秘密にされているか、そしてその情報はどのような人がアクセスできるのかというのがコミュニケーション技術の選択に影響を与えていきます。

1PMBOK第6版、707頁
2PMBOK第6版、370~371頁。