GERTとは何か?PERTとは異なる見積り法を解説
GERTの概要
GERT(ガート)は「Graphic Evaluation and Review Technique」の略であり、システム開発における見積もり手法の1つです。
GERTはPMBOKで扱われる手法であり、見積もり手法の中でも「数理解析」と呼ばれる分類です。
GERT以外の数理解析には「PERT」や「CPM」があります。
数理解析の他には、「シミュレーション」と呼ばれるタイプの分類も存在します。
PMBOKの知識エリアでは「プロジェクトスケジュールマネジメント」に属します。
スケジュールマネジメントにおけるGERT
スケジュールマネジメントのプロセスは、以下の流れで進行します。
- マネジメントの計画
- アクティビティの定義
- アクティビティの順序設定
- アクティビティの期間見積もり
GERTはこの中で、アクティビティの順序を設定する際に扱われます。
GERTの前身「PERT」
GERTの元となった見積もり手法に「PERT」があります。
PERTはProgram Evaluation and Review Techniqueの略です。
見積もり手法PERTの特徴的な点に、「三点見積り法」と「PERT図の作成」があります。
三点見積り法
PERTは見積もりの工数を出す際、以下の3点をまず考えます。
- 楽観値…作業が順調に進行し、もっとも早く完了したときの値
- 標準値(最可能値、最頻値)…作業が通常の状態で進行した、もっともありえそうな値
- 悲観値…作業が最悪の状態で進行し、もっとも延長したときの値
そしてこの3点を使い、以下のような計算式で「期待値」を割り出します。
- 期待値=(標準値×4+楽観値+悲観値)÷6
このように標準値を重く扱い、期待値を算出することで、より現実的な見積もり工数を出すのがPERTの特徴です。
PERTや三点見積りについては、下記の記事もご参照ください。
PERT図の作成
PERT図は業務の流れをネットワーク図化したものです。
「工程」をボックス、「流れ」を矢印で図示することで、タスク全体の流れを見える化します。
工数や流れも踏まえて図示することで、プロジェクトメンバー全体がスケジュールに対する共通の認識を持ちやすくなります。
PERTとGERTの違い
PERTとGERTの大きな違いは、PERTは「図上のすべてのタスクを完了しなければならない」のに対し、GERTは「図上のタスクを1個完了すれば、プロジェクトが完成することがある」などの不確定要素を含んでいる点です。
GERTの特徴に以下のようなものがあります。
複数種類のノード
GERT図は、PERT図と比べてさらに多い種類のノードを使用できます。
ノードはそれぞれ「このパスのすべてのタスクを完了せねばならない」「このパスの一部でも完了できればよい」など区別がついており、より細かいニュアンスまで含めてアクティビティの流れを可視化できます。
確率変数を値に使ってよい
確率変数とは、「ある値をとる確率が存在する変数」を指します。
たとえば1~3の数字をランダムに排出するシステムは、結果が1になる場合、2になる場合、3になる場合という風に、「確率の付随した複数の値」が存在します。
GERTでも同じように、確実な値ではなく、確率変数を使用してよいことになっています。
フィードバックのためのループを入れてよい
PERT図ではループを作ってはならないという制限がありますが、GERT図ではパスをフィードバックするなどの目的でループを入れてよいことになっています。
一部のタスクが以降の作業の流れに影響を与えてよい
たとえばGERTでは、「このパスが完了した場合、以降のパスは作業しなくてよい」などの条件を含んだ分岐の表記が可能です。
これにより、PERT図よりさらに柔軟な図示が可能になります。