ここで社長がこないのはマナー違反!?プロマネに求められる政治スキルについて

2020年3月19日

プロマネは政治にも敏感でなければならない

プロジェクト・マネジャー(以下、プロマネと略記)には様々な役割や責任が担わされ、求められるスキルも広範囲にわたります。
プロマネに対人スキルが求められるのは言うまでもないですが、その中でも今回はプロマネの政治スキルについて少しお話ししていきたいと思います。

プロジェクト・マネージャ試験のユニークな問題を紹介

そもそもなぜ今回「政治スキル」という話を持ち出したかというと、IPAのプロジェクト・マネージャ試験(以下、PM試験と略記)に面白い問題があったからです。
少し抜粋してみましょう。

・ステアリングコミッティ
重要方針の意思決定が必要な時点で開催する。P社社長、Q部長及びS部長に出席してもらい、A社とP社で協議してきた重要事項について、R氏からP社社長に報告してもらう。
A社側からも[ a ]が出席することによって、意思決定の内容を最終合意する。

平成30年度春期PM試験午後Ⅰ問3より

A社はP社からCRMシステムの開発依頼を受けたベンダーで、A社でコミュニケーション・マネジメント計画を作成しているという場面です。両社の規模は同程度とします。
さて、[ a ]に入るのはどのような人物でしょうか。A社側のプロマネでしょうか。
答えはA社社長です。
正解したでしょうか?

無礼な進行をしないためにもプロマネは「位」に気を付けることも大切

先ほどのPM試験で、なぜA社社長が出席しなければならなかったのでしょうか。
理由は簡単で、P社社長が出席するのであれば、同等の「位」を持つA社社長が来なければ、相手に失礼になります。
逆に、両社の社長がでてきて会議を行い、そこで意思決定がなされれば、その決定は重い意味を持ち、後々「やっぱりやめた」「もう一度話し合いたい」というような手戻りが発生しにくくなります。
こうしたプロジェクトの政治的部分に気づけるか試すために、IPAも先ほどの問題を出したのだと思われます。

応用する場面は様々

こうした政治スキルの実践の場は多々あります。
例えば、あなたが先ほどのPM試験の問題にでてきたA社のプロマネであったとします。
プロジェクトが進行している間に自社の社長が旅行に行き、P社にお土産を買ってきたとします。
このお土産が「みなさまに」というものであれば、プロマネであるあなたがP社の担当者の人にお土産をお渡ししても粗相はないかと思われます。
しかし、これが「P社の社長に」というものであれば、プロマネであるあなたが渡してしまうと、「位」が異なり、人によっては失礼と感じてしまうかもしれません。
これはクライアントが来訪した時のお出迎えも同様で、クライアント側の社長が来ているのに、ただのスタッフだけで出迎えてしまうのはよくありません。
プロマネはこうした政治的な面にも気を配りながら、プロジェクト内外の応対をしていく必要があります。

プロマネの「政治力」もプロジェクトの成否を分ける

こうした「位」を気にするというのは、いかにも政治的でいやになることもあります。
しかし、こうした政治的な力がプロジェクトの成否を分けるということは疑いようのない事実です。
そしてこの政治面においても、プロマネはうまく組織をコントロールすることが求められています。
例えばPMBOKの中でもプロマネに求められるリーダーシップやマネジメントというスキルや資質に対して、「これらのスキルと資質の多くの根底にあるのは、政治的に対応する能力である[1]PMBOK第6版、62頁。」と断じています。
優れたプロマネになるには、優れた政治スキルを持っている必要があります。

政治スキルの身に着け方

こうした政治スキルは先天的なものであり、もともと備わった人しか使えないスキルのようにも思えます。
しかし、スキルである以上、政治スキルも意識して身に着けられないものではありません。ここからはどうやったら政治スキルを身に着けられるか考察していきます。
まず、政治スキルを構成しているものを考えていきましょう。
プロジェクトマネジメントで必要とされる政治スキルは大きく2つに分けられるように思われます。

  • 礼儀・マナー
  • 人間関係の理解と対処

政治スキルの大部分は、礼儀・マナーに通じているところがあります。
先ほどのPM試験の問題も、人によっては「P社社長が来るのだから、A社社長が来るのは マナー的に当然でしょ」と思われた方も多々いらっしゃるかと思います。
ここでいう礼儀・マナーとは、言葉遣いや作法という面だけでなく、公式マナー、いわゆるプロトコールに近いものです。
プロトコールとは、国と国、あるいは組織と組織の付き合い方のことです。こうしたプロトコールの知識は、プロジェクトマネジメントの力になるでしょう。
最近では「マナー・プロトコール検定」というものもあるので、こうしたところから勉強を進めてみるのもよいかもしれません。

マナー・プロトコール検定

次に人間関係の理解と対処については、PMBOKでいうプロジェクト・ステークホルダー・マネジメントの手法を使っていけばプロマネだけで悩むのではなく、チーム一丸となってプロジェクトの政治をコントロールすることができます。
例えば、ステークホルダー登録簿を作成し、プロジェクトのステークホルダーの人間関係を整理することで、文書を共有されたプロジェクト・チームもステークホルダーの状況が分かり、懸念事項の対策を採ることができます。
「政治スキル」というと、「口八丁手八丁」だけだと思われがちですが、プロトコールを理解し、プロジェクト・ステークホルダー・マネジメントを行うことで、十分に体得できるスキルだと言えるでしょう。

1PMBOK第6版、62頁。