スコープのコントロールとは何か?PMBOKの用語と実際の活動を解説

2020年3月1日

スコープのコントロールとは

スコープのコントロールとは、PMBOKの定義によると、「プロジェクト・スコープとプロダクト・スコープの状況を監視し、スコープ・ベースラインへの変更をマネジメントするプロセス[1]PMBOK第6版、715頁。」を指します。
つまり、プロジェクトの作業範囲(スコープ)の状況を監視し、当初の予定を変更しなければならない時にその変更をマネジメントしていく活動がスコープのコントロールです。

スコープのコントロールを必要とするタイミング

どのような作業をするのか・何をつくるのかに変更を加える

スコープのコントロールはどのような状況で必要になるのでしょうか。
上述の通り、スコープのコントロールは当初の計画に変更が必要になった時に発生します。
PMBOKの定義の中では「プロジェクト・スコープとプロダクト・スコープの状況を監視」している中で変更が発生した場合に必要となるプロセスとされています。
プロジェクト・スコープとはプロジェクトの範囲、すなわち作業の範囲を指しており、プロダクト・スコープは成果物の範囲を指しています。
つまり、「どのような作業をするのか」「何をつくるのか」という当初の予定に変更が発生した場合に、スコープのコントロールのプロセスを行っていきます

スコープのコントロールの具体例

例えば、連携する計画であった外部システムのリリースが延期になったため、この外部システムとの連携に関わる作業は別プロジェクトで対応することとした場合は、スコープのコントロールが行われます[2]平成28年春期PM試験午後Ⅱ問5の問題文を参考に作成。
このケースでは、当初の計画で予定していた作業(プロジェクト・スコープ)から「外部システムとの連携」という作業がなくなるため、スコープのコントロールが発生します。
このように、当初予定していた作業が増減したり、必要とされる成果物が増減した場合に、スコープのコントロールのプロセスが必要となります。

スコープのコントロールのインプット

スコープのコントロールを行う際は、以下の情報・文書をインプットとして用いて進めていきます [3]PMBOK第6版、169~170頁。

ここからは、上記のインプットの内容がどのようにスコープのコントロールに影響するかを解説していきます。

作業パフォーマンス・データとプロジェクトマネジメント計画書を比較する

スコープのコントロールは当初の予定に変更が発生した場合に取り組むプロセスです。
そのため、スコープのコントロールでは作業パフォーマンス・データを確認して「何がどこまでできているのか」を把握し、それがプロジェクトマネジメント計画書、特にスコープ・マネジメント計画書やスコープ・ベースラインに記載した計画とどの程度乖離が発生しているのかを比較検証していきます。

プロジェクト文書や組織のプロセス資産(OPA)で使えるものはないか

プロジェクト文書や組織のプロセス資産(OPA)で使えるものがあれば、スコープのコントロールを進めていくために使用していきます。
例えば教訓登録簿に類似の事例がないかや、組織のプロセス資産として現状を打破するノウハウが蓄積されていないかを確認していきます。

コンフィグレーション・マネジメント計画書や変更マネジメント計画書を遵守する

スコープのコントロールを行う際は、コンフィグレーション・マネジメント計画書や変更マネジメント計画書を遵守し、ルールに従った活動を行っていく必要があります。
これらの文書を確認し、ルールから逸脱しない変更活動を行っていきましょう。

データ分析でアウトプットを作成していく

スコープのコントロールでは、これまで見てきたような情報・文書を材料としながら、データ分析を行ってアウトプットを作成していきます。データ分析の手法としては、実績値とベースラインの比較を行う差異分析や、パフォーマンスの傾向をつかむ傾向分析を用いていきます。

スコープのコントロールのアウトプット

スコープのコントロールのプロセスの活動を通じて得られるアウトプットは以下の通りです[4]PMBOK第6版、170~171頁。

ここからは、スコープのコントロールの活動の結果としてなぜ上記のアウトプットが生まれるのかを解説していきます。

作業パフォーマンス情報を見て状況を把握する

作業パフォーマンス情報は、インプットの材料として挙げられていた作業パフォーマンス・データがデータ分析によって加工されて作成されます。
この作業パフォーマンス情報をもとに変更要求を行い、スコープのコントロールのプロセスを進めていきます。

変更要求とプロジェクトマネジメント計画書の更新

作業パフォーマンス情報をもとに判断をした結果、当初の予定や計画の変更が必要になった場合は、変更要求を行い、プロジェクトマネジメント計画書を更新していきます。
プロジェクト・スコープやプロダクト・スコープに変更があるため、プロジェクトマネジメント計画書中のスコープ・ベースラインを更新しなければなりません。そしてスコープ・ベースラインが変化すると、当初計画していた予算やスケジュールにも影響が及びます。そのため、スケジュール・ベースラインやコスト・ベースラインも見直し、新しい情報に更新していく必要があります。

プロジェクト文書の更新

スコープのコントロールのプロセスを進めていく中で、プロジェクト文書も更新されていきます。
教訓登録簿については、今回のスコープのコントロールで得られた教訓・ノウハウを追記し、以後の業務に活かしていきます。
要求事項文書と要求事項トレーサビリティ・マトリックスについては、スコープのコントロールによりプロジェクト・スコープやプロダクト・スコープに変更が発生し、要求事項が変化した場合に手を加えていきます。

1PMBOK第6版、715頁。
2平成28年春期PM試験午後Ⅱ問5の問題文を参考に作成。
3PMBOK第6版、169~170頁。
4PMBOK第6版、170~171頁。