ブーメラン効果とは何か?心理学・経済学で使われる用語を解説

2023年1月16日

ブーメラン効果とは

ブーメラン効果(Boomerang Effect)とは自らが行った何らかの行為が逆効果となって戻ってくることを意味します。
投げると軌道を描いて手元に戻ってくるブーメランから連想された現象で、戻ってきたブーメランを受け損なった時に怪我をしてしまうことから名づけられました。
主に心理学と経済学で使用されている用語のため、2つのブーメラン効果について解説します。

心理学におけるブーメラン効果

相手に対して依頼や説得、行為を試みた結果、相手に反発された態度や意見、結果をとられてしまい逆効果になってしまう現象を心理学ではブーメラン効果とよんでいます。

アメリカの心理学者であるカール・ホブランド、アーヴィング・ジャニス、ハロルド・ケリーらによって1953年に発表された著作『コミュニケーションと説得』の中で提唱されました。
ブーメラン効果が機能するのは、何かに自分の行動の自由を脅かされたり実際に自由を奪われたと感じた時に、その自由を回復して守りたいという動機づけが生じるからです。
この状態は「心理的リアクタンス(psychological reactance)」ともいわれています。

ブーメラン効果の例

ブーメラン効果は個人の日常生活から国家や企業のキャンペーンといった様々なレベルでみられる現象です。
具体的には次のような例が挙げられます。

  • 宿題をやろうと思ったタイミングで親に「宿題をしなさい」と言われるとやる気がなくなってしまう。
  • デパートで商品を見ていた時に店員が近寄ってきて商品説明を始めると買う気がなくなってしまう。
  • 1998年から2004年に実施された全米青少年反薬物メディアキャンペーンでは、若者が週に2~3回広告を目にすることでマリファナの使用を減らすことが意図されたが、実際には広告を見た回数が多いほど子どもたちはマリファナを使用する可能性が高くなった。
  • 2022年の「Apple at Work」広告キャンペーンではリモートワークから戻らずにApple製品を使用してオフィスのないスタートアップを立ち上げることを促したが、Apple社内ではキャンペーンを開始する1週間前にオフィスに戻ることを強要していたことで、社員の不満が増大し、一部の社員が退職した。

ブーメラン効果に影響する要因

ブーメラン効果が働く要因として、次の5つが挙げられます。

  • 自分の立場や意見への強い責任感から他者の意見を受け入れることが難しい。
  • ゆずれない信念や大切な価値観に関わる説得がなされた。
  • 嫌いな人から説得された。
  • 相手に押しつけがましい態度をとられた。
  • 説得するという予告に身構えてしまい、自身の行動の自由を制限されると考えてしまう。

ブーメラン効果を回避する方法

ブーメラン効果は相手にどのようにアプローチするかによって回避することが可能です。
以下のようなアプローチを検討します。

  • 問題に対しては柔軟にアプローチする。一つの方法に固執するのではなく、代替オプションや複数の解決策を検討する。
  • 最初に相手との信頼関係を作る。
  • 相手に対して強要しない。強引にならないように選択肢を与えたり、どのようなメリット・デメリットがあるのか説明したりして、相手が自由に選択できるようにする。

経済学におけるブーメラン効果

経済学でブーメラン効果を使う場合、ビジネスの拡大など良い効果を狙って資本や技術を提供したものの、結果としてかえって負の影響がもたらされてしまう現象を指します。
これは経済学者の篠原三代平が、1970年代初めに日本が支援していた東南アジア諸国からの輸入激増によって国内の繊維産業が窮地に追い込まれた現状を分析し、1976年の著書「産業構造論」の中で命名しました。
現代の日本でも繊維製品や電化製品などで負のブーメラン効果が顕著になっています。

参考