多基準意思決定分析とは何か?調達の際に使用する多面的な評価

2020年7月1日

多基準意思決定分析とは

多基準意思決定分析とは、さまざまな評価項目で複数の案を評価していき、最適な案を決定するために使われる分析手法です。
多基準意思決定分析では、複数の基準をそのままの尺度で評価することができます。例えば関連効果や量的効果、質的効果、貨幣的効果、非貨幣的効果などを同時に考慮することができる手法として、さまざまなシーンに活用される分析方法です。
ビジネスで意思決定を支援する分析手法として、ROIなどを指標とする費用便益分析があります。ROIは投資額に対してどのようなリターンが得られるのかという経済的側面だけを判断の軸にしていますが、このような単一の指標だけでは判断がつきにくい事柄もあります。
そのような時に多基準意思決定分析を使用すれば、様々な角度から意思決定を行うことができます。
とくに経済的な効果の判断が難しい非市場財の存在の分析や評価で多基準意思決定分析の重要性が注目視されるようになってきました。

プロジェクトで多基準意思決定分析が使われる場面

発注先選定分析の画像

プロジェクトで多基準意思決定分析が使用される場面は、調達活動において納入業者を選ぶ時です。
ITシステムを導入するプロジェクトであれば、システム開発を行う業者(ベンダー)の選定の際に多基準意思決定分析が使用されます。
例えば、ベンダーを選定する際に、その金額だけを判断軸にすると、開発する力量のない会社を選んでしまったり、要件を正確に把握していない会社を選んでしまい、プロジェクト失敗の原因を作ってしまう可能性がでてきます。
プロジェクト失敗の原因を未然につむために、開発金額だけでなく、実績や要件の理解、財務状況など、多基準意思決定分析で多面的な評価を行い、決断を下す必要があります。
調達活動の際に作成する発注先選定分析は多基準意思決定分析の最たる例と言えるでしょう。

多基準意思決定分析の必要性

ここからは改めて多基準意思決定分析の必要性について解説していきます。

システム導入の効果を多面的に評価できる

多基準意思決定分析の利点は、さまざまな情報のもと、多面的にものごとを判断できることです。
多基準意思決定分析で基準となるものは様々で、関連効果、量的効果、質的効果、貨幣的効果、非貨幣的効果などを同時に考慮することができます。
そのため、統合的に判断することができる分析方法であり、より正確な評価を下すことができます。

最適な案を選ぶことができる

IT業界では、どのようなシステムを導入すべきなのか、どのプロジェクトを推進していくべきなのかという意思決定に迫られます。
多基準意思決定分析では、評価項目別に得点を計算してランク付けをしていきます。
そのため、どの案が最も高い効果を発揮するのかを見極めるのに適している分析方法です。

プロジェクト・メンバーの合意が得られやすい

複数の案が出たときに、決裁者の自己判断で採択してしまうと、異なる意見のプロジェクトメンバーから反感を買ってしまう恐れもあります。
しかし、多基準意思決定では、さまざまな観点から、どの案を採択すべきなのか客観的に判断していくため、意見が異なるプロジェクトメンバーでも合意が得られやすくなるでしょう。

多基準意思決定分析の利用方法

多基準意思決定分析は、次のような手順で利用します。

  1. 意思決定の方法を決める
  2. 評価対象となる案を列挙する
  3. 目標と評価項目を決める
  4. 評価項目に点数を付けて選定する

ここからはこれらの手順について解説していきます。

意思決定の方法を決める

多基準意思決定分析を行う際は、「なぜ、多基準意思決定分析を実施するのか」「最終意思決定者は誰か」「選定する際の優先順位は何か」など、プロジェクトメンバー間で統一した見解を持つことが必要です。

  • 例:システム導入を検討する際は、導入目的を明確にしておく。また、システム導入の最終決裁者は誰になるのかも定める。このような情報を共有した上で、分析を行っていく。

評価対象となる案を列挙する

客観的に判断するため、複数の案を選別して列挙していきます。

  • 例:システム導入をする場合は、導入を検討しているシステムを列挙していく。

目標と評価項目を決める

それぞれの案の効果を正しく評価するために、評価項目を決めていきます。評価項目は、適度に少ないことが望ましいとされており、6~20項目を定めるのが一般的です。

  • 例:システム導入の検討時には「提案費用」「業務要件」「データ要件」「技術要件」「機能性」「操作性」「保守性」「実績」「提案能力」「導入までの納期」「運営会社の業績」などが評価項目として挙げられる。

評価項目に点数を付けて選定する

各案に対して、評価項目ごとに点数を付けていきます。総合評価値をもとに最も望ましいとされる案を選定します。

  • 例:各評価項目の点数を集計した結果、スコアが高いシステムを導入する。