バリューストリームマッピングとは何か?「価値」にフォーカスを置いたバリューストリームマップの作り方を解説

2020年12月30日

バリューストリームマッピングの概要

バリューストリームマップの例
バリューストリームマップの例(画像はWikiより)

バリューストリームマッピングとは、顧客に対して、製品やサービスを提供するまでに必要となるプロセスと生み出される価値(バリュー)を可視化するという分析手法で、リーンソフトウェア開発の22のツールにも数えられています。そして、この手法で作成された図をバリューストリームマップと呼びます。
バリューストリームマップには、資源の調達から加工、販売プロセスなど、プロダクトを提供するまでのすべてのプロセスが含まれます。また、社内での会話や、原材料の販売店との折衝、顧客とのコミュニケーションといった「情報交換」や、材料の輸送や製品の顧客への提供方法などの「製品・サービスの受け渡し手段」もバリューストリームの一部分と見なされることもあります。
何をバリューストリームマップに記載するかは付加価値が発生するかどうかに注目して考えていきます。

今回はこのバリューストリームマッピングについて解説していきます。

バリューストリームマッピングはなぜ必要なのか

まずはバリューストリームマッピングがなぜ必要なのかを解説していきましょう。
上述の通り、バリューストリームマッピングでは、顧客やユーザーに製品やサービスを提供するまでのプロセスと、各プロセスで生み出される付加価値を視覚化していきます。
バリューストリームマッピングにより、製品やサービスの開発から提供までのプロセスが可視化されることによって、そのプロセスの生んでいる「付加価値」や「ムダ」な部分、「問題点」を発見することができます。

バリューストリームマッピングでとくに大切なことは、プロセスのムダを発見することです。リーンソフトウェア開発でバリューストリームマッピングがツールとして選ばれているのは、ムダを発見することに適しているからです。
これまで慣習的に行ってきた作業やプロセスに何も付加価値が発生しないことが分かれば、その作業やプロセスを省略することを検討していきます。

バリューストリームマップの作り方

ここからは「ソフトウェア開発」を例として、バリューストリームマップの作成方法を解説していきます。
今回の例では、ソフトウェア開発が以下の流れで進んでいくとします。

  • 要件定義(作業時間2週間、待ち時間4週間)
  • 外部設計(作業時間1週間、待ち時間2週間)
  • 内部設計(作業時間1週間、待ち時間1週間)
  • 開発(作業時間4週間、待ち時間2週間)
  • 単体テスト(作業時間1週間、待ち時間2週間)
  • 結合テスト(作業時間2週間、待ち時間4週間)
  • 総合テスト(作業時間1週間、待ち時間4週間)
  • リリース(作業時間1日)
バリューストリームマップの参考画像1
参考画像1
バリューストリームマップの参考画像2
参考画像2

バリューストリームマッピングには、これといった決まりはありませんが、プロセスを図で表したもの(参考画像1)と、時間軸をもとに作業の流れを表したもの(参考画像2)があります。
いずれの表現方法であっても、バリューストリームマップには付加価値を生んでいる「作業時間」と付加価値を生んでいない「待ち時間」を明記していくことがポイントです。

参考画像1のようにプロセスを図で表す場合は、図とともに作業時間やその内容、待ち時間を記載していき、作業の順番が分かるように矢印でプロセスを繋げていきます。作業の流れを把握したい場合は、こちらの表現方法が見た目を重視しているため、分かりやすくなります。

参考画像2では、時間軸を中心にとり、作業している時間は上に、待ち時間は下に線をひいていきます。
こちらの表現方法では、作業時間と待ち時間の把握がしやすく、プロセスのムダを発見しやすくなります。

バリューストリームマッピングで業務を改善する

バリューストリームマップを作成したら、各プロセスの作業時間と待ち時間を確認していきます。
例えば、「総合テスト」は「作業時間は短いのに、次のプロセス(リリース)までの時間が長すぎるので、短縮できないのか」というように、まずは付加価値を生んでいない待ち時間を短縮できないか確認していくことが大切です。
もし付加価値を生む作業時間に対してあまりにも待ち時間が長く、不要だと思われるプロセスは、一連の業務から省略してしまうことも視野に入れていきます。
このように、作成したバリューストリームマップを見ながら作業時間と待ち時間を把握することで、ムダを発見し、業務改善を進めていきます。

参考

書籍

  • メアリー・ポッペンディーク(著)、トム・ポッペンディーク(著)、平鍋健児(訳),高嶋優子(訳)、佐野建樹(訳)『リーンソフトウエア開発~アジャイル開発を実践する22の方法~』日経BP、2004年。

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