新人プロジェクト・メンバーの技術力不足・力量不足による問題の予兆

2020年3月8日

十分な技術力・力量を持たないメンバーを加える場合

プロジェクトによっては経験のあるスタッフを確保できないため、あるいは新人教育の観点から、新人のスタッフをプロジェクトに参画させることがあります。
このような状況の中でもプロジェクト・マネジャー(以下、プロマネと略記)はプロジェクトを成功に導いていかなければなりません。
新人が対応するが故に、スケジュール遅延や成果物の質が低くなってしまうということもありがちな話ですが、今回はこうした問題の予兆と対応方法を考えていきます。

問題の予兆

プロジェクト・メンバーの技術力・力量不足の予兆はどこに現れるのでしょうか。
例えばIPAのプロジェクトマネージャ試験(以下、PM試験)ではプロジェクト・メンバーの力量不足による問題の兆候として以下の項目を挙げています[1] … Continue reading

  • 要件に対する質問への回答の遅れ日数
  • 要件定義の変更回数
  • 設計レビューの指摘件数

こうしてみると、プロジェクト・メンバーの力量不足は「時間の遅れ」「変更・修正回数」などに見られるように思われます。
「時間の遅れ」に関しては、そのメンバーが担当しているタスクに対応できる力量・技術力を持っていないことを示しています。
新人プログラマーが依頼されている内容を開発できずに悩んでいたり、新人ディレクターが求められている資料を作成できずにいたりするかもしれません。
こうした兆候はタスク完了日の延期の依頼や、何かを質問した時の回答までの時間、残業時間など様々な面でうかがうことができます。
一方で、「変更・修正回数」からは、そのメンバーが他のプロジェクト・チームやステークホルダーを満足させるほどの質で対応できていないことが分かります。
つまり、「趣味なら合格であるけれども、仕事としては不合格」というレベルであるということです。
成果物のクオリティが低いと、修正回数や変更回数が多くなっていきます。
「気づくといつも同じ部分を修正している」「クライアントからの変更依頼が続いている」という相談をされたというのは、そのメンバーの仕事の質が十分ではないことを表しているのかもしれません。

プロマネはどのように対応すべきか?

このような問題の予兆を察知した際、プロマネはどのような対応を採るべきでしょうか。
1つ目は当のプロジェクト・メンバーとコミュニケーションをとることです。例えば進捗に遅れがでている新人プログラマーと面談し、進捗遅れの状況を詳しく聞くなど、まずはどのような状況にあるのかを整理していきます。

2つ目は代替メンバーになりうる存在にあらかじめ声をかけておき、問題の予兆がではじめたら相談する体制を整えておくことです。
先ほどの新人プログラマーの例であれば、他のベテランプログラマーにあらかじめヘルプの声をかけておき、問題の予兆がではじめたら、ベテランプログラマーに相談しに行ける体制を築いておきます。
そのベテランプログラマーにも他の仕事があることが予想されるので、「コードレビューだけお願いする」「新人がつまった時の質問対応をお願いする」など、対応の範囲を制限して、実現可能なプランを提示するとよいでしょう。
技術力・力量不足の問題の多くは、先輩スタッフや経験のあるメンバーの助言で解決することが多いです。そのため、新人メンバーの相談先をあらかじめ確保しておきましょう。

プロマネの3つ目の対応はメンバー変更を行う判断軸を用意しておくことです。社内プロジェクトであっても、クライアントワークであっても、プロジェクトの失敗を新人メンバーの責任にすることはできません。周りの助言やサポートがあっても、まだまだ担当できる技術力・力量を持っていないと判断したなら、急いで代わりのメンバーを見つけなければなりません。
一方で、技術力不足だからと言ってなんでもかんでも他のスタッフにお願いしてしまっては、そのメンバーの技術力・力量が上がっていきません。また、メンバー変更はスケジュールや予算・見積りに与える影響が大きいため、できることであれば採りたくない対応でもあります。
そのため、「XX日までにこの成果物が完了しなかったらメンバー交代をする」「あと2回要件定義で変更がでたら、このタスクについては△△さんに代わってもらう」というような線引きを行い、当の新人メンバーにはもちろんのこと、プロジェクト・チームやステークホルダーに説明をしておくとよいでしょう。

1平成15年度春期PM試験午後Ⅱ問3の問題文より。なお引用元の問題文には掲載した項目に加えて「兼任している要員の作業負荷」という項目も続けられているが、これについてはプロジェクト・メンバーの参加が確定していないことによる問題の兆候であるため割愛した。