スマホは集中力にどのような影響を与えるのか?その問題の原因と解決策を解説 

2023年3月1日

私たちの生活に欠かせないスマートフォン(スマホ)ですが、スマホが原因で集中力の低下やメンタル不調を訴える人が増えているという研究結果があります。なぜ便利なはずのスマホが、私たちに悪影響を及ぼすのでしょうか。
今回はスマホ利用による問題の原因と解決策を『スマホ脳』を参考にご紹介します[1]アンデシュ・ハンセン(著)久山葉子(訳)『スマホ脳』新潮新書出版、2020年。

脳は狩猟採集民時代のままデジタル化が進んでいる

現代の私たちは豊かな生活をすることができている一方で、集中力の低下や、精神的な不調を感じる人が増えています。その理由は、人間の脳の進化と、環境の変化が一致していないことです。
人間は地球上に現れてから、99.9%の時間を狩猟採集民として暮らしてきました。この数十年で大きくデジタル化が進みましたが、私たちの脳は狩猟採集民時代を生きるためのつくりから大きく進化していません。

新しいことを知りたい欲求が「集中力」を低下させる

私たちの先祖は、危険な状況に直面した時、闘争か逃走を選択してきました。また、周囲の状況を深く知ることで生存の可能性を高めることができました。その結果、人間の脳は新しい情報を得ることで快楽物質のドーパミンが出るように進化しました。
この脳の仕組みを利用して作られているのがスマホやSNSです。次から次へと流れる情報や、通知に無意識に反応してしまう理由は、脳のつくりと大きく関係しています。
何か作業をしている時にスマホの音が鳴ると、脳は新しい情報が欲しくてたまらなくなり、作業に集中し続けることが難しくなります。また、机の上にスマホがあるだけで、作業に対しての集中力が低下するという研究結果もあります。

集中力が低下すると記憶力にも影響が出る

集中力が低下すると、記憶力にも影響が出ます。物事を記憶する時に、集中力を必要とするからです。
集中力が低下すると、脳は常に気が散っている状態になり、記憶力に悪影響をもたらします。一度低下した集中力を戻すには、大きなエネルギーを必要とします。集中力を戻すまでに、またスマホの通知が鳴ると、再度集中力が切れてしまい、脳の記憶機能が低下していきます。

解決策は運動 1回45分を週3回程度が最大限にストレスを下げる

運動をすることで集中力は回復する

集中力低下の解決策は、運動をすることです。なぜ運動をすると集中力が上がるのでしょうか。それは、私たちの先祖が体を動かしていたからです。狩りをしたり、追われたりした時、つまり生きるか死ぬかの重要な局面では、最大限の集中力を必要としました。
現代の私たちには、そのような状況が起こることは滅多にありませんが、脳の大部分はサバンナでの日々から変わっていません。そのため、体を動かすことで、脳は狩りや追われている時と同じスイッチが入り、集中力が上がります。

運動はストレスや不安に対しても効果がある

また、運動は集中力アップだけではなく、ストレスや不安に対しても効果があります。これは「①運動をする→②集中力が上がる→③体力がつく」という流れの中で、脳が「この体は、もし危険なことが起きても、体力があるから危険を回避することができる」と認識するからです。
運動の内容はどんなものでもOKです。ただ、散歩をするだけでも効果がありますが、よりストレスを下げて集中力を上げたい場合は、1回45分を週3回程度、息が切れて汗をかく程度の運動がおすすめです。

運動以外に日常生活で出来ること

最後に日常で出来る集中力低下を防ぐスマホの使い方3つをご紹介します。

  1. スクリーンタイムを計測するアプリを利用し、自分のスマホ利用時間を知る。
    (スマホの利用時間の理想は1日2時間まで)
  2. スマホのプッシュ通知はオフにし、メールやSNSを確認する時間を決める。
  3. 集中力が必要な作業をする時は、スマホを手元に置かず、鞄の中にしまう。

スマホにコントロールされるのではなく、自分でスマホをコントロールする習慣を身に着けていきましょう。

1アンデシュ・ハンセン(著)久山葉子(訳)『スマホ脳』新潮新書出版、2020年。