目標管理制度(MBO) とは何か?そのメリットとデメリットとは?

2021年9月22日

目標管理制度(MBO)の概要

目標管理制度(MBO)とは個人ごとに目標を設定し、それに対する達成度合いで評価を決める組織マネジメント手法です。このMBOのアイデアは1950年代にアメリカの著名な経営学者ドラッカーによって提唱されました。

MBOではスタッフ自身に目標を設定させ、自発的な行動を促していきます。その結果、モチベーションを高める効果もあるといわれています。

今回はこのMBOの運用手順とメリット・デメリット、そしてどのような業種に適しているのかを考えていきましょう。

目標管理制度(MBO)の運用手順

まずはMBOの運用手順について見ていきましょう。

MBOでは通常、期初に上司が部下に対して組織の目標を説明し、部下はそれを理解したうえで、組織の目標に対して自分がどのように貢献できるかを考え、それを個人の具体的な達成目標に落とし込みます

これが適正かどうかを上司と相談したうえで、目標の内容を文書(目標管理シート)に記入します。

そして期末に部下は自己評価し、上司や人事担当者が目標達成度を判定して、次年度以降の処遇や給与に反映させます。

目標管理制度(MBO)のメリット

こうしたMBOを用いることによって、上司の一方的な指示・命令ではなく、部下が自ら目標を設定し、自分のものとして受け入れることで、モチベーションが高まります。さらに目標に向かって日々行動することで、個人としてのパフォーマンスが高まることが期待できます。

個人が設定する目標は会社全体の目標とリンクしているため、個人が目標達成に向けてパフォーマンスを上げることは、部門や会社全体の目標達成につながります。

また、個人の実力より少しだけ上の、創意工夫を行えば達成できる程度の目標を設定することで、個人の成長を促すことも期待できます。

さらに、評価を受けるにあたって、自らが受け入れた目標に対する客観的な達成度が評価として示されるので、評価の納得性が高まります。

目標管理制度(MBO)のデメリット

しかしMBOも万能ではありません。MBOのデメリットもしっかりと把握しておきましょう。

MBOのデメリットとして第一にあげられるのが、目標を設定された個人が目標達成にこだわるあまり、個人プレーに走り、組織全体の業績を上げるための協調的な行動をしなくなることです。たとえば、自らの持つノウハウを周囲とシェアしようとはせず、後輩への指導、育成を軽視しがちになるといったことです。

第二に、人事考課の判断材料として用いられるただのノルマ管理ツールのひとつとなってしまう恐れがあります。人事考課の納得性を高めるというMBOのメリットが、評価する側の都合だけで使われるということです。

第三に、日常業務遂行以上のチャレンジングな目標設定が強制されることにより、不要な仕事が作り出されてしまうことがありえます。
組織の目標と整合するように、個人の目標は設定されなければならないのですが、個人の目標設定が過度に優先されるとこうなります。
目標を設定した個人だけでなく、周囲の人員をその仕事に巻き込むことによって、組織の生産性が下がってしまいかねません。人事、総務、経理などルーチンが業務の大部分を占める部署で無理やりMBOを導入しようとする場合、経営者が地道な業務遂行を軽視して、やたらと社員の「チャレンジ」を煽る場合に発生してしまう問題です。

目標管理制度(MBO)導入に適した/適さない業務・組織

MBOでは目標に達しなければ評価が低くなり、目標を上回った成果を挙げれば評価が高くなるので、実績主義や成果主義の人事評価を行う組織でよく用いられます。

たとえば、機能的な専門家から構成される組織のマネジメントにとってMBOは適した制度だと言えます。

専門家たちを放っておくと、各自が勝手な行動をとって、組織がバラバラになってしまいます。そこで、目標管理を通じて組織の目標を作り、その目標に向かって専門家たちの行動を統合させていく働きが期待されます。

このほかには、業務遂行の結果が、プレーヤー、つまりは目標を設定した個人ごとの数字となって現れる業務に目標管理制度がマッチしていると言えます。

複数プロダクトを複数チャネルで向けて販売する営業部門で、チーム営業ではなく、営業マンが個人として顧客にアプローチするような業務は、MBOが有効と言える典型的な例です。

一方、営業部門であっても、個人で営業活動するのではなく、チームとして行動する組織においては、よほど注意深く個人の目標を設定しないとチームプレーを阻害することになります。

営業プロセスにおける活動の成果(たとえば、顧客のキーパーソンと親密な関係を築く、新入社員を一人で顧客の前に立たせるよう教育するといったこと)も目標に加える必要がありますが、これらは、その成果を定量的に測ることが難しいため、そもそもMBOには向いていないとも言えます

また、ルーチン処理を日々地道に繰り返す業務では、「単位時間あたりの処理件数を増やす」「ミスを一定数以下にする」といった、目標として設定するまでもない評価基準が組織内で共有されているので、MBOを導入するまでもありません。

まとめ

日本では、経済が低成長になった1990年代の後半ごろから、成果主義人事制度が一斉に普及し、それを運用するために目標管理制度(MBO)を採用する企業が増えました。成功した企業がある一方、うまくいかずに廃止した企業もあります。

MBOが日本企業にとって良かったのかどうかの評価は定まっていませんが、時流に乗って導入するのではなく、業務の内容、および、組織の風土(社員の日頃の行動様式、考え方など)をよく吟味したうえで、導入すべきであることは確かです。