【マーケ初心者向け】お客さんの「一途な愛」は幻想かも?「ポリガマスロイヤルティ」を知って、現実的な戦略を立てよう!
「うちのブランドだけを、ずーっと愛用してくれるお客さんでいっぱいにしたい!」
マーケターなら誰でも一度は夢見ますよね。
ポイントカードを作ったり、会員限定の割引をしたり…こうした取り組みは、お客さんに「一途な愛」を誓ってもらうためのもの、と思っていませんか?
でも、もし多くのお客さんが、そもそも「一つのブランドだけを特別扱いするわけじゃない」としたら…?
もし、気分や状況に合わせて複数のブランドを使い分けるのが、お客さんにとってごく自然なことだとしたら…?
この記事では、そんなマーケティングの「常識」に新しい視点をくれる「ポリガマスロイヤルティ」という考え方について、どこよりも優しく解説します!
「ポリガマスロイヤルティ」って何?~お客さんは意外と「複数の推し」がいる!~
![[画像:「ポリガマスロイヤルティ」のイメージ。一人の消費者(例:女性)が、複数のブランドの化粧品やファッションアイテムに囲まれて、どれを使おうか楽しそうに悩んでいるイメージ。各ブランドに小さなハートが飛んでいる。]](https://ssaits.jp/promapedia/wp-content/uploads/2025/05/polygamous_loyalty-2-1024x576.png)
「ポリガマスロイヤルティ」…なんだか難しそうな言葉ですよね。
でも、大丈夫!簡単に言うと、「お客さんが、特定の商品ジャンルで、一つのブランドだけじゃなくて、いくつかの“お気に入りブランド”を持っていて、気分や状況で使い分けている状態」のことです。
「一途な愛」を誓う相手が一人だけじゃない、というイメージですね。
(ちなみに、一つのブランドだけを愛用し続けるのは「モノガマスロイヤルティ」と言います。まさに「一途な愛」です。)
身近な例で考えてみよう!
例えば、あなたが普段飲むコーヒーを思い出してください。
- 「朝は絶対A社のスッキリしたコーヒー!」
- 「仕事の合間には、B社のちょっと高級なインスタントコーヒーで一息」
- 「週末に友達と行くカフェは、雰囲気の良いC店」
こんな風に、いくつかの「お気に入り」をローテーションしていませんか?
これがまさに「ポリガマスロイヤルティ」です。
決してA社やB社、C店に不満があるわけではなく、その時々でベストな選択をしているだけ、ということが多いのです。
![[画像:一人の人が、冷蔵庫を開けると数種類の食材が入っていて、その日の気分で一つを選んでいるイメージ。]](https://ssaits.jp/promapedia/wp-content/uploads/2025/05/polygamous_loyalty-1-1024x576.png)
実は、専門家の調査でも、この「ポリガマスロイヤルティ」は、多くの商品ジャンルでごく当たり前の行動パターンだと分かっています。
お客さんは「浮気性」なのではなく、たくさんの選択肢の中から、自分にとって一番いいものを選んでいる、賢い消費者なのかもしれませんね。
なぜお客さんは、いろんなブランドを「つまみ食い」するの?
では、どうしてお客さんは一つのブランドに絞らず、複数のブランドを使い分けるのでしょうか?
いくつかの理由が考えられます。
「たまには違うものも試したい!」(バラエティ・シーキング)
人間って、新しいもの好きだったり、同じことの繰り返しにちょっと飽きちゃったりしますよね。これは、お菓子や飲み物、シャンプーなど、「今日はどれにしようかな~」と気軽に選べる商品でよく見られます。
「だって、その時々で欲しいものが違うんだもん!」(状況やニーズの変化)
お値段やキャンペーン
「あっちのお店で特売やってる!」「クーポンがあるから、今日はこっちのブランドにしてみよう」ということはよくありますよね。
手に入りやすさ
いつも使っているものが品切れだったり、そもそもそのお店に置いてなかったりしたら、別のお気に入りブランドを選びますよね?
ライフスタイルの変化
結婚したり、子供が生まれたり、健康を気にするようになったりすると、今までとは違う商品が魅力的に見えることもあります。
「ちょっと不満が…」「あっちの方が良さそう!」(商品体験や新しい情報)
今使っているものに「ちょっとここがな…」という不満があると、他のブランドを試すきっかけになります。
広告やSNSの口コミ、友達のおすすめなどで、「へえ、あのブランドも良さそう!」と新しい情報を知ることも、他のブランドを試してみる理由になります。
「いつものやつ」という安心感(習慣の力)
かといって、毎回まったく新しいものを選ぶのも疲れますよね。なので、お客さんはいくつかの「いつもの安心できるブランド(お気に入りリスト)」を作って、その中から気分で選ぶ、ということをよくします。
これらの理由を見ると、お客さんが複数のブランドを使い分けるのは、ごく自然で、むしろ賢い選択と言えそうです。
マーケターはどうすればいいの?「推しの一人」を目指そう!
「じゃあ、お客さんに一途になってもらうのは無理なの…?」とがっかりしたかもしれません。
でも、大丈夫!「ポリガマスロイヤルティ」の考え方を知れば、もっと現実的で効果的なマーケティング戦略が見えてきます。
まず大事なのは、マーケターの意識改革。「お客さんを自社ブランドだけで縛り付ける!」のではなく、「お客さんのお気に入りリスト(選択肢)の中にしっかり入れてもらい、その中で選ばれる有力候補であり続ける」ことを目指しましょう。
ライバル商品も使われるのは当たり前、という現実を受け入れることがスタートです。
思い出してもらいやすく!(メンタル・アベイラビリティを高める)
![[画像:人の頭の中に、有名ブランドのロゴは大きくはっきり浮かんでいるが、小さなブランドのロゴは小さくぼんやりしているイメージ。]](https://ssaits.jp/promapedia/wp-content/uploads/2025/05/Double-Jeopardy-2-1024x576.png)
お客さんが「〇〇が欲しいな」と思ったときに、あなたのブランド名やロゴがパッと頭に浮かぶように工夫しましょう。
- ブランドカラーやキャッチフレーズなどを統一して、覚えてもらいやすくする。
- 「暑い日には、うちの爽快ドリンク!」「疲れたときには、うちのご褒美スイーツ!」のように、「どんな時に」思い出してほしいかを明確にして、ブランドと結びつける。
買いやすく!(フィジカル・アベイラビリティを高める)
![[画像:コンビニの棚に有名ブランドの商品がたくさん並んでいて選びやすい様子と、小さなブランドの商品が隅に少しだけ置かれていて見つけにくい様子の対比。]](https://ssaits.jp/promapedia/wp-content/uploads/2025/05/Double-Jeopardy-3-1024x576.png)
せっかく思い出してもらっても、買いたいと思ったときに商品がなかったり、買いにくかったりしたら意味がありません。
- お客さんがよく行くお店やオンラインショップで、ちゃんと商品が売っているようにする。
- お店の棚で見つけやすい場所に置いてもらう。
- ネットなら、分かりやすいサイトデザイン、簡単な注文方法にする。
まずはたくさんの人に試してもらおう!(市場浸透率を上げる)
「ポリガマスロイヤルティ」が普通なら、一人のお客さんからたくさん買ってもらうことだけに注力するより、まずはたくさんの人に「一度試してもらう」ことの方が、ブランド全体の成長につながりやすい、ということが分かっています。
市場浸透率を上げるという考え方は、「ダブルジョパディの法則」という別のマーケティングの法則とも深く関係しています。
ダブルジョパディの法則については、下記の記事もチェックしてください。
ポイント制度なども見直してみる?
お客さんを「囲い込む」ためだけのポイント制度や会員割引は、もしかしたら「どうせ買ってくれるお客さん」に余計なコストを払っているだけかもしれません。
それよりも、新しいお客さんに試してもらうための費用や、もっと「思い出してもらいやすく、買いやすく」するための費用に予算を回した方が、効果的な場合もあります。
まとめ:「つまみ食い」されるのは当たり前!お客さんの「お気に入りリスト」入りを目指そう!
今回は、「ポリガマスロイヤルティ」という、ちょっと変わった名前のマーケティングの考え方を紹介しました。
ポイントをまとめると…
- 多くのお客さんは、一つの商品ジャンルで複数の「お気に入りブランド」を持っていて、気分や状況で使い分けている(これがポリガマスロイヤルティ!)。
- これは「浮気」ではなく、「賢い選択」とも言える自然な行動。
- マーケターは、お客さんを「一途なファン」にすることだけを目指すのではなく、「お気に入りリスト」に入れてもらい、その中で選ばれる存在になることを目指そう!
- そのためには、「思い出してもらいやすく(メンタル・アベイラビリティ)」、そして「買いやすく(フィジカル・アベイラビリティ)」することが超重要!
「完璧な愛」を求めるより、お客さんの生活の中に自然と入り込み、選ばれる理由をたくさん作っていく。そんな視点を持つと、マーケティングがもっと面白くなるかもしれませんね。
まずは、あなた自身が普段どんな風に商品を選んでいるか、振り返ってみることから始めてみてはいかがでしょうか?
参考
- 芹澤連『戦略ごっこ―マーケティング以前の問題』日経BP、2023年