チェンジマネジメントとは何か?組織の変革を促すための3つの要素、5つのプロセスを解説

2022年5月10日

チェンジマネジメントの概要

チェンジマネジメント(Change Management)とは、経営戦略の改革や組織改革を成功に導くマネジメント手法のことです。少子高齢化による労働人口の減少や、市場のニーズの変化、技術革新の高速化において組織変革が重要な課題となっており近年注目されています。
組織を現状から目指す状態へ移行させ、期待する利益を達成していくための変革推進手法であり、体系的なアプローチを通して組織全体に対して変革による混乱や抵抗を最小限に抑えることで、いち早く目指す状態に変えていくことを支援します。

チェンジマネジメントの成り立ち

チェンジマネジメントは、1990年代のアメリカで流行したBPR(Business Process Re-engineering:業務プロセス改革)を成功させるためのメソッドとして実践されたのが始まりとされています。
プロセスやシステムといったハード面の導入に着目するだけでは変革は行えず、成功に導くためには変化に対する人の抵抗に対処していかなければならないといった考え方が広まりました。
2010年頃から、トランスフォーメーションの時代に突入し、激しい環境の変化に対応するために、いかに効率的に変革を推進するかが、多くの企業にとっての課題となってきました。トップダウン型として「管理」を行っていくのではなく、社員のエンゲージメントを高めていくことを重要視したマネジメントスタイルとして、企業が目指すべき姿を実現するための手助けを行うべきものとして広く定着するようになりました。

チェンジマネジメントの分類

組織変革は簡単ではなく、失敗に終わるケースも少なくありません。失敗の主な理由としては変革への抵抗や自意識の欠落、変化への適応力不足といった「人」に関する課題が大部分を占めています。チェンジマネジメントは、このような人の問題に体系的なアプローチで対処し、問題を未然に防ぐことや最小限に抑えるための手法となります。

チェンジマネジメントは大きく分けて3つの単位に分類され、それぞれの単位によって変革のためのポイントが異なります。

個人単位のチェンジマネジメント

社員一人一人に対する変革を促すチェンジマネジメントを個人単位のチェンジマネジメントと言います。特定の従業員に対して、業務内容の変更や業務指導、スキル習得のタイミングといった変化を促します。個人の考え方を変化させていくことで、変革への抵抗感を抑えつつ、生産性の高い業務に取り組んで貰いやすくなります。

プロジェクト単位のチェンジマネジメント

個人単位の変革を促した後に必要となるのが、プロジェクト単位での変革を促すアプローチです。戦略的に変革を進めていくために、変化が必要なグループや社員を見定めて、どのように変化させていくべきかを明確にする必要があります。
プロジェクトリーダーを中心に、メンバーに対して変革のための取り組みや必要となる知識や技術への気付きを与えて、変革を促していきます。

組織単位のチェンジマネジメント

企業全体または組織全体で経営戦略の改革に取り組むアプローチを組織レベルのチェンジマネジメントと言います。市場のニーズや技術革新、社会の変化に対して、どのように対応していくのかを明確にし、戦略的に組織改革を進めていきます。個人単位やプロジェクト単位でのチェンジマネジメントを通して、効率よく改革を行える組織作りにも並行して取り組むことが重要となります。

チェンジマネジメントの課題

組織変革における「人」の課題として要因は様々ありますが、その根底として「人は本来、変化を嫌う生き物である」といったことが挙げられます。
人は、自分の身を守るためにはこれから何が起こるのか、どう対処するのが得策かといった状況が予測可能な範囲であることに安心感を覚えるため、自分で変化をコントロールできる安定した状況を好みます。そのため、大きな変化、特に組織改革のように、自分の意思に反して誰かに変えさせられる状況に嫌悪感を抱きやすくなります。次はこれらの「人」に焦点を当てた課題を解決するための3つの要素をご紹介します。

組織変革を成功に導くための3つの要素

ディスラプション(破壊)

人は今置かれている状況に満足していれば、できる限り現状を維持しようとします。
変わる必要がなければ変わろうとはしないため、上層部がいくら「変化していかなければならない」と説いても心に響かないものとなってしまいます。社員に自発的に変化を受け入れてもらうためには、「現状のままではいけない」と感じさせることが必要となります。
そのためには、社員にとって居心地の悪い状態(ディスラプション)を意図的に作り出す必要があります。ただし、度が過ぎる状態は、社員が会社を離れてしまう可能性にも繋がるため、改革のための変化を見極めることが重要です。

ビジョン

ビジョンとは、変革の終着点を明確にすることです。
どんなに変わろうといった気持ちがあっても、移行期がいつまで続くのかが分からない状態では、変革の途中で疲弊して力尽きてしまいます。変革の早い段階で明確なビジョンを伝えていくことで、変わることへの不安や抵抗感をモチベーションに変えて維持させていくことが重要です。

計画

計画とは、定めたビジョンを達成するためのステップを示します。どのような順序で変革に向けて進んでいくのかといった、ビジョンに到達するための道標を示していかないと最初の一歩を踏み出すことができません。変革に伴う不安を払拭するためにも進むべき道を示す必要があります。

チェンジマネジメントの5つのプロセス

チェンジマネジメントを成功させるためのプロセスとして以下の5つのフェーズに分けて構成されています。

  1. 診断フェーズ
  2. 戦略フェーズ
  3. 計画フェーズ
  4. 導入フェーズ
  5. 維持フェーズ

ここからは、これら5つのフェーズを解説していきます。

診断フェーズ

組織が置かれている状況や現状の課題、なぜ変革が必要なのかといった、変革を行うための影響やリスクを分析し、変革の必要性を見定めるフェーズとなります。変革を行うための明確なビジョンもこの段階で設定します。

戦略フェーズ

変革を導入するためのアプローチや戦略を検討するフェーズです。
変革を行うにあたって影響をうけるステークホルダー(利害関係者)を分析し、変革に伴うエンゲージメントを高めていくためのアプローチ方法を決めていきます。

計画フェーズ

社員に対して、変革に伴う不安や抵抗感を抑制するための具体的な施策やスケジュールを計画するフェーズです。変革を成功に導くための重要な要素の一つであり、変革のためのビジョンに向かって進むべき道を定めていきます。

導入フェーズ

計画フェーズで定めた施策やスケジュールに沿って実行し、活動の管理や状況を見定めながら変革を進めていくフェーズとなります。社員の状況をモニタリングし、フィードバックなどを収集した上で必要に応じて対策を講じます。

維持フェーズ

多くの変革は、一旦導入したにも関わらず定着することなく廃れて失敗してしまいます。
チェンジマネジメントではこのような失敗を避けるためにも、変革を導入した後、導入状況や診断フェーズで定めたビジョンを達成できているかを確認し、必要に応じて追加で対策を講じることで目標達成までの対応を継続します。この変革の定着は非常に難しく、元の状態に戻ってしまわないように定期的に確認を行い、企業文化として定着するまで維持し続けることが重要です。

これらの5つのフェーズについては、変革する上で必要なものとなりますが、診断フェーズの段階で変革の必要性やリスクの分析を十分に行っていき、初期の段階で変革に対する準備を綿密に進めることが重要となります。チェンジマネジメントを成功させるためにも課題となる「人」に焦点を当てた分析、対策を行っていき、社会の変化に柔軟に耐えられる組織作りをめざすことが大切です。

プロジェクトマネジメントの中でのチェンジマネジメント

プロジェクトマネジメントを円滑に行うためにも、チェンジマネジメントが求められることがあります。
たとえば、プロジェクトマネジャーを指揮するPMOが組織に問題を発見した時は、チェンジマネジメントに取り組み、組織を変えていく必要があります。
CMMIという指標があるように、プロジェクトの成否はプロジェクトマネジャーやプロジェクト・チームだけに依存するものではなく、彼らが所属している組織にも左右されます。そのため、プロジェクトマネジメントのためにもチェンジマネジメントに取り組む必要があります。

PMOやCMMIについては下記の記事でも解説していますので、ご参照ください。

参考