コスト・マネジメントの計画とは何か?PMBOKの用語を解説
コスト・マネジメントの計画とは
コスト・マネジメントの計画とは、プロジェクトで使う費用を見積もり、予算化し、その監視方法やコントロール方法を定義していくプロセスです。
PMBOKでは「プロジェクト・コストを見積もり、監視し、コントロールする方法を定義するプロセス」と定義しています[1]PMBOK第6版、706頁。。
コスト・マネジメントの計画はなぜ必要なのか?
プロジェクトの成否を判断する三大要因はスケジュール、コスト、品質と言われます。
コスト・マネジメントの計画ではその内のコストの管理を検討していくプロセスであり、予算超過でプロジェクトが失敗にならないようにどうしていくのかを考えていきます。
コスト・マネジメントの計画のアウトプット
コスト・マネジメントの計画のゴールは「コスト・マネジメント計画書」を作成していくことです。
コスト・マネジメント計画書では、以下のような内容を記述していきます[2]PMBOK第6版、239頁。。
- 測定単位
- 精密さのレベル
- 正確さのレベル
- 組織の手続きとの結びつき
- コントロールしきい値
- パフォーマンス測定値の規則
- 報告書式
- その他の詳細情報(資金調達方法や為替変動への対応など)
いうなれば、コスト・マネジメントの計画とは、上記のコスト・マネジメント計画書に記載する内容を決定していくプロセスであります。
プロジェクト・マネジャー(以下、プロマネと略記)は上に書いたコスト・マネジメント計画書の内容がすべてクリアになるような進行を心がけるとよいでしょう。
コスト・マネジメントの計画のインプット
コスト・マネジメントの計画では以下のような資料・情報を使用してプロセスを進めていきます。
ここからは上記の資料・情報から何を確認していけばよいのかを解説していきます。
財源
コスト・マネジメントの計画を進めていく上で、まっさきに確認しておきたいのが財源です。
つまり、このプロジェクトにどのくらいのお金が用意されているのかを知らなければ、使用するお金の管理をすることはできません。
この情報を知るためにはプロジェクト憲章やプロジェクトの企画書を確認し、事前承認されている財源を確認します。
影響を及ぼす要因
コスト・マネジメントの計画をする上で、コストに影響与える要因についても把握し、コントロールしていかなければなりません。
例えばスケジュール・マネジメントやリスク・マネジメントの中で、ツールを導入したり、リスク分散のための対応をするかもしれません。こうした活動は当初予定していなかったコスト増につながりますし、コスト・コントロールの対象になります。
そのためスケジュール・マネジメント計画書やリスク・マネジメント計画書を確認し、何かコスト・マネジメントに影響する要因がないかを確認していきます。
また、組織内外の環境もコスト・マネジメントに影響していきます。
例えば海外から資金調達をしたりすると為替レートが影響していきます。
こうした為替レートは組織外の環境からの影響の代表例ですが、組織内部の文化や構造なども、コスト・マネジメントに影響していきます。
例えば、「毎月10万円以下の買い物であれば個人の権限で購入できるが、10万円以上50万円未満なら所属長の承認が、100万円以上なら会社全体の承認が必要」というように、コスト・マネジメントに影響してくる文化や制度などはすくなからず組織内部に存在します。
こうした組織内外の環境要因を把握するため、組織体の環境要因を確認しておくとよいでしょう。
利用できるノウハウはないか?
最後に組織のプロセス資産からコスト・マネジメントの計画を進めるために使えるノウハウがないかを確認します。
PMBOKでは以下のような組織のプロセス資産が紹介されています[3]PMBOK第6版、237頁。。
- 財務管理の手続き
- 過去の情報と教訓レポジトリ
- 財務データベース
- 既存の正式や略式のコスト見積りと予算に関係する方針、手順、ガイドライン
このように組織内に培われたノウハウや、過去の教訓から、コミュニケーション・マネジメントの計画を進める上で何か使えるものがないかをチェックします。
コスト・マネジメントの計画のツールと技法
コスト・マネジメントの計画で使用されるツールと技法は以下のようなものです[4]PMBOK第6版、237頁。。
- 専門家の判断
- データ分析(代替案分析など)
- 会議
専門家の判断
コスト・マネジメントの計画では、以下のようなトピックの知識を有する専門家の判断のもと、プロセスを進めていきます[5]PMBOK第6版、237頁。 。
- 過去の類似プロジェクト
- 業界、領域、および適用分野の情報
- コスト見積りと予算化
- アーンド・バリュー・マネジメント
過去の類似プロジェクトや業界のことを知っているだけでなく、コスト・マネジメントを考える上ではアーンド・バリュー・マネジメント(以下、EVMと略記)の知識を有していることが大切です。
EVMは予算を使ってスケジュールの進捗を計測していく手法ですが、このEVMの知識がないままにコスト・マネジメントを進めてしまうと、スケジュール・マネジメントの計画との歩調が合わなくなってしまうかもしれません。
そうしたトラブルを避けるためにも、EVMの知識を有した専門家とともにコスト・マネジメントの計画を進めていくとよいでしょう。
データ分析
コスト・マネジメントの計画のデータ分析では、主に代替案分析が使用されます。
代替案分析では、複数の選択肢のコストやリスク、パフォーマンスなどを総合的に査定し、採用すべき選択肢を決定します。
代替案分析はアメリカ国防総省などで調達の際に使われているため、コスト・マネジメントの計画でも有効な手法と言えるでしょう。
会議
コスト・マネジメントの計画は、その名の通り費用や予算について考えていくプロセスであるため、プロジェクト・チームだけでなく、ステークホルダーとの会議のもと意思決定をする必要があります。