UXとUXデザイン、何が違うの?初心者のための超わかりやすい解説ガイド
「UXデザインって最近よく聞くけど、そもそもUXって何?UXデザインと何が違うの?」
UXデザインの勉強を始めたばかりで、こんな疑問を持っていませんか?
多くの人は商品を選んだり、サービスを使ったりするとき、ただ機能だけで良し悪しを判断していません。
多くのユーザーは「使っていて気持ちいいか」「楽しい体験ができるか」をとても大切にしています。
実は、多くの人は商品を買う前から、使った後までの一連の「体験」すべてを大事にしています。
この記事では、そんな「UX(ユーザーエクスペリエンス)」と「UXデザイン」という、似ているようで実は違う2つの言葉について、どこよりもスッキリ解説します。
この記事を読めば、UXデザインの学びがもっと楽しくなるはずです。
UX(ユーザーエクスペリエンス)とは? ? あなたが「感じる」すべてのこと
まず、「UX(ユーザーエクスペリエンス)」から見ていきましょう。
UXの定義はさまざまありますが、UXデザインに関する名著『UXデザインの教科書』では、UXを「ユーザー体験:ユーザーの主観的なもの」「UX:体験そのものは、ユーザーの個人的なもの」と説明しています[1]安藤昌也『UXデザインの教科書』丸善出版、2016年、41頁。。
ちょっと難しく聞こえるかもしれませんが、ポイントは「主観的」「個人的」という言葉です。
つまり、UXとは、あなたが何か製品やサービスを使ったときに、あなた自身が心の中で感じる「キモチ」や「考えたこと」「印象」ぜんぶのことなんです。
![[画像:頭に「楽しい!」「使いやすい!」「うーん…」といった感情のフキダシが浮かんでいる人が、スマートフォンやパソコンを使っているイメージ]](https://ssaits.jp/promapedia/wp-content/uploads/2025/05/UX-UXdesign-2-1024x576.png)
例:ネットショップで新しいスニーカーを探す
例えば、あなたがネットショップで新しいスニーカーを探しているとします。
- サイトのデザインは見やすい?欲しい情報はすぐに見つかる?(見つけやすさ)
- 商品を探しているとき、ワクワクする?それとも情報が多すぎて困っちゃう?(感情)
- 購入ボタンを押すまでの手続きはスムーズ?途中で「めんどくさいな…」って思わなかった?(使いやすさ)
こうした一つひとつの「感じたこと」がすべて合わさって、あなたの「UX」になります。
これはネットショップだけに限りません。
例:カフェでのひととき
カフェでコーヒーを飲むときだって、UXがあります。
- お店の外観はおしゃれ?
- 店員さんの笑顔や言葉遣いは心地いい?
- コーヒーの香りや味は?カップは持ちやすい?
- お店の音楽や椅子の座り心地は?
これらもすべて、そのカフェであなたが経験するUXの一部です。
スターバックスがお店の雰囲気や居心地の良さにこだわっているのも、まさにこのUXを大切にしているからなんですね。
UXは使いやすさってこと?
ここまでお話しすると、「つまり、UXは使いやすさということなの?」と思う人もいるかもしれません。
もちろん「使いやすさ」も重要な要素ですが、UXは「使いやすさ(ユーザビリティ)」だけではありません。
「楽しい!」「うれしい!」「安心する!」といった良い気持ちも、逆に「イライラする…」「分かりにくい…」といったイヤな気持ちも、すべてUXに含まれます。
「気持ちよく使えて、便利で楽しい!」と感じる製品やサービスは、ユーザーにとって特別な価値があると言えます。
UXは使っている時だけではない
さらに、UXは製品やサービスを「使っている瞬間」だけのものではありません。
製品やサービスを使う前にも、使った後にも、ユーザーはさまざまな体験をしています。
- 広告を見て商品を知ったとき(使う前)
- お店やサイトで商品を選んでいるとき、買うとき(使っている最中)
- 買った後に使っているとき、何か困ってサポートセンターに電話したとき(使った後)
この一連の体験すべてがUXです。
UXがこんなにも「個人的」で「主観的」だからこそ、デザイナーは「ユーザーは本当は何を感じているんだろう?」と深く知ろうとします。
インタビューしたり、アンケートを取ったり、実際に使ってもらうテストをしたりするのは、そのためなんですね。
UXデザインとは? ? 「最高の体験」を計画してつくる技術
次に、「UXデザイン」について見ていきましょう。
『UXデザインの教科書』では、「UXデザイン」を「ユーザーと製品・サービスの間にあるデザインの実践」であり、「どんな体験をしてもらうか計画すること。計画した体験が量産・再生産される製品・サービスの仕組みをつくること」と説明しています[2]安藤昌也『UXデザインの教科書』丸善出版、2016年、41頁。。
ここでのポイントは、UXがユーザーの心の中で起こる「結果としての体験」だったのに対し、UXデザインは、その体験を意図的に良いものにするための「プロセス」や「活動」である、という点です。
簡単に言うと、「ユーザーが製品やサービスを使うときの体験全体を、より良くするために設計すること」ですね。
「計画すること」が重要
![[画像:設計図やたくさんの付箋が貼られたホワイトボードの前で、数人のチームが話し合いながら何かを設計しているイメージ]](https://ssaits.jp/promapedia/wp-content/uploads/2025/05/UX-UXdesign-3-1024x576.png)
先ほどのUXデザインの定義にも含まれている「計画すること」は、UXデザインにとって重要です。
UXデザインは、「たまたま良い体験が生まれたらラッキー!」ではなく、「こういう良い体験を届けよう!」と狙って良い体験を生み出し、それをたくさんの人に安定して提供するための設計活動です。
『UXデザインの教科書』の定義にある「量産・再生産される製品・サービスの仕組みをつくること」というのは、まさにこの「いつでも誰でも良い体験ができるようにする」ことの大切さを示しています。
UXデザインって、具体的に何をするの?
さらに詳しい話に入る前に、UXデザインでは具体的に何をするのかをまとめておきましょう。
- リサーチ: まず、ユーザーが何を求めているか、どんなことに困っているかを深く知ることからスタートします。(インタビュー、アンケートなど)
- 分析・定義: リサーチ結果から、ユーザーにとって本当に価値のある体験は何かを考え、明確にします。
- アイデア出し・設計: その体験を実現するためのアイデアを出し、具体的な形(画面デザイン、機能、情報構造など)に設計していきます。
- テスト・改善: 設計したものが本当にユーザーにとって良い体験を提供できるかテストし(ユーザビリティテストなど)、その結果をもとに何度も改善を繰り返します。
UXデザインの目的は、ユーザーがスムーズに目的を達成できるようにするだけではありません。
その過程で、「使いやすい!」「楽しい!」「また使いたい!」といった良い気持ちになってもらい、満足度を高めることも大きな目標です。
例えば、ネットショップのUXデザインなら、ただ商品が買えるだけでなく、「欲しい商品がすぐに見つかる!」「商品の情報が分かりやすい!」「迷わずスムーズに買えた!」といった体験を目指して、サイトの構成やデザインを考えます。
「検索から購入までがシンプルで分かりやすい」状態を目指すのが、ネットショップでのUXデザインです。
旅行アプリなら、目的地や予算だけでなく、「こんな旅がしたいな」というフワッとした気持ちからも、素敵な宿やアクティビティが見つかるような、新しい発見やワクワクを届ける機能を考えるのもUXデザインです。
UXとUXデザイン、決定的な違いはここ!スッキリまとめ
さて、UXとUXデザイン、それぞれの特徴が見えてきましたね。ここで、両者の決定的な違いをスッキリ整理しましょう!
UX(ユーザーエクスペリエンス)とは…
- ユーザーが製品やサービスを通して得る「結果」としての「体験そのもの」。
- ユーザーの心の中で起こる「気持ち」や「感じたこと」。
- 『UXデザインの教科書』の定義:「ユーザー体験:ユーザーの主観的なもの」「UX:体験そのものは、ユーザーの個人的なもの」
UXデザインとは…
- そのUXを意図的に良いものにするための「プロセス」であり「活動」。
- ユーザーに特定の良い体験をしてもらうための「計画」と「設計」。
- 『UXデザインの教科書』の定義:「UXデザイン:ユーザーと製品・サービスの間にあるデザインの実践」「どんな体験をしてもらうか計画すること。計画した体験が量産・再生産される製品・サービスの仕組みをつくること」
レストランでたとえると…
![[画像:レストランで食事をとる人と、それを見守るシェフ]](https://ssaits.jp/promapedia/wp-content/uploads/2025/05/UX-UXdesign-1-1024x576.png)
UXとUXデザインの違いを、レストランでの体験で考えてみましょう。
特徴 | UX(ユーザーエクスペリエンス) | UXデザイン |
---|---|---|
本質 | レストランで食事をして「美味しい!また来たい!」と感じる気持ちそのもの | 「美味しい!また来たい!」と感じてもらうために、メニューを考え、食材を選び、調理方法を決め、お店の雰囲気や接客を計画し、実行する活動ぜんぶ |
役割 | ユーザーが実際に感じること、得ること。「結果」「現象」 | ユーザーに良い体験を提供するための意図的な設計活動。「プロセス」「計画」 |
注目点 | ユーザーの感情、思ったこと、反応 | ユーザーの求めていること、目標、行動を理解し、それに応える解決策を作ること 1 |
時間軸 | 過去~現在(体験した後、または体験している最中) | 未来(これからユーザーが体験するであろうことを予測し、設計する) |
この表で、UXがユーザーの「結果としての体験」で、UXデザインがその体験を良くするための「計画と実行」であることが、よりハッキリしたのではないでしょうか。
UXデザインは、一度作って終わりではありません。
実際に使ったユーザーの声を聞きながら、テストと改善を繰り返していくことが大切です。 なぜなら、どんなに素晴らしい計画を立てても、ユーザーの気持ちや状況は様々だからです。
UXデザインは、より良い体験が生まれる「可能性を高める」ための努力であり続けるのです。
なぜUXデザインがこんなに大切なの?
UXとUXデザインの違いが分かったところで、最後に「なぜUXデザインがこんなに重要なのか」を簡単に見ていきましょう。
- ストレスなく、スムーズに使える!: 分かりやすいデザインのアプリやウェブサイトは、私たちのイライラを減らし、やりたいことを素早く達成させてくれます。
- 使うのが楽しくなる!: ただ便利なだけでなく、「使っていて楽しい」「心地よい」といった良い気持ちは、生活の質を上げてくれます。
- 選ばれる理由になる!: 機能や価格だけでは差がつきにくい今、「あの商品は使いやすい」「あのサービスは体験が良い」という評判は、強力な武器になります。
- お客さんがファンになる!: 良い体験は満足度を高め、リピーターを増やし、口コミで新しいお客さんを呼んでくれます。これは、会社の売上アップに繋がります。
- 新しいチャンスを生み出すことも!: ユーザー自身も気づいていない「こんなのが欲しかった!」を見つけ出し、新しい体験を提供することで、新しい市場を作り出す力もUXデザインにはあります。
つまり、UXデザインは、見た目をキレイにするだけでなく、ユーザーにとってもビジネスにとっても、本質的な価値を生み出す大切な活動なのです。
まとめ ? UXとUXデザインを理解して、学びの次の一歩へ!
今回は、「UX(ユーザーエクスペリエンス)」と「UXデザイン」の違いについて、できるだけ分かりやすく解説しました。
- UX は、ユーザーが製品やサービスから得る、個人的な「体験そのもの」(結果)。
- UXデザイン は、その体験を良くするために、計画し、設計する「活動」(プロセス)。
この違いをしっかり理解することは、UXデザイン学習の最初の、そしてとても大事な土台になります。
この土台があれば、これから学ぶUXリサーチ、情報設計、プロトタイピング、ユーザビリティテストといった専門的な内容も、きっとスムーズに理解できるようになるでしょう。
ぜひ、今日から身の回りの製品やサービスの「UX」を意識してみてください。「これは使いやすいな、なぜだろう?」「このアプリ、なんだかワクワクするけど、どんな工夫があるのかな?」そんな風に考えることが、UXデザイナーへの第一歩です!
参考
- 安藤昌也『UXデザインの教科書』丸善出版、2016年