開発アプローチとライフサイクル・パフォーマンス領域について解説

2022年5月2日

プロジェクト・マネジャーとして、プロジェクトを成功させるためにはどこに注目したらよいのでしょうか?
プロジェクトマネジメントのガイドラインであるPMBOK第7版では、「プロジェクトの成果を効果的に提供するために不可欠な、関連する活動」をプロジェクト・パフォーマンス領域と呼び、以下の8つの領域に注目しています[1]PMBOK第7版「プロジェクトマネジメント知識体系ガイド」、7頁。

  • ステークホルダー
  • チーム
  • 開発アプローチとライフサイクル
  • 計画
  • プロジェクト作業
  • デリバリー
  • 測定
  • 不確かさ

プロジェクトは様々な要素が影響して成否が決まりますが、これら8点に注意をすることで、プロジェクトの成功率を大きく高めることができます。
今回は8つのパフォーマンス領域の1つである「開発アプローチとライフサイクル・パフォーマンス領域」について解説していきます。

今回のプロジェクトにぴったりの開発アプローチはどれか?

プロジェクトをどのような開発アプローチで進めていくかは大きな問題です。
昨今では未知のプロジェクトに対応するためアジャイル開発などの適応型アプローチの必要性が叫ばれています。しかし、アジャイル開発がどのプロジェクトでも高い成果を挙げるとは限らず、場合によってはウォーターフォール型開発に代表される予測型アプローチのほうが効果を上げられるということもあります。
それではプロジェクトに適した開発アプローチはどのように選べばよいのでしょうか?
今回はPMBOK第7版を参考に、開発アプローチの選び方を考えていきます。

開発アプローチとライフサイクル

まずは開発アプローチの種類とそのライフサイクルを確認していきましょう。ライフサイクルとは、プロジェクトが開始してから終結するまでの動きを意味するもので、開発アプローチによって異なります。

プロジェクトの開発アプローチは以下の3つの手法があります。

  • 予測型アプローチ
  • 適応型アプローチ
  • ハイブリッド・アプローチ

予測型アプローチとは、ウォーターフォール型(ウォーターフォール・モデル、ウォーターフォール・アプローチ)とも呼ばれる手法で、プロジェクト初期に作成した計画を重視してプロジェクトを進めていきます。
一方、アジャイル開発に代表される適応型アプローチでは、プロジェクトのビジョンを明確にし、そのビジョンを実現するために状況に応じてプロジェクトを進めていきます。
ハイブリッド・アプローチは予測型アプローチと適応型アプローチの要素を組み合わせながらプロジェクトを進めていく手法です。

これらの開発アプローチについては下記の記事で詳しく解説しているのでご参照ください。

開発アプローチを選択する際の考慮事項

開発アプローチは以下の3点を考慮して選択します。

  • プロダクト、サービスまたは所産
  • プロジェクト
  • 組織

ここからは、これら3点の内容を詳しく見ていきましょう。

プロダクト、サービスまたは所産

プロジェクトによって得ようとしているプロダクト、サービス、所産は採用する開発アプローチに大きな影響を与えます。
考慮すべき点は多々ありますが、例としてPMBOKでは以下の8点を挙げています。

  • イノベーションの度合い
  • 要求事項の確実性
  • スコープの安定性
  • 変更の容易さ
  • デリバリー・オプション
  • リスク
  • 安全要求事項
  • 規制

上記の8点はいずれもプロジェクトの不確実性に影響するものです。
イノベーションの度合いが高ければ、それだけ未知の領域に足を踏み入れることになるためプロジェクトの不確実性が高まります。また、要求事項の確実性やスコープの安定性が低くても、プロジェクトの不確実性は高くなります。

変更の容易さやデリバリー・オプション(納品の形態)、リスク、安全要求事項、規制なども、将来の見通しに影響し、プロジェクトの不確実性を左右します。

これらの点を分析し、プロジェクトの不確実性が低ければ予測型アプローチを、そうでなければハイブリッド型アプローチや適応型アプローチを採用します。

このように、プロジェクトの不確実性に注目して開発アプローチを選ぶ手法にステーシー・マトリックスというものがあります。こちらについては下記ページで解説していますので、ご参照ください。

プロジェクト

当然のことながら、プロジェクトも採りうる開発アプローチに影響します。
注目すべき点は、以下の3点です。

  • ステークホルダー
  • スケジュールの制約条件
  • 資金調達の可能性

不確実性が高いからといって、どのようなプロジェクトでも適応型アプローチが採用できるわけではありません。適応型アプローチではステークホルダーの協力が不可欠であるため、プロジェクトにあまり関与できないステークホルダーばかりのプロジェクトには適応型アプローチは不向きです。

また、スケジュールの制約条件が強く、完成品でなくとも成果物をステークホルダーに見せないといけないというプロジェクトでは適応型アプローチが望まれます。
これと同じように、資金調達の可能性があり、早期にMVP(実用最小限の製品)のリリースが求められている場合も、適応型アプローチが向いています。

組織

プロジェクト・チームが所属する組織もまた、開発アプローチに影響を与えます。
考慮する点は以下の4点です。

  • 組織構造
  • 文化
  • 組織能力
  • プロジェクト・チームの規模と場所

組織構造文化組織能力を見て、その組織が管理と指示が厳格な、いわゆる官僚組織であれば予測型アプローチが適しています。一方で、自己管理や自己組織化された組織では適応型アプローチが適しています。

また、プロジェクト・チームの規模が大きく、プロジェクト・メンバーが地理的にも分散している場合は予測型アプローチが適しているとされています。反対に、プロジェクト・チームの規模が小さく、プロジェクト・メンバーが一か所に集まっているような場合は、適応型アプローチが適しています。

以上のように、プロジェクトでどの開発アプローチを採用するかは、様々な事項を考慮して検討していきます。

開発アプローチとライフサイクル・パフォーマンス領域の成果をチェックする

PMBOK第7版によれば、開発アプローチとライフサイクル・パフォーマンス領域で実施した活動が効果を上げていると、以下のような成果が現れます[2]PMBOK第7版、50頁。

  • プロジェクト成果物と一致する開発アプローチ
  • プロジェクトの最初から最後まで、事業価値とステークホルダーへの価値を実現する複数のフェーズで構成されるプロジェクト・ライフサイクル
  • プロジェクト成果物の作成に必要な、デリバリー・ケイデンスと開発アプローチを促進するプロジェクト・ライフサイクルのフェーズ

つまり、以下のような問いをプロジェクト・チーム内で考えながら、開発アプローチとライフサイクル・パフォーマンス領域の効果をチェックしていきます。

  • プロジェクトに適した開発アプローチが選ばれているか?
  • プロジェクトは適切な完了基準が定められたフェーズに分けられているか?
  • 適切な納品のタイミングが定められているか?

1PMBOK第7版「プロジェクトマネジメント知識体系ガイド」、7頁。
2PMBOK第7版、50頁。