割引キャッシュフロー分析とは何か?DCF法とも呼ばれる分析手法を解説

2022年1月17日

割引キャッシュフロー分析の概要

割引キャッシュフロー分析は、将来生み出すと予想されるフリーキャッシュフローで推計し、資本コストで割り引いて企業の評価額を算出する企業評価方法の1つで、DCF法(Discount Cash Flow)とも言われます。

一般的に、回収金額を現在価値に換算した金額が初期投資額を上回っていれば、初期投資額を回収できると判断できます。

割引キャッシュフロー分析は以下の流れで算出可能です。

  • フリーキャッシュフローを算出
  • 割引率を算出
  • ターミナルバリューを設定
  • 現在価値を割り引き企業価値を算出

フリーキャッシュフローを算出

フリーキャッシュフロー(FCF)とは、政府への税金の支払いと事業に対する投資を行った上で、債権者と株主に分配可能なキャッシュフローです。企業が自由に使えるお金になります。

計算式にすると以下の通りです。

  • フリーキャッシュフロー = 営業利益 × (1-法人税率) + 減価償却費 - 運転資本増加額 - 設備投資額

万が一、フリーキャッシュフローがマイナスになっている場合は、企業を存続させるために銀行借り入れ・第三者割当増資・資産売却などの資金調達が必要になります。

ただし、フリーキャッシュフローは設備投資などで多額が発生すると、どんな企業でも一時的にマイナスの年が発生するものです。そのため、割引キャッシュフロー分析で企業評価を行う際には、数年分のフリーキャッシュフローを用います。

割引率を算出

割引キャッシュフロー分析では、キャッシュフローを現在価値で割り引く考え方に基づくため、事業計画書の将来計画で出した数字から算出したフリーキャッシュフローを割り引き、現在価値に算出し直すことが必要です。

割引キャッシュフロー分析の割引率は、一般的に加重平均資本コスト(WACC)を用います。

加重平均資本コストは、資金調達による借入の資金コストと増資の資金コストを加重平均したコストです。加重平均資本コストの算出における借入の資金コストの比率と増資の資金コストの比率は、時価を基準にします。計算式は以下の通りです。

  • 加重平均資本コスト = 負債総額 ÷ (負債総額+株式の時価総額)×(1-実効税率)× 負債コスト + 時価総額 ÷ (時価総額+有利子負債) × 株主資本コスト

ターミナルバリューを設定

ターミナルバリューとは、毎年の事業計画の最終年度以降に生じるフリーキャッシュフローの現在価値の合計を指します。計算式は以下の通りです。

  • ターミナルバリュー = 最終年度以降のフリーキャッシュフロー ÷ (割引率-永久成長率)

永久成長率の設定には、インフレ率・GDP成長率・過去の企業成長率を使用することが多いです。

現在価値を割り引き企業価値を算出

上記の手順から、各期のフリーキャッシュフローを割引率を使用して現在価値を算出し、現在価値のフリーキャッシュフローとターミナルバリューを合算することで、割引キャッシュフロー分析による企業価値を算出できます。

割引キャッシュフロー分析の特徴

割引キャッシュフロー分析は、企業の見えない資産価値(のれん)や将来への期待を反映する評価方法として合理的と言われています。特に、大手企業のM&Aでよく用いられる手法です。

企業が生み出すフリーキャッシュフローを算出できるため、買収する側の企業は具体的な金額で買収メリットを確認できます。

一方で、割引キャッシュフロー分析は将来の予想収益をもとに評価するので、企業の将来の事業計画が必要不可欠です。また、事業計画の精度や信頼性、安定性などが企業価値に影響することになります。

そのため、企業の事業計画の精度や信頼性が低いものになっていると、割引キャッシュフロー分析によって算出できる企業価値が大きく変動するリスクが高いです。

参考