教訓リポジトリとは何か?
教訓リポジトリとは
教訓リポジトリとは、プロジェクトから得られた教訓の保存先のことを意味します。 英語名が“Lessons Learned Repositories"であることから、海外ではLLRと略されることもあります。
教訓とは 「成功したプロジェクトでどのように取り組んだか」「失敗したプロジェクトではどのようにすべきだったか」 というような、今後のプロジェクトのパフォーマンス向上のために活用される知識のことです。
また、リポジトリ(repository)とは「貯蔵庫」、「収蔵庫」を意味するので、教訓リポジトリは「教訓の貯蔵庫」と言い換えることができるかもしれません。
あくまで教訓が集められたデータ集・データベースであればよいため、Microsoft社のWordやExcelで情報を集めて保存する方法でも、社内ブログで共有する方法でもよいでしょう。
教訓リポジトリはなぜ必要か?
教訓レポジトリはなぜ必要なのでしょうか?教訓レポジトリの目的は主に以下の3つに分けられます。
- ノウハウの蓄積
- プロジェクトの継続的改善
- 教育
ノウハウの蓄積
教訓レポジトリの最大の目的はノウハウの蓄積にあるといっても過言ではないでしょう。
たとえ優秀なプロジェクト・マネジャー(以下、プロマネと略記)やテクニカルディレクターがいたとしても、彼らがいつ組織を離れてしまうかわかりません。
「○○さんがいた時はできていたのに、退職したあとはできなくなってしまった」というトラブルが無いように、個人の知識を組織の知識にしていかなくてはなりません。
その組織の力を蓄えるのに役に立つのが教訓リポジトリです。
プロジェクトの継続的改善
教訓リポジトリに蓄積された情報は、プロジェクトの継続的改善を可能にすることができます。
上述の通り、教訓リポジトリには 「成功したプロジェクトでどのように取り組んだか」「失敗したプロジェクトではどのようにすべきだったか」という情報が集められるため、プロジェクトの成功率を高め、生み出すプロダクトの品質を高めることも期待されます。
教育
蓄積された教訓は、新人のプロマネの教育にも使用することができます。
新人のプロマネは経験が乏しいため、プロジェクトの問題の気配を察知することがなかなかできません。
そのため、教訓リポジトリの情報を見てもらうことにより、どのようなプロジェクトでどのような対応をとったほうがよいのかを知ってもらい、プロジェクトの成功につなげてもらうことができます。
教訓リポジトリに何を掲載するのか?
教訓リポジトリには、少なくとも以下の5つの内容を記載しておくとよいでしょう。
- 教訓の名前・タイトル
- 教訓の種類・カテゴリー
- 成功したこと/失敗したこと
- 影響
- 教訓/推奨
たとえば、以下のように表組でまとめておくと管理がしやすくなります。
タイトル | カテゴリー | 成功したこと/失敗したこと | 影響 | 得られた教訓 |
---|---|---|---|---|
外注先の確保の失敗 | リソース管理 | LPの立ち上げプロジェクトにおいて、デザインの外注先を確保することができず、プロジェクトを遅延させてしまった。 | プロジェクトの遅延(2週間) | ・プロジェクトの受注前に外注先の空き状況を確認する。 |
開発期間の短縮に成功 | スケジュール管理 | これまで3ヶ月の時間が必要であったCMSの開発プロジェクトを2ヶ月で終了させた。 | 短納期プロジェクトの成功(2ヶ月で完了) | ・短納期プロジェクトのみならず、並行してできる作業を洗い出し、タスクの処理を並走させることで、業務を効率化させる。 |
タイトルは一目で内容が分かるようにしておきます。
カテゴリーについては管理する目的・組織の方針によっても変わってきますが、プロジェクトの成功を測る上で大切な「スケジュール」「品質」「費用」の3つを軸に、適宜カスタマイズしていけばよいでしょう。
成功したこと/失敗したことには、どのようなプロジェクトに取り組み、どのような成功・失敗をしたかを記載し、影響にはその成功・失敗によってどのような影響が発生したのかを記載します。記載する影響は具体的に数値を示しておくとよいでしょう。
最後に得られた教訓や推奨事項を記載していきます。
プロジェクトの反省会で教訓を収集する
教訓リポジトリに記載する教訓を得るには、プロジェクトの反省会を実施するのが一番です。
プロマネ1人ではトラブルに見舞われても、そのトラブルにどのように対処すべきだったのかがわからないことがあります。
そのため、プロジェクトの反省会を開き、プロジェクトの概要とトラブルを報告することで、周囲からフィードバックをもらい、どのような対処をすべきだったかを考え、教訓をまとめていくとよいでしょう。
プロジェクトの反省会の進め方については、以下の記事もご参照ください。
教訓リポジトリの作り方・管理方法
教訓リポジトリは、上記のように表組で管理するのであれば、Microsoft社のExcelなどで作成することもできます。
社内Wikiを新しく構築してもよいですし、最近では業務支援ツールやプロジェクト管理ツールにもWiki機能があることが多いため、こうした機能をつかってもよいでしょう。
ただし、大切なことは、教訓リポジトリの内容は重要な組織のノウハウであるため、同じ組織の人しか閲覧できないように設定をすることを忘れてはいけません。
PMBOKには組織のプロセス資産という言葉がありますが、教訓リポジトリの内容はまさに「資産」であるため、管理には十分に気を付けていきましょう。