プロジェクト・リーダーシップとは何か?プロジェクト・リーダーとプロジェクト・マネジャーとの違いについて解説
プロジェクトマネジメント協会の元会長であり、プロジェクトマネジメントの第一人者であるアントニオ・ニエト=ロドリゲス(Antonio Nieto-Rodriguez)は、たとえばPMBOKなどでリーダーシップや共感などのソフト面のスキルが重要視されていないことを指摘し、「プロジェクト・リーダー」や「プロジェクト・リーダーシップ」の重要性を説いています。
今回は“Harvard Business Review Project Management Handbook: How to Launch, Lead, and Sponsor Successful Projects"から、プロジェクト・リーダーおよびプロジェクト・リーダーシップを解説していきます。
プロジェクト・リーダーとプロジェクト・マネジャー、プロジェクト・スポンサーの違い
プロジェクト・リーダーとプロジェクト・マネジャー、プロジェクト・スポンサーの違いは以下のとおりです[1]Antonio Nieto-Rodriguez, Harvard Business Review Project Management Handbook: How to Launch, Lead, and Sponsor Successful Projects (Harvard Business Review Press, 2021), p.203.。
プロジェクト・リーダー | プロジェクト・マネジャー | プロジェクト・スポンサー |
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役割ではなく、一連の能力、行動、考え方 有能なプロジェクト・マネジャーやプロジェクト・スポンサーに使われる | プロジェクトの技術的側面に焦点を当て、ソフト面にもある程度注意を払う、一連の責任を持つ役割 納期、スコープ、予算内で成果物を作成しようとする | プロジェクト・マネジャーがプロジェクトを成功させられるように監督し、サポートすることに責任を負う役割 |
プロジェクト・リーダーに求められる資質と能力
上述のとおり、プロジェクト・リーダーとは肩書や役割ではなく、優秀なプロジェクト・マネジャーやプロジェクト・スポンサーを指す言葉です。
では、どのような人物がプロジェクト・リーダーといえるのでしょうか?
アントニオはプロジェクト・リーダーに求められる資質として、以下の6つを挙げています。
- プロジェクトマネジメントのスキル
- 製品開発とその分野の専門知識
- 戦略とビジネスの洞察力
- リーダーシップとチェンジマネジメントのスキル
- 機敏性と適応性
- 倫理と価値観
プロジェクトマネジメントのスキル
プロジェクト・リーダーとしてプロジェクトをけん引して行くには、プロジェクトマネジメントのスキルが不可欠です。
プロジェクトマネジメントのスキルについては、プロジェクトマネジメント協会(PMI)が認定しているPMP®資格の勉強などを通じて、習得することができます。
製品開発とその分野の専門知識
プロジェクトで求められる製品を深く理解し、より明確な意見や指示を出すためには、製品開発とその分野の専門知識が必要です。
この知識をつけるためには、本やニュースなどで最新の情報を収集していくことが大切です。
戦略とビジネスの洞察力
プロジェクトを達成するとどのような利益が得られるのか、またはどのような状態になったらプロジェクトを中止するのかなど、優れたプロジェクト・リーダーになるには、プロジェクトの枠を超えて戦略やビジネスを理解していなければなりません。
こうしたビジネスの視点はMBAの勉強などを通じて培われますが、それ以外のセミナーや講座でも体得可能です。
リーダーシップとチェンジマネジメントのスキル
アントニオは"Leadership and change management skill"をプロジェクト・リーダーの4つ目の資質に挙げています。
プロジェクトマネジメントには「変更管理(Change Control)」という概念があります。しかし、ここでアントニオが示す"change management"とは、プロジェクトの変更管理のことではなく、変化に対してチーム内の変革を促し、管理することを指しています。
昨今では、このアイデアはそのまま「チェンジマネジメント」と呼ばれています。
困難に遭遇しながらも、力強くプロジェクトを引っ張っていくには、リーダーとしての能力を培わなければなりません。しかし、リーダーシップは習得が難しい能力でもあります。
アントニオは自己認識と改善により、この能力を磨くことができるとしています。
機敏性と適応性
プロジェクトを柔軟に運営していくためには、機敏性と適応性、いわゆるアジャイルの理解が必要になります。
アジャイルについてもPMIが認定資格を出しており、その学習を通じてスキルを身に付けることができます。
倫理と価値観
最後に、プロジェクト・リーダーは意思決定が常に正直で、ステークホルダーの利益を最大化するような高い倫理基準を持っていなければなりません。
たとえば、PMI倫理・職務規定では、「責任」「尊重」「公正」「誠実」を重要な価値観としています。
このような倫理基準を遵守できることも、プロジェクト・リーダーの不可欠な資質です。
注
↑1 | Antonio Nieto-Rodriguez, Harvard Business Review Project Management Handbook: How to Launch, Lead, and Sponsor Successful Projects (Harvard Business Review Press, 2021), p.203. |
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