ウィリアム・ブリッジスのトランジション・モデルとは何か?3つの段階について解説

2022年4月27日

ウィリアム・ブリッジスのトランジション・モデルの概要

トランジションとは「転機」「転換点」「移行期」などを意味する言葉であり、アメリカの人材系コンサルタントのウィリアム・ブリッジスが過去30年以上に渡って「変化」に適切に対応していく理論として「トランジション・モデル」を提唱しています。
発達心理学をベースにしたキャリアカウンセリング理論として、人々が人生で遭遇する出来事や直面する課題は、ある段階に応じて共通点があり、直面した課題を乗り越えていくことで次のステージ(段階)に進めることができるとされています。

ウィリアム・ブリッジスが提唱する「トランジション」を分かりやすく表現すると「過渡期」のことを示しています。
例として仕事を転職する際の転職活動が該当し、現在の会社を離れようと思い始め転職活動を行い、別の会社で採用が決まって働き出すまでの期間が該当します。転職活動の多くは、会社を離れるべきか留まるべきかと悩む時期があり、変化を求める一方で変化を恐れる心理が働く期間でもあります。現在の自分と新しい自分との間に挟まれた中途半端な時期を含む過渡期をどう乗り越えていくか体系的に定めた理論が「トランジション・モデル」です。

全てのトランジションは、何かが終わる(もしくは終わろうとする)ところから始まります。
新しいことを始めるためには、以前の古いことを終わらせる必要があり、新しいことと古いことの過渡期の時期を一種の猶予期間と捉え、自分自身を客観的な視点から見つめ直し整理することで新しい一歩を踏み出せます。
ウィリアム・ブリッジスはトランジションには3つの段階があり、それぞれの段階を乗り越えていく方法について提唱しています。

トランジションの3つの段階

ここからはトランジションの3つの段階について解説していきます。

第1段階・・・終焉(何かが終わるとき)

第1段階の終焉(何かが終わるとき)は変化が始まる段階です。
進学、就職、結婚、異動、転職と何かが終わるとき、自分の意思で終わらせられる場合と、自分が望まない状態で外部や他者の影響により強制的に終了する場合があります。
強制的な終了や自分の意思による終了であっても、これまでの日常から変化があることは心理的に負担が伴います。たとえ自分が望まない終わりだとしても、新しい自分を見つける良い機会であると前向きに考え、過去との決別を行う必要があります。「これまでの何かが終わった」といったことを真摯に受け止め、気持ちの切り替えを行うことが大切です。

第2段階・・・中立圏(ニュートラル・ゾーン)

第2段階の中立圏(ニュートラル・ゾーン)では、何かの終わりに伴う様々な喪失感(空虚感)を感じる段階となります。終わりと始まりの間にある空白の期間であり、感じ方次第ではただ立ち止まっているだけに思えることもありますが、気持ちを整理する上で必要な期間となります。新しいことへの基礎を準備していく時期でもあり、終わりから始まりへ進むためのステップとして重要な時期です。
ウィリアム・ブリッジスは、この中立圏(ニュートラル・ゾーン)を乗り切るための具体的な対策を6つ提示しています。

一人になれる特定の時間と場所を確保する

落ち着ける静かなカフェで休む、普段と違った場所で心穏やかに過ごすなど、これまでの日常から一時的に離れた場所で一人になれる環境に身を置きます。周りからの雑念を遮断することで、自分の心の中にある気持ちと向き合う時間を確保します。

中立圏(ニュートラル・ゾーン)の記録を付ける

中立圏(ニュートラル・ゾーン)における自分自身の気持ちや思いを記録に残していきます。漠然とした内容を羅列することになるかもしれませんが、気持ちの整理を行う上で見える化を行うことで自分と向き合うことができるようになります。

自叙伝を書いてみる

自分自身のこれまで生きてきた歩みを書き出すことで、これからどう生きていくべきかが見えてくることもあります。過去を振り返ることで自分が選んできた人生において、何を重要視しているかを整理することができます。

本当にやりたいことを考える

人は生まれた頃から一人では生きてはいけず、成長する過程で周りや置かれた環境から様々な影響を受けています。親や兄弟、友人や社会環境の影響から価値観が固定化してしまい、自分自身の思いや欲求が隠れてしまうこともあります。これまでの日常から離れ、固定概念や周りからの影響を遮断し、「本当の自分は何がしたいのか」を問い掛けてみましょう。

自分が今死んだ場合の心残りを考える

もし今死んだら心残りは何かということを考え、「死亡記事」を書き出してみます。
自己分析として生年月日、両親、兄弟、学歴、所属、賞、趣味を書き出し、自分の人生を振り返ってみて「〇〇をやらなかったことが心残りだったと言っていた」と最後の言葉を書いてみます。死亡記事を書くことで、やらなかった(やりたかったができなかった)ことを客観的に見つめ直すことができます。

通過儀礼を体験する

「通過儀礼」とは生涯における儀式のことを指します。人が生まれてから一生を終えるまでに迎える成人、就職、結婚、死去までのそれぞれのステップで行われる儀式や儀礼、行事のことを言います。入社式や結婚式といった、新たな始まりに踏み出すための制度化されたものとなり、新たな人生を歩みだすための重要なものです。
そのため、現在自分が直面している変化を乗り越えるために自分なりの通過儀礼をあえて体験してみるのも有効です。例えば、数日間仕事や家族から離れて一人旅を行うのも通過儀礼となります。できるだけ何も持たず質素な生活を送り、滞在中に感じたこと、考えたことを記録に残すこと以外無理をする必要はありません。心のままに行動し自分自身の気持ちと素直に向き合います。ウィリアム・ブリッジスは「空虚への旅であり、感受性を培うための時間」と定めており、自分自身と向き合い新たな視点で物事を見ることで第3段階へと繋がるとしています。

第3段階・・・開始(何かが始まるとき)

第3段階の開始(何かが始まるとき)の段階では、新たな始まりに対して内的な抵抗が生まれることもあります。安全で慣れ親しんだ環境が壊れてしまうかもしれないといった恐怖心や周囲の反対といった外的な抵抗も少なからず発生します。何かが始まるときは、このような内的、外的な面での抵抗が起きることを理解しておき、適切に対応することが重要です。

参考